帝国データバンクは9日、貸切バス事業者の年収入高推移などをとりまとめた「貸切バス事業者の経営実態調査」の結果を発表した。同調査は、4月29日に関越自動車道で発生した高速ツアーバス事故を受けて行われたもの。対象は全国の貸切バス事業者1,282社。

それによると、2011年1~12月期の年収入高が判明した969社について年商規模別に見た場合、「5億円未満」の小規模業者が全体の9割弱となる87.9%(852社)を占めることが分かった。一方、「10~50億円未満」は5.1%(49社)、「50億円超」は0.3%(3社)にとどまっている。

2011年の平均年収入高は1社あたり2億8,130万円で、2000年2月の改正道路運送法(貸切バス事業への参入規制を免許制から許可制に緩和)施行後、2番目の低水準を記録。規制緩和前の99年の平均年収入高は3億6,120万円となっており、比較すると22.1%も減少していることが判明した。これは、規制緩和以降、新規参入業者が増えて価格競争が激化した結果、収入が悪化したためと考えられる。

平均年収入高についてこれまでの推移を見てみると、改正道路運送法が施行された2000年以降は減少基調が続き、2003年に3億円を下回った後はほぼ横ばいで停滞。その後、リーマン・ショックの影響を受けた2008年に規制緩和後最低水準を記録し、以降も収入の回復は見られない状況だ。

1社あたり年収入高推移(出典:帝国データバンクWebサイト)

2011年の収入高増減については、「減収」は58.6%(374社)と全体の約6割が減収基調にあることが判明。一方、「増収」は41.4%(264社)だった。

2011年の損益状況を見ると、「黒字」を確保した企業は16.1%(206社)にとどまったのに対し、「赤字」と判明した企業は83.9%(1,076社)に上った。規制緩和前の99年は、「黒字」判明企業が19.8%(254社)だったことから、規制緩和以降、黒字判明企業の割合はさらに減少していることが分かる。

貸切バス事業者数は、規制緩和以降増加しているが、過当競争を招き、収益状況は年々悪化している。同調査は、「多くの企業は経費の過半を占めるといわれる人件費を抑制すべく、人員削減や運転手の賃金水準の切り下げを実施。結果として、長時間労働などで運転手の勤務状況も悪化した」と指摘。

その上で、「国土交通省は今回の事故を受け、バス運転手の安全基準を見直す方針だが、過当競争で低収益に苦しむ現状の業界環境を改善しなければ、根本的な問題解決にはつながらない」とし、「むしろ人件費が増え、今後、零細業者の淘汰が進む」と分析している。

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