ソニーの孫会社が稼ぐ「巨大な利益」 —— アニプレックスが支える音楽事業

ソニーは2018年、さらに収益力を伸ばそうと吉田憲一郎CEOと十時裕樹CFOの2トップ体制を始め、投資家の注目を集めてきたが、それ以上に市場のスポットライトを集めているのは、120名ほどのスタッフが働くソニーの小さな孫会社、アニプレックスかもしれない。

吉田憲一郎・ソニーCEO

2018年5月、ソニーの事業戦略を説明する吉田憲一郎CEO。

REUTERS/Toru Hanai

1995年設立のアニプレックスは、ソニー・ミュージックエンターテインメント(SME)の100%子会社で、ソニーの孫会社。スマートフォン向けRPG(ロールプレイングゲーム)の「Fate/Grand Order」が大ヒットし、同社は2018年3月期、2009億5800万円の売り上げを計上し、営業利益は511億1100万円を記録した(7月4日付決算公告)。連結ベースでは、ソニーの音楽事業の一部だ。

年間売り上げで2000億円と言えば、森永製菓や牛丼の吉野家ホールディングスと同じくらいの規模である。アニプレックスは主に映像や音楽を制作するが、コアとなるアニメ事業では、TVシリーズや劇場版を制作し、音楽ではアニメやゲームの劇中音楽・サウンドトラック、主題歌のコンピレーションアルバムを制作する。

AniplexのHP

アニプレックスのHPより

ジェフリーズ証券で日本のエレクトロニクス企業を分析するアナリスト、アツール・ゴヤール氏も、アニプレックスの高い収益力を評価する一人だ。

ゴヤール氏は、7月19日付の投資家向けのレポートで、「スマートフォン向けゲームで人気ランキングのトップを占めるゲームは、その人気が数年間持続する傾向にある。例えば、アメリカにおける人気ランキング・トップ5に入る、キャンディ・クラッシュ(Candy Crush:2012年のリリース)やクラッシュ・オブ・クラン(Clash of Clans:2012年のリリース)はその一例だ」と述べる。「日本のランキングに入るガンホー制作のパズドラ(Puzzle&Dragons:2012年リリース)やmixiのモンスターストライク(Monster Strike:2013年)で同様のことが言える」

スマホ向けゲームのライフサイクルは短いという印象があるが、ランキングでトップに入る作品は対照的にその寿命は長く、作品によっては6年を超えるものもあると、ゴヤール氏は言う。

ソニーの営業利益・純利益推移

ソニーは2018年3月期、8兆5440億円の連結売上高、7349億円の営業利益を計上している。そのうち、孫会社のアニプレックスを含む音楽事業は8000億円の売り上げと、1278億円の営業利益を記録した。連結ベースの売り上げでは、ソニーの一番の稼ぎ頭は、1兆9438億円を稼いだ「プレイステーション4」を主軸に置くゲーム&ネットワークサービス事業だった。

一方、営業利益で見ると、1789億円を記録した金融事業がトップで、ゲーム&ネットワークサービスは1775億円で2番目に大きかった。音楽事業は1278億円の利益を生み、半導体事業(1640億円)に次いで4番目に大きい。

ソニーCFOの十時裕樹氏。

2018年7月31日、第1四半期の決算発表で記者の質問に答える十時CFO。

Business Insider Japan

7月31日、ソニーは2018年度第1四半期(4月~6月)の業績を発表。売り上げは前年同期比5.1%増え1兆9536億円、営業利益は23.7%増加して1950億円だった。ゲーム&ネットワークサービス事業の利益が4倍以上増え、増益に貢献した。音楽事業の利益は321億円で、28%の増加となった。

ソニーは同日、2018年度通期の売上高の見通しを8兆6000億円として、4月時点の見通しから3000億円、上方修正した。営業利益の見通しは、前回と同様の6700億円とした。また、音楽事業の業績見通しも上方修正され、売上高は7600億円、営業利益は1150億円となった。

(文・佐藤茂)

(編集部より:ソニーの2018年度第1四半期の業績を加え、記事を7月31日16:05に更新しました)

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