顎関節症になったことありますか?

顎関節症とは、あごの関節周辺の異常で「あごがカクカク鳴る」「口を開けづらい」などが主な症状の疾患で、20代、30代の女性に多いのだという。私は10数年前から「あごがカクカク鳴る」症状があったのだが、日常生活に支障をきたすほどでもないので特に気にしないで過ごし てきた。

ところが先日の朝、目覚めて口を開けようした瞬間、顎に激痛が走った。朝食のトーストを食べようとしても口が開かない、噛めない。これは異常事態だと、すぐに大学病院の歯科口腔外科へ駆け込んだ。

診察で最初に聞かれたのは「何か堅いもの食べましたか?」
そういえば昨夜、大好物の鮭とば(鮭のジャーキーのようなもの)を齧ってたっけ。
先生は「あ~、それだわ」と呆れ顔。「あなたみたいな人にスルメとか堅いものは言語道断!」
私は鮭とばやスルメなど顎が痛くなるほど堅いものが大好きなのだが、それが顎関節症を悪化させたとは……トホホ。


「ではこれから治療しますから、ちょっと待っててください」と、席を立つ先生。こういった治療って、ずれた顎を手で無理矢理ゴキッと戻すんだろうか。ものすごく痛そう、怖い! と診察台の上で震える私。
戻ってきた先生が手にしていたのはなぜか、割り箸。ええっ、割り箸使って何するんですか!?

「これで口が開くようになるから」
先生は二本の割り箸を私の口の両側の奥歯のあたりまで突っ込んだ。そして唇が裂けるかと思うほど目一杯口を広げる。
あまりの痛さに涙目になる私。そして「思い切り噛んで」「開けて」の繰り返し。
痛みをこらえながら噛み噛みすること数分。ようやく割り箸を抜かれ、口を開けてみると 、朝よりずっと開くようになっていた。自宅でもこの「割り箸噛み噛み」をやればもっと口が開くようになるとのこと。

その後、先生から顎関節症について詳しく説明してもらった。

人間のあごの関節には関節円板というクッションのような働きをする小さい軟骨のようなものがあり、それに下のあごが乗っている状態になってているだ。顎関節症の人のあごがカクカク鳴るのはその円板がズレていて、それを下のあごが乗り越えようとし て鳴るのだという。あのカクカク音はズレを治そうとがんばっている(?)音だったのか!

顎関節症になりやすい人の特徴としては、「寝ている時歯ぎしりをしている」「横向きに寝ている」「枕の高さがあっていない」「長時間のデスクワークをしている」「頬杖をつく癖がある」「ストレス(緊張状態で歯を食いしばっ てしまう)」など。

顎関節症は完治が難しいが、ある療法を続ければ、ずれた円盤が元に戻る可能性もあるという。その療法というのが関節円板整位運動である。口を大きく開けてカクッと音が鳴った瞬間、下あごを前に突き出す。
下あごを突き出したままで口を閉じ、あごを戻す。カクッと鳴った時でなければ意味がないそうだ。しかしこの動き、 何かに似ている。そう、それは志村けんの最も有名なギャグ「アイーン」である。
先生が何度も手本に見せてくれたのだが(もちろんアイーンとは言っていない)、私は笑いを堪えるのに必死だった。先生、ごめんなさい。

この療法は日常的に行わなければならず、自宅はもちろん仕事中にもやるように言われた。ええーっ、仕事中 にアイーンなんて「ふざけてるのか!」と上司に怒られそう。休憩中にこっそりやるしかないか……。

割り箸治療のおかげで翌日には以前の様に口が開くようになった私。しかし相変わらずあごはカクカク鳴っている。
でもいつか完治することを祈って、今日も「アイーン」。

(いなっち)