ゲームの「仮想通貨」盗み現金化 相次ぐ摘発
窃盗団、2カ月で500万円相当を荒稼ぎ
他人のIDを使ってオンラインゲームに入り込む不正アクセス事件が後を絶たない。ゲームで流通するアイテムや仮想通貨を換金して巨額を稼ぐグループもあり、愛知県警が9月に少年ら2人を逮捕するなど摘発が相次いでいる。オンラインゲーム業界が急成長する一方、パスワードを聞き出す手口も巧妙化。関係者は利用者の自衛の重要性を訴えている。
アイテム3点と仮想通貨1200兆円(現実の日本円で計200万円相当)、アイテム55点と仮想通貨100兆円(同80万円)――。県警が9月に不正アクセス禁止法違反容疑で逮捕した埼玉県草加市の少年(18)ら2人は他人のIDでゲームに侵入。ネット上の衣服などのアイテムを盗んではインターネットで転売し現金化するリアル・マネー・トレード(RMT)を繰り返していた。
不正に得た利益は今年2~3月で少なくとも500万円。ゲーム上の知人5人でパスワードの聞き出しやアイテムの転売を分担していたという。
警察庁のまとめによると、2009年に摘発されたサイバー犯罪6690件のうち、同法違反は前年比45.6%増の2534件。利用者の申告などによる認知件数は2795件で、「オンラインゲームの不正操作」が345件を占めた。愛知県警も9月に仙台市や福岡市の男を書類送検するなど摘発が相次いでいる。
日本オンラインゲーム協会(東京・渋谷)によると、ゲーム運営会社は国内に百数十社あり、約500種類のゲームを提供。会員登録した利用者は20代を中心に延べ約8500万人。昨年の業界の総売り上げは約1300億円に達し、年々成長を続けている。
ゲーム運営会社はセキュリティーの向上とともにパスワードのこまめな変更などを利用者に求めているが、パスワードを聞き出す手口も巧妙だ。
県警が摘発した少年らはゲーム内のチャットで好きな食べ物やペットの名前などを聞き出し、忘れたパスワードを再発行する際に必要な「秘密の質問」の答えを類推。無断でパスワードを変更しゲームに侵入した。
福岡市の会社員(23)は希少なアイテムの持ち主を見つけると、友人を装いゲームで接触。写真を交換する機能を使うのに必要だとうそをついてパスワードを聞き出していた。
同協会の川口洋司事務局長は「各社とも対策に努めているが不正といたちごっこになってしまう」と指摘。大手ゲーム会社の担当者も「被害に遭うことを想定せず、対策を講じるのに消極的なユーザーも多い」と話す。
同協会は今年4月からゲームを利用するたびに新たなパスワードを携帯電話に発行するシステムを導入。携帯電話で本人確認ができ低コストで利用可能といい、普及を進めている。同事務局長は「不正が横行すれば、業界の成長が止まりかねない。利用者がパスワードを人に教えない、強いセキュリティーを活用するなどの対策を取ることも大切」としている。