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『実質賃金を引き上げる方法①』三橋貴明 AJER2015.3.17
https://youtu.be/54A1iQdY8Zs
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一般参加可能な講演会
5月15日(金) 19時30分より『Voice』特別シンポジウム『日本の資本主義は大丈夫か――グローバリズムと格差社会化に抗して』
パネリスト:小浜逸郎、三橋貴明、中野剛志
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  「自由貿易の罠 」といえば、中野剛志氏が2009年の時点で刊行した、グローバリズムに対する警鐘本でございます。


 グローバリズムに基づく自由貿易-ここでは「モノ・サービス」に限らず、「カネ(資本)」そして「ヒト(労働者)」の移動の自由化も含みますが-により先進国の国民は貧困化していきます。特に、グローバルスタンダードが確立した世界では、製品もサービスも、
「どこの国で作っても、同じような品質」
 になってしまうのです。


 よく、農業「改革」を叫ぶ人が「付加価値を高めて~、世界で戦う~」などと主張していますが、現実には困難です。グローバリズムにおいて、最も重要なのは「価格」なのです。

 というか、付加価値、付加価値言うなら、まずはあんたがやってみなさい。付加価値を高めて、価格差10倍をひっくり返してから言ってくれ、てなもんです。


 グローバリズムが進展した結果、先進国から雇用が失われるか、もしくは国内の雇用が「安い人件費」からの外国移民に奪われていきます。日本、西欧、北米の国民の実質賃金が下がり、貧困化し、世界は「フラット化する」ことになるわけです


 というわけで、わたくし共は以前から「グローバリズム」(厳密には「日本国民を貧しくするグローバリズム」)を批判してきたのですが、アメリカでも似たような議論が起きています。


コラム:TPPで米国が払う自由貿易への代償
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0N40JS20150413?sp=true
 自由貿易は米国政府の合言葉だ。オバマ政権が環太平洋連携協定(TPP)妥結に向け、政府に貿易交渉権限を委ねる「ファストトラック」と呼ばれる貿易促進権限(TPA)の取得に意欲を示すのは、政府の伝統の一部でもある。しかし、一連の証拠が示すところによると、発展途上の低所得国に通商上の完全な最恵国待遇を認めれば、往々にして米国のコスト負担になる。(中略)
エコノミストたちは自由貿易がもたらす大きな利益に関して、古典派経済学の基本原則である比較優位説を引き合いに出す。もし貿易相手国・地域が互いに最も得意な分野
に集中すれば、最終的に双方が豊かになると主張するのだ。
米国は19世紀、その理論が誤りであることを証明した。欧州向けに鉄や綿花を輸出する一方で、「未発達な」自国の産業を保護するために高い関税を設けた。1890年代までに米国はほとんどの先進産業分野において英国を凌駕した。米国にとってそれが容易に達成できる目標であったのは、当時の英国が純粋な自由貿易の実現を頑なに目指していたためだ。
最新の研究は、相互に恩恵を及ぼす貿易およびオフショアリング(外国への業務移管・業務委託)の相手国と、そうではない相手国を分けて考える一助になる。貿易もしくはオフショアリングの相手国が先進国だった場合、米国の賃金は上昇する傾向にある。しかし、途上国が相手だった場合、とりわけ熟練度が低い労働者や中程度の労働者の賃金は低下する。
このような賃金の下落効果は製造業に限ったことではなく、他の業界の同じような職にも及ぶ。一般に製造業の賃金はサービス業より高い。しかし、輸入や生産の海外移転が増えると、製造業の雇用削減圧力は一段と強まり、職を失った労働者が従来より賃金の低いサービス業に移行するドミノ効果が生じる。こうして賃金の縮小は全体に及ぶのである。(後略)』


 長いコラムでございますが、ポイントをまとめますと、


●エコノミストや経済学者たちが自由貿易を擁護する際に引き合いに出す「比較優位説」は、現実には通用しない。(裏切る国が出るため)
●19世紀のアメリカは、欧州に対し「自由貿易を実施し、自国への輸入は「保護貿易」を実施。瞬く間に、当時の「世界の工場」であったイギリスを凌駕した
●先進国同士の貿易やオフショアリングは、互いの給料を引き上げるが、先進国と途上国で実施すると、先進国側の労働者の賃金が下がる
●先進国と途上国の貿易、オフショアリングの「先進国側の労働者」」への災難は、製造業以外でも起きる

●先進国の賃金の低下圧力は、生産の海外移転よりも、途上国からの輸入によりもたらされる場合の方が影響が大きくなる
●現在、先進国(特にアメリカ)の賃金低下に最も大きな影響を与えているのは中国
●中国の競争条件は、先進国と異なるため、非常にアンフェアな状況になっている
●中国は明らかの収奪的な競争相手国(先進国にとって)であるが、現在はハードウェアやソフトウェアの国産化を進めていっている


 となります。


 そもそも、先進国の企業の経営者が工場を外国に移転するのは、そちらの方が「儲かる」ためです。先進国側の労働者の雇用が失われ、彼らが稼いでいた所得が企業経営者、投資家、工場が移転された先の労働者、そして消費者に移転されます。すなわち、投資家からしてみれば「資本利益率」が最大化されるのです。


 本来、資本利益率の最大化は、「技術開発投資」「人材投資」そして「設備投資」という、国内における投資活動で実現されるべきものです。とはいえ、投資拡大は費用増でございますので、
「そんな無駄なことにカネを使うならば、外国に工場を移転して資本利益率を最大化せよ」
 これが、グローバル株主資本主義の決定的かつ最大の「危険」なのでございます。


 無論、資本を外国に移転すれば、短期的には利益が増えます。とはいえ、国内の投資が先細りになるため、中長期的には技術力が失われ、さらに国民が貧困化していきます


 先進国は、次第に発展途上国化していきます。逆に、工場や技術が移転されてくる発展途上国は、次第に先進国の方向に近づきます。
 最終的には、世界がフラット化され、めでたし、めでたしという話です。

 勘弁してください・・・。


 申し訳ないですが、わたくしは世界の他の全ての国々が貧しいままだったとしても、日本国が繁栄し、国民が豊かになることを望みます。なぜなら、わたくしは日本国民であり、外国の国民ではないためです。しかも政治家でもありませんので、綺麗ごとを言う必要もないわけです。


 また、現在の先進国がグローバリズムの「進展度合いを引き下げ」(グローバリズムを批判すると、すぐ「鎖国するというのか!」とか言ってくる単純おバカさんがいるので、こう書いておきます)、自国の国民が豊かになる「黄金の四半世紀」と同じ路線に戻れば、先進国の国民のみならず、途上国の国民も潤うことになるでしょう。理由は、巨大で膨張する先進国の需要に対し、途上国側が「自国で発展させた技術、ノウハウに基づき生産した製品、サービス」を輸出していくことができるためです。


 外国資本が途上国にやってきて、工場を建設し、安い労働者をこき使いながら先進国に輸出するモデルでは、途上国側に真の意味で「供給能力」はつきません。つまりは正しい意味の「経済成長」は不可能なのです。


 中国は、それを理解しています。だからこそ、外国資本を招くときは、
「えびす顔」
 を見せ、大歓迎し、自国に技術を移転させたら、
「悪鬼の顔」
 となり、容赦なく追い出そうとするわけです。(逆に、取れるもの取れないうちは、追い出しませんが)


 短期の利益を追求した先進国(特に酷かったのが日本)の企業経営者たちは、中国の「やり方」にすっかり騙され、今や自国の安全保障を危機に陥れてしまったわけでございます。


 いずれにせよ、自由貿易一つとっても、話はシンプルではないのです。本エントリーに書かれている「情報」を頭にインプットするだけで、
「TPPは自由貿易です。自由だからやるんです(竹中平蔵氏が実際にわたくしに言ったセリフそのままです)」
 あるいは、
「比較優位論があるから、自由貿易は常に善」
 などと子供じみたことを主張し、グローバリズムやTPPを推進している連中が、いかに「危険か」が分かるでしょう?


「フラット化する世界」ではなく「日本国の繁栄」を望む、にご賛同下さる方は、

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