フィットネストラッカーは、本当にそれを必要とする人たちを取りこぼしている

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Fitbit、Nike+ FuelBand、Jawbone Upなどの消費者向けウェアラブル機器は、行動習慣の改善を促すことで生活習慣病の予防にもつながるものだ。ところが、こうした機器を誰よりも必要としていながら見過ごされている潜在顧客層が数多く存在すると警鐘を鳴らす女性研究者がいる。Public Health Instituteに所属するアイアナ・シーモノフ氏だ。「我々は現実に、人口のかなりの部分を置き去りにしてしまっているのです」と彼女は主張する。

現実にフィットネストラッカーは富裕層を中心に普及しつつあるが、買ったもののすぐに手放してしまう人が多くいることも判明している。NPD Groupの調査レポートによれば、米国内の成人の10人に1人が機器を所持しており、そのうち36%は35~54歳の年齢層だ。さらにそのうち41%は平均所得が10万ドルを超えているのだが、そのグループに属する人々の1/3以上が、購入から数カ月のうちに使用を取りやめているというのだ。

アーリーアダプター層や裕福な人々を対象にマーケティングをするのはたしかに無難な選択だが、そこに落とし穴があるのだとシーモノフ氏は言う。「ありとあらゆる慢性疾患に苦しめられ、栄養や運動についてのアドバイスを必要としていながら、見落とされている人々は膨大な数に上ります」

見落としの原因は、そうした人々が低所得層に属し、店舗やAmazon.comでフィットネストラッカーを買い求めるとは思えないことだとシーモノフ氏は指摘する。ところが、そうした決めつけが誤りであることは各種研究結果から明らかになってきている。

スマートフォンを誰よりも使いこなしているのは移民労働者層だということはご存知だったたろうか? 裕福な白人層がパソコンを多用するのに対して、彼らは携帯電話を唯一のネットへの窓口として、医者にかかる前の情報収集などを含めて何でもそれでこなすからだ。彼らにはモバイル通信機器に毎月5~10ドルを支払う意欲があることを示す研究結果もある。ところが、シーモノフ氏がサンフランシスコ大学を通じてカリフォルニア州内の低所得ラティーノ層を対象に調査を行ったところ、別の問題点が浮き彫りになった。彼らにFitbitを使ってもらったところ、表示されるデータの意味がわからずに数週間で利用をやめてしまう例が相次いだというのだ。「彼らが求めているのは、今日の調子はどう? 昨日と比べてどうなのか? 明日はどうするべきなのか? という単純なアドバイスでしかないのに、実際に表示されるものは複雑すぎるのです」と彼女は言う。

フィットネストラッカーの多くはスペイン語に対応しているのだが、そうした人々が求めているのは、ビジュアルを多用した単純でわかりやすい表示なのだとシーモノフ氏は語る。「健康リテラシーが低く数字も苦手な人々にとっては、7432歩と3500歩の違いを考えることが重荷になることもあるのです。だとすれば、血液検査の結果として送られてくる書面に列記されているデータの意味を理解するのはどうでしょう? 要するに、そういうハードルがあるということなのです」

フィットネストラッカーの誤りは、宣伝手法にもあるとシーモノフ氏は指摘する。均整の取れた肉体をもつアスリートばかりが宣伝に出てくるせいで、これはアスリート向けの製品で自分たちには縁がないものだと思われがちだというのだ。

「自分たちが日常生活にどんな困難を抱えているのかという問題意識とは別次元の暮らしをしている学者たちにあれこれ言われたくはないという反感も阻害要因になっています」と、シーモノフ氏は付け足した。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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