【1月10日 AFP】2011年の東日本大震災をもたらした東北地方太平洋沖地震が、それまで地震発生の可能性が低いとされていた断層で起きた理由についての手がかりを発見したとする日米の共同研究結果が9日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 日本の地震対策のみならず、米カリフォルニア(California)州のサンアンドレアス断層(San Andreas fault)など、類似の特徴を持つ世界各地の断層で起こりうる地震への対策に影響をもたらす発見だと研究チームは述べている。

 海洋研究開発機構(Japan Agency for Marine-Earth Science and TechnologyJAMSTEC)の野田博之(Hiroyuki Noda)研究員と米カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)のナディア・ラプスタ(Nadia Lapusta)教授はこの研究で、2011年3月11日に起きたマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震のコンピューターモデルを作成し、分析を行った。

 東北地方太平洋沖地震は、太平洋プレート(岩板)がオホーツクプレートの下に沈みこむ日本海溝(Japan Trench)で起きた。震源は仙台から約200キロメートル沖の海底のひし形をした領域の中心部だったが、ここはプレートの動きがスムーズで安定しているため、震災以前は安定した場所だとの見方が一般的だった。

■安定して動く断層セグメントでも大地震の恐れ

 通説では、この安定した動きによってひずみの蓄積が防止され、地震発生の可能性を弱めていると考えられてきた。

 だが今回の研究で、安定した動きを長期間続けているこうした断層セグメントでも、近くで起きる地震の影響で強度が弱まることが分かった。また、地質活動によって熱せられた地質流体が浸透すると、これが潤滑剤の役割を果たして大きなずれを誘発することも分かったという。

 電子メールでAFPの取材に応じた野田研究員は、安定して動く断層セグメントは地震発生を防ぐ役割を果たすとされていたが、今回の研究により大地震の発生源となりうることが示されたと述べた。

 野田研究員とラプスタ教授は、この研究結果が日本政府の地震対策に組み込まれることを期待している。政府の地震対策をめぐっては、首都圏に過大な焦点を置いてきたとする批判の声も出ている。

 今回の研究結果を受けて、米カリフォルニア州の太平洋岸沿いに延びるサンアンドレアス断層での地震リスク評価も見直しが迫られる可能性があるという。(c)AFP