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原発事故関連では煽り記事が非常に多く、あまり煽ると正しい情報が伝わらないと常々思っている私としては心配になります。
で、「現代ビジネス」の煽り記事。

- 実はこんなに高い あなたの町の「本当」の放射線量 公式発表は「低く出る」よう細工をしていた
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/5688
東京・永田町の首相官邸のすぐ近くに、「溜池交差点」がある。この東京のど真ん中で、購入したばかりのガイガーカウンターを用い、放射線量を計測した人物がいる。国土交通省政務官の小泉俊明代議士だ。

真新しいガイガーカウンターが示した数値は、「0・128μSv/h(マイクロシーベルト毎時)」。この結果を見て、小泉氏は目を疑った。

「私の事務所には、小さなお子さんを持つ親御さんから放射線量を心配する声が多く寄せられていました。ならばと、いつ、どこでも調査できるよう、ガイガーカウンターを買ったのです。

 地元に帰る直前の5月2日、試しに溜池交差点付近で測ったのですが、この『0・128』という数値を年間の被曝量に換算すると、1・ 12mSv(ミリシーベルト)となります。これは、国際放射線防護委員会の定める一般公衆の年間被曝許容限度(1mSv)を超えるものです。

 ちなみに、首都高速の『霞が関』入り口付近でも測ったのですが、やはり0・11と高かった。福島第一原発から220km以上離れた東京で、これほど高い数値が出るとは予想していませんでした」
(一部太字にしました。)

ええと。
まずそもそも年間被曝許容限度(1mSv)って自然界からの放射線は含まないそうです。

- 線量限度 とは - コトバンク
http://kotobank.jp/word/%E7%B7%9A%E9%87%8F%E9%99%90%E5%BA%A6
個人が受ける放射線被曝(ひばく)量をできるだけ抑えるために設定された線量値。ただし、自然界からの放射線(平均で年間2.4mSv=ミリシーベルト)と医療目的の被曝は含まれない
(2.4は世界平均で、日本平均は1.4だそうです)

なので平常時の値と比較してどれだけ超えてるかで計算しないとまったく意味はないということになります。

§

さて、はてブ経由で知ったのですが、事故前の各都道府県の自然放射線量が載っているページがあります。

- 県によって自然放射線の量が違うって本当?
http://eneco.jaero.or.jp/important/radiation/radiation04.html
都道府県別自然放射線量
(食物摂取によって受ける放射線量も入ってますけどね…)

地図のピンクとオレンジの都道府県は年間 1mSv を超えています。
しかし「西日本オワタ!年間被曝許容限度超えているところばかりじゃん!」とはなりません。
定義が違いますから。

追記110525: <追記ここから>

食物摂取分なしの自然放射線量の適切な図があったので載せておきます(Twitterより)。
赤いところが 0.127μSv/h 超えに該当する地域(溜池交差点が 0.128)。

- 日本地質学会 - 日本の自然放射線量
http://www.geosociety.jp/hazard/content0058.html#map
日本地質学会 - 日本の自然放射線量

<追記ここまで>

§

あと「全国の放射能濃度一覧」(http://atmc.jp/)を見てみると過去平常値が 0.128μSv/h 以上の都市がごろごろ。
山口市や新潟市や金沢市など。
こちらは食物摂取分を含まない自然放射線量実測値なので、現代ビジネスの記事が煽りすぎだという説に説得力を与えるかと。

§

追記110525: <追記ここから>

「全国大学等の協力による空間放射線量」というデータも。(はてブより)

- 全国大学等の協力による空間放射線量
http://eq.wide.ad.jp/files/110522univ.pdf
西日本での多いところをいくつかピックアップ:
大阪府吹田市0.13μSv/h
兵庫県明石市0.13μSv/h
鳥取県鳥取市0.13μSv/h
広島県東広島市0.13μSv/h

<追記ここまで>

§

事故前との差が 1mSv を超えたのならば警鐘を鳴らすべきですが、単発測定を元にした 1.12 という数字だけで煽るのはあまりにひどい記事です。
こういう変な煽り記事のおかげで、警戒すべき本当の危険性が伝わらなくなっていくんですよね。
困った、困った。