豊崎由美さんによる、第144回芥川賞妄想選考会中継

豊崎由美＠アンチ維新 @toyozakishatyou

そろそろ「芥川賞妄想選考会」を始めようかな。すごい数を連投することになりますので、芥川賞に興味のない方はリムーヴされることをおすすめいたします。

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【妄想選考会１】山田詠美（エイミー）：島田くん、いらっしゃーい。大丈夫よー、あたしも芥川賞とってないから。ねっ、黒井さん。　黒井千次（センジィ）：うんうん（にこにこ）

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【妄想選考会２】宮本輝（テルちゃん）：おーい、島田くん、茶ぁ入れてくれや。直木賞のほうじゃ、北方さんが入ったばかりの頃お茶入れてたらしいで（笑）。　島田雅彦（徒然王子）：茶なんか、いくらでもヘソでわかしますけどね。

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【妄想選考会３】池澤夏樹（ナッキー）：顔合わせもすんだことですし、選考に入りますか。僕は朝吹真理子さんの『きことわ』で問題ないと思います。　川上弘美（ろみたん）：賛成です（にこにこ）。

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【妄想選考会４】石原慎太郎（シンちゃん）：なんだい、このタイトルは。フランス語かい。　徒然王子：石原さん、ひょっとしてお読みになってないんですか？　主人公女性２人の名前をくっつけてるんですが。貴子と永遠子。シンちゃん：なんだ、つまんねえな。思わせぶりか。

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【妄想選考会５】高樹のぶ子（のぶたん）：ねえ、でも、この子の文章って、川上さん、あなたのにちょっと似てない？　ろみたん：そうですかあ？　のぶたん：貴子と永遠子が子供時代に車の後部座席で「とわちゃん」「きこちゃん」って戯れる場面あるでしょ。あそこなんか、似てるわよー。

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【妄想選考会６】エイミー：そんなこと言ったら、小川さんの小説にだって少し似てますよ。　村上龍（リュウ）：金井美恵子にも似てますね。　センジィ：金井さんみたいな毒はないけどねえ。

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【妄想選考会７】シンちゃん：誰に似てたってどうでもいいよ。俺はこういう女子供のちっちゃな世界に充足してるような小説にはまったく興味が持てないね。　小川洋子（よこたん）：それはどうでしょうか。朝吹さんのこの小説は、時間の多様性を描いて大きな小説だと思いますが。

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【妄想選考会８】ナッキー：まさにそうですね。カップラーメンを作る３分、貴子と永遠子が別々に過ごした25年間、地球ができてから今日に至るまでの悠久の時。たくさんの時間の矢が重なって、共鳴しあい、深い奥行きを作り出している作品だと思います。

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【妄想選考会９】シンちゃん：、ま、俺のホームグランドの葉山を舞台にしてるのはえらいけど、俺はやだね、こういう女おんなした小説は。村上くんはどうだい。　リュウ：いや、レベルは高いんじゃないですか。他の候補作と相対的に比べた場合、ですけどね。

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【妄想選考会10】そうですか？　僕は穂田川洋山というあらかじめ「さん」づけで呼ばれるのを拒否してる新人の２作目『あぶらびれ』もかなりいいと思ってますけどね。　シンちゃん：「きことわ」だの「あぶれびれ」だの、わけわかんねえタイトルばっかつけやがって。

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しまった。名前入れるの忘れた。さっき「あぶびれ」もいいと発言したのは徒然王子です。

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【妄想選考会11】テルちゃん：いやいや、石原さん、タイトルには一家言持つ僕にしてみれば、「おや？」と思わされるだけマシやと思いますよ。これまで、もっとひどいタイトルありましたやん、『しょっぱいドライブ』とか。

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【妄想選考会12】徒然王子：石原さん、ひょっとしてお読みになってないんですか？　「あぶらびれ」というのは鱒類の背鰭の後ろのほうについてる鰭のことだって、ちゃんと作品の中で説明されてますけどね。　シンちゃん：俺に文句言うのは芥川賞とってからにしてくれよ。

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【妄想選考会13】エイミー：あーら、ごめんなさい、あたしもとってなくて。　シンちゃん：キミは直木をとってるからいいんだよ。とはいえ、昨今はいざしらず、俺がとった頃は、賞としての価値は圧倒的に芥川のほうが高かったけどね。

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【妄想選考会14】徒然王子：さすが、青少年健全育成条例に抵触するケッサク『太陽の季節』の作者のおっしゃることはちがうなあ（嘲笑）。　テルちゃん：まあまあ、島田くんもそのくらいにしぃな。洋介山の話をしようやないの。　エイミー：洋山！

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【妄想選考会15】エイミー：なんか、ヘンなんだよね、穂田川くんて。デビュー作『自由高さＨ』も物語が始まっていきなり柿渋の塗り方についてねちねちレクチャーしたりしてたけど、この小説もとってもヘン。

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【妄想選考会16】徒然王子：自然界に存在してはならない交配種の鱒を釣って回収するのを頼まれた主人公が、依頼人が住んでいる山梨の田舎に行く。そこの住人が奇人変人揃いでかなり可笑しいですね。　センジィ：マラソンの選手みたいな遊びね、あれ、いい。

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【妄想選考会17】ろみたん：「おつおり」ですね。自分でもやってみたくなる遊びですよね。　よこたん：気取った言い回しが「あずなぶる」。こういう言葉遊びは楽しいですね。　徒然王子：異化効果でしょう。　リュウ：異化効果、ね。そんなご大層な仕掛けが必要な小説かな、これ。

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【妄想選考会18】のぶたん：わたしも楽しかったな、この小説。男の子っぽいとこが可愛い。でも、受賞作のレベルには至ってないんじゃない？　エイミー：あたしもそう思う。男の子っぽいっていうより童貞臭いっていうかさ、旅館の女主人の描写がなってないよねー。

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【妄想選考会19】シンちゃん：俺は小谷野敦の『母子寮前』でいいや。親孝行で感心じゃないの、この人。マザコンかもしれないけど、まともな男はみんな母親を愛するもんなんだよ。ただ、まあ、病院で煙草吸わせろってのはいただけないな。今どき、煙草吸う奴なんて野蛮人だろ。

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【妄想選考会20】徒然王子：僕は反対ですね。私小説としての新しさがない。発見がない。日記と変わりないでしょ、この書き方じゃ。　テルちゃん：何でもかんでも新しせんでもええやん。私小説の伝統を守っていくのも大事なんちゃうの。僕は面白かったで。少なくとも、文体は個性的やと思うわ。

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【妄想選考会21】エイミー：ねえねえ、この小谷野って人、ほんとにこんななの？　ここに書かれてるのが事実だとしたら、やばいでしょ。お母さんのことを『未来少年コナン』のヒロインに喩えるとか、いい年してありえないわ（笑）。　テルちゃん：いや、それも味やという読み方はできひん？

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【妄想選考会22】のぶたん：ありえないっていったら西村賢太の『苦役列車』でしょ。あたし、もううんざりなのよ、この人のいっつも同じことの繰り返しを読まされるのは。　よこたん：下品なんですよねえ。でも、下品なんだけど、つい、笑ってしまっている自分がいて。

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【妄想選考会22】のぶたん：ありえないっていったら西村賢太の『苦役列車』でしょ。あたし、もううんざりなのよ、この人のいっつも同じことの繰り返しを読まされるのは。　よこたん：下品なんですよねえ。でも、下品なんだけど、つい、笑ってしまっている自分がいて。