『キラー・インサイド・ミー』を一足お先に観た

日本では来春公開の『キラー・インサイド・ミー』を一足お先にブルーレイで鑑賞した。

本来シリアルキラーなんだけど、それをひた隠しにし、幼少の頃から善人づらして過ごしてきた保安官が、その暴力衝動をおさえられずに、人を計画的に殺して殺して殺しまくるというジム・トンプソン原作『内なる殺人者』をマイケル・ウィンターボトムが映像化した作品。

予告編をyoutubeで見た瞬間に完璧にビビビっときて、これは絶対にすごい映画になりそうだと思い、買ってそのまんまにしておいた有名な原作もバッチリ読み込んで楽しみにしていたのだけれど、ウィキペディアによると日本公開未定となっていたので耐えきれずにUS盤のBDを買ったのだ。ところがその後に日本でも公開されることを知った。まぁ、どーせ新潟ではやらねーんだろ!けっ!BDには当然ながら日本語字幕は付いてなかったけど、原作と寸分違わぬ内容なので問題なかった。ちなみに監督のことや原作のことはこちらに書いたので参照のこと。

『The Killer Inside Me』が観たい!早く公開しろ! - くりごはんが嫌い

砂が舞い上がるほど乾き切った風土、保安官、酒、葉巻、娼婦、拳銃という、いわゆるひとつの「テキサスい」映画なわけだが、監督のセンスで結構あっさりとした仕上がりになっていて、脂っこい見た目とは裏腹にペロッと平らげることができる。それはジェシカ・アルバなどの若手のキャストを揃えた役者の力も加わっていて、特に「本当はキレものなのに、殺人願望を隠すため、普段はボンクラに見せかけてるヤツ」を演じることになるケイシー・アフレックが素晴らしく、フガフガ/モゴモゴした喋り方と、笑ってない目のギャップが「ホントにこいつ何かしでかすんじゃないか感」をかもし出してて良い。あとジェシカ・アルバはおっぱいを全部見せてるわけではないが、かなり頑張っていて、もうあんたはこういうビッチか水着になる女の役だけやっててくれと本気で思ってしまう。

ただあっさりしてると書いたが、これは良い意味で言ったのであって、原作が原作なだけに、過激なところも全部ぬかりなく丸ごと映像化しているところがとにかく素晴らしい!!ジェシカ・アルバの顔面がぐちゃぐちゃになるまで殴るとか、ケイト・ハドソンがおしっこ漏らすとか、尻の皮が真っ赤になるまでベルトでバシバシ叩くとか、まぁ、その他も思わず目を背けたくなるようなシーンが、妙に軽快なカントリーミュージックやポップスと共に連発される。そのギャップとたたみかけかたがこわいですねー。こわいですねー。

基本的に一歩引いた視点で殺しのシーンが撮られているので、臨場感こそないが、客観視してるかのような冷たさが残り、それも妙に怖かったりするのである。あとさすがマイケル・ウィンターボトムだけあって、横後背位でセックスするシーンがたくさん出て来るのは良い。映像化が難しいだろうなぁと思った原作の禅問答みたいなのは丸々カットしてるので、そこも含めて潔い脚色だなぁと思った。

ということで毎回毎回監督が代わったんじゃないかと思うくらい作風が変わるウィンターボトムだが、その中でも良作の部類。往年のクラシック映画の風格を漂わせながら噴き出すような暴力を叩き付けたということで英国式あっさりテキサス風味の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』と言ってもいいだろう。個人的にはかなりおすすめ。公開されたら劇場へ走れ!あういぇ。


オフィシャルサイト
http://www.kim-movie.com/

予告編

おれの中の殺し屋 (扶桑社ミステリー)

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