異能の人・みうらじゅんに聞く

「完全に自分をなくすと、すごく爽快」「ブームはいつも誤解から生まれる…」

【異能の人・みうらじゅんに聞く】「完全に自分をなくすと、すごく爽快」「ブームはいつも誤解から生まれる…」
【異能の人・みうらじゅんに聞く】「完全に自分をなくすと、すごく爽快」「ブームはいつも誤解から生まれる…」
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「マイブーム」「ゆるキャラ」の名付け親で知られるみうらじゅんさん(58)。テレビに雑誌、そして産経新聞でもコラム「収集癖と発表癖」を連載するなど幅広く活躍するが、突き詰めると「肩書のよくわからない人」だ。美大を卒業後、大きな組織に属することなく35年間続けてきたのは、世の中に「なかった仕事」という。「やりたいことが見つからない」「意中の会社に入れなかった」と嘆く若いあなたも、悲観するにはまだ早い。このほど『「ない仕事」の作り方』(文芸春秋)を刊行したみうらさんに、仕事術や心構えについて聞いた。

肩書を聞かれて「イラストレーターなど」とする場合が多いけど、僕、そんなに描いてないんですよ。週刊文春の自分の連載「人生エロエロ」のイラストぐらい。だから、もはや仕事のメインは「イラストレーターなど」の「など」なんです。

でも、世間は「何をしてる人なのか」がすごい知りたいみたい。一時、親戚レベルでは「じゅんはインストラクター」ということになってた。彼らは「イラストレーター」という言葉は知らないから。本来は「何のインストラクター?」となるんだけど、通りのいい名称だと、それ以上聞かない(笑)。ここ数年で「俺、ない仕事をやってる」ということが自分の中で判明したんで、今後は「ない仕事」でやっていこう、と。

〈「みうらじゅん」を肩書にしてもいい気がする〉

それも何か、男前過ぎて恥ずかしい(苦笑)。去年、飲み屋で片山さつきと間違えられてるくらいだから。髪形だけで、性別も超えちゃってるし。

実は、大学時代に「サンリオ」と「シンコーミュージック」の2社だけ就職試験を受けた。サンリオの面接で「牛のキャラクター出したいんです」と言ったら、「自分で出されてはどうですか」って言われた。確かにそうだけど。でも後に、サンリオは牛のキャラクターを出したし、「ぐでたま」も、ゆるキャラブームがあったから出たんだと思うよ。俺、ぐでたま好きだもん。いま、ゆるキャラもメインキャラも同じところにいるんだよね。

〈なかなか内定が出ず、追い詰められる学生も多い〉

就職は「ある」と思うから怖い。「ない」と思えば楽なのにね。受けに行って僕は落とされたから「結局ないんじゃん!」って。というか、どうやら自分のやりたいことは、そこにはないんだとわかった。

素晴らしい先人と同じことをやってもしようがないって、最初から気付いていた。他人があまり憧れない仕事を「すき間産業」と呼び、さも楽しそうにやるのはどうかな、と思ったんですよ。居酒屋チェーン的に「喜んで!」。雑誌の風俗ルポも、実は僕、風俗全然ダメだったんだけど、「喜んで行かせてもらってる」ことになってたから、エロのイメージになった。

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