日本のビジネスパーソンに必要なものは「コミュニケーション力」。それが、『心をつかみ人を動かす説明の技術』(木田知廣著、日本実業出版社)の主張です。そしてそんな視点から、本書では「日本人のコミュニケーション力をアップしたい」という思いを「説明の技術」というキーワードでまとめて紹介しているというわけです。
第1章「『説明ベタ』に明日から使える特効薬」にクローズアップしてみましょう。
1.「専門用語依存症」には「あと出し法」(16ページより)
プレゼンの場では、つい専門用語を多用してしまいがち。しかし、例えば「スマートフォン向けにワン・トゥ・ワンの情報を配信するところに特徴がありまして、実際にクリック率1%という高い成果を誇っています」といわれても、すべてのクライアントが納得するとは限りません。それどころか、拒否反応を示されてしまう危険性も。
そこで重要なのが「専門用語のあと出し法」。その領域に詳しくない相手にわかってもらうためには、カタカナのマーケティング用語はあえて使わない。「△△のようなものです」と、たとえ話でコンセプトを理解してもらったうえで、あとから「このような考え方を専門用語では◯◯といいます」と解説するというわけです。
2.「ダラダラ説明症候群」には情報のグルーピング(22ページより)
コミュニケーションが苦手な人は、「なんと説明したらいいんだろう?」と追い詰められるあまりダラダラ説明してしまいがち。しかし本当に大切なのは、聞き手の立場に立って、どのように報告されたら「わかった!」と感じてもらえるかを考えることのはずです。そこで著者がオススメしているのが、「情報をグルーピング」すること。
バラバラになっている情報を、たとえば「当社のねらい」「相手の言い分」「最終的な落としどころ」など3つのグループに集約して説明すれば、相手の頭のなかにスッと入っていくというわけです。
3.「対人関係冷え性」にはストーリーテリング(27ページより)
世のなかには自分とまったく考え方の違う人間がいて当然ですから、相手の言い分を一方的に否定したところでなにも解決できません。そんなときには、「ストーリーテリング」が効果的だと筆者はいいます。
自分たちの目指すべき方向をイキイキと描き、ハリウッド映画のように相手を巻き込む方法。「実は自分も昔は失敗しかけたことがあって」というように相手に共感を示しつつ、自分が困難を乗り越えたストーリーを語りかけるという手段です。
スポーツでいえば基本にあたる「説明の技術」(32ページより)
「コミュニケーションとスポーツはよく似ている」と著者。ところが、スポーツをうまくなりたいと思った場合は多くの人が練習をするのに、コミュニケーションの練習をしようとする人は驚くほど少ないそうです。
しかし、せっかくやるのなら、効率的に身につく努力をすることが大切。やみくもに「場数」を踏めばいいというわけではなく、基本を踏まえたうえで場数を踏むべきだというのです。そこで「PDCA(Plan → Do → Check → Action)」の考え方に基づき、
- 本書を読んで「基本」を理解する
- 実際にコミュニケーションで使う
- うまくいったかイマイチだったかチェック
- 改善策を考える。その際のヒントにもう一度本書を読む
このサイクルを続けることが大切だといいます。そして本書には、繰り返し読んでも効果があるように、さまざまなヒントが埋め込まれているのだとか。活用の仕方次第では、大きな効果を生み出せるかもしれません。
(印南敦史)