PLUS「フィットカットカーブ」写真はイージーグリップ・チタンコート735円(税込)。標準タイプは315円(税込)。 
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 最近の文房具の中には、それまでの歴史を覆すような凄い発明がいくつかあるのだけど、その凄さが伝わりにくいのが文房具の難しい所。よく、テレビの人から「いい文房具ありませんか?」と聞かれるので、そんな文具界の大発明を推薦するのだけど、「そういうのじゃなくて、もっと動きとかが派手な物を」とか言われてしまう。そう、文房具の「凄い発明」は地味なのだ。だから、油性なのに滑らかに書ける「ジェットストリーム」より、芯が勝手に回転する「クルトガ」の方が世間には「凄い文房具」として紹介されてしまう。いや、「クルトガ」だって十分凄いけど、「ジェットストリーム」は、その後、他のメーカーも巻き込んで「低粘度油性ボールペン」ブームを作った製品なのだ。でも、「わー、書きやすいー」では絵にならない。そういう事だ。

 最近、本気で驚いた文房具が、プラスの「フィットカットカーブ」というハサミなのだが、この凄さがまた伝わりにくい。見た感じ、普通のハサミだ。写真のタイプはチタンコートで少し高級タイプなのだが、価格も普通のハサミと変わらない。名前だって、「フィットカット」という、プラスのハンドル部分が柔らかくて握りやすいハサミのシリーズの中のひとつで、どっかがカーブしてるんだろうな、という程度のインパクトの無さだ。

  でも、このハサミ、ハサミ3000年の歴史(ハサミの原形は約3000年前のギリシャで作られたらしい)の中でも、飛び抜けた進化を遂げたハサミと言ってもいいようなものなのだ。どこが普通のハサミと違うか、それは、上の写真でも分かるように、刃が湾曲していること。違いはそれだけ。地味過ぎる変化だ。しかし、このカーブ(製品名の「フィットカットカーブ」のカーブは、このカーブなのだ)が、今までに無かった切れ味と使い勝手を実現する。このカーブを設計する際に、流体力学の祖・ベルヌーイの理論を参考にしたため、この刃を「ベルヌーイカーブ刃」と呼ぶほど、このカーブには科学が詰め込まれている。


普通のハサミと比べてみると、刃の湾曲が分かると思う 

 このカーブが、何をハサミにもたらすか、それは、このカーブによってハサミの刃の根元でも刃先でも、常に刃が開く角度が一定になると言う事(ほら、分かりにくい)。従来のハサミでは、どうしても、刃先に行くに従って刃が開く角度が小さくなる。そのため、根元と刃先では、切るために必要な力が大きくなるのだ。しかも、ハサミはテコの原理を使っているので、元々、根元の方が力が入りやすい。手元にあるハサミで、厚紙を四つ折りにして、刃先で切ってみて欲しい。まず切れない。切れても力がいるし、紙を巻き込んでしまったりもするはずだ。


普通のハサミでビニールを切ると、先の方で巻き込んでしまう事が多い
フィットカットカーブなら先まで均一に力が掛かるから、スパッと切れる 

 ところが、この「フィットカットカーブ」を使うと、スパッと切れる。ほんと、この差の大きさには驚くと同時に感動する。これまでのハサミって何だったの? というくらいの驚きだ。引き続き、紙を根元から刃先まで使って、一気に切ってみて欲しい。従来のハサミだと、刃先部分は紙を巻いてしまうけれど、「フィットカットカーブ」なら、スイーッと最後まで切れるのだ。これ、相当気持ちいい。そして、それは、単に刃を湾曲させただけで実現しているのだ。もしかしたら、今後、ハサミの刃は曲がっているのが当たり前になるのかも知れない、それだけのブレイクスルーが、このハサミにはある(見た目地味だけど)。


刃先だけでも、小さな力で簡単に切れる