Google極秘のカースト制

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  • author satomi
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Google極秘のカースト制

グーグル夢の職場環境が全員のものだと思ったら大間違い

グーグル本社には正社員・契約社員・インターンから完全に隔離された第4の階級があるんです。彼らの仕事はいったい何なのか?

2007年から2008年までグーグルに勤務したアンドリュー・ノーマン・ウィルソンさんが調べてくれました

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(動画解説の訳)2007年9月、僕はTransvideo StudiosとGoogleの両社にジョイントで雇われた。どちらもカリフォルニア州マウンテンビューに本社がある。TransvideoはGoogleの委託契約先で、マウンテンビュー本社で扱う動画プロダクションを100%請け負っている。時には支社の仕事も入る。

僕の労働力はGoogleで9時から5時までの定時勤務という形で売られ、個人的に今まで経験したこともないような高遇を受けた。が、スキー旅行、ディズニーランドのアドベンチャー、ストックオプションといった待遇はなくて、季節労働のサンタから現金で年末のボーナスをもらうなんてこともなかった。

グーグルでは何千人という僕みたいな赤社員証(僕のチームはじめ契約社員のほとんど)の人間が白社員証(フルタイムのグーグラー)の人間に混じって働いている。インターンは緑の社員証

が、グーグルにはさらに第4の階級が存在するのだ。データ入力専業労働者、つまりデジタル化要員だ。黄の社員証が目印の彼らは「ScanOps(スキャン・オペレーションズの略)」と呼ばれるチームで、「Googleブック検索」に出す本を1ページ1ページ、スキャンしている。

黄の社員証をつけた労働者は僕が受ける待遇は何ひとつ受けられない。グーグルの自転車に乗って、グーグル社用豪華リムジンシャトルで帰宅し、グーグルの無料グルメ社食を食べ、Authors@Google講演に出席し、作家から直筆サイン本を無料でもらうこともなければ、本社で足を踏み込んでいいのは自分が働くビルだけ。バックパックも携帯端末もサムドライブも、他のグーグル社員と交流を深めるチャンスも一切与えられない。

グーグル社員の間でも、黄の社員証の階級はほとんど知られていない。彼らのビルは3.1459~という棟で、たまたま僕のビルの隣にあったので、毎日2:15PMきっかりに退社する姿をよく見かけた。それはベルが鳴って工場から労働者を追い立てるような感じだった。彼らの勤務シフトは4AM開始だ。

この社会的序列に興味を持った僕はある日、何を根拠にグーグルは会社が提供すべき社員の待遇から黄の社員証の階級だけ遠ざけているのか調べてみることにした。彼らは同じグーグルの、正面にグーグルの社章がついてるビルで、委託先を通じてグーグルの仕事をしている。その意味では僕のチーム、他の情報ワーカー、厨房スタッフ、シャトル運転手、ビル管理人などと全く同じではないか。

そこで上司にカメラを借りて駐車場に出て、黄の社員証の労働者が3.1459~工場から退社するところを撮ってみたが、うまく撮れなかったので1週間後また撮り直してみた。撮るからには被写体に話を聞いて彼らの視点も反映させた方がいいと考え、そのまた1週間後、何人かに近寄って仕事の話を聞かせてくれないか尋ねてみた。

最初の女の子は無視同然で、携帯で誰かに電話してしまった。他の青年2人は喜んで話すと言い、僕のメールアドレス入りの名刺を受け取ってくれた。また別の青年も快諾し、仕事は「やりたい仕事じゃないけど、これで生活費は払える」とポツンと言った。

で、メールアドレスを渡そうとしたら、赤い社員証つけたデブの白人の男がものすごい剣幕で割り込んできて、社員証を見せろ、上司は誰だ、と聞いてきた。彼は、 黄の社員証の労働者は「超極秘の人々」「超極秘の仕事」をしている、僕の嗅ぎまわってることは「超極秘の領域」なのだと言うと、今度は黄の社員証の労働者に向かって軽々しくしゃべるなと叱り飛ばした。話を聞いてるうちに僕の挙動がバレたのは、最初の女の子が黄の社員証の裏に書かれた指示通りにしたからだと分かった。裏には「黄の社員証の仕事について誰かに聞かれたら上司に報告せよ」と書かれていた。

デブの白人の男は3.1459~ビルのロビーに連れていって、警備を呼んでくるからそのまま待て、と言った。男は赤の社員証の警備員なので、同じビルで働く黄の社員証のScanOpsの従業員より待遇は恵まれているのだ。

やがて異様に物静かな黒人の警備員を連れて戻って、状況を説明した。そっちの警備員にはこのビル内部の仕事が実際どれぐらい極秘なのか、わからない様子だったが、ともかくグーグル社内警備の上に報告すると言った。こうして僕はこの極秘エリアから12m離れた自分のビルに戻って仕事を続けた。(後略)

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結局アンドリューさんはこれが元で翌日、会社を首に...(追:最初撮ったビデオも提出するよう言われサンフランシスコの自宅に飛んで帰ったんですがどこを探しても見つからず→グーグルではなくTransvideoに戻れと言われ→解雇→上司同伴でグーグルでダンボールに荷物まとめて電車でサヨウナラ)。

同じ敷地で同じような仕事してるのに同じ待遇を受けないのはなぜなのか、もしかして人種(スキャンチームは有色人種が多い)とか社会階級が関係してるんじゃないか、という素朴な疑問を解決したかっただけなのですが、地雷を踏んでしまったようですね。

グーグルは白人以外の社員も大勢いるので人種は関係ないと思いますけどね。また、社員にはショックでも、「リムジンで帰れなくて可哀想」とかもあんまり思わないですよ。それで安定した収入が得られるのだし。そういう人種・階級のことが原因というより、Google Books事業は極秘だし単純労働だからワーカーを缶詰にしたと見る方が自然な気がします。

ただ、正社員も契約社員も別け隔てなく厚遇するというグーグルのイメージからすればダメージですよね。全契約社員に署名が求められるグーグル行動準則には、こんな風に全員平等と明記されているのです。

我々は全従業員が自分の可能性を最大限発揮できるようなサポーティブな労働環境を約束する。グーグラー各人も、ハラスメント、威嚇、バイアス、違法な差別のない、互いを尊重する労働の場の創出に全力を尽くすものとする。

外の我々から見たらグーグルの職場環境は夢のまた夢。厚遇しなきゃならない義理もないのですが、やるからには内部で均一になるようにやらないと、逆に階級差・バイアスが目について、グーグルが謳う価値観にマイナスに響いてしまいますよね。海の向こうにアウトソースすりゃいいのか、という話もありますが。まあ、悪じゃないにしても善でもない感じですねー。

[ANDREW NORMAN WILSON, Thanks, Andrew!]

[Boomerang via FFFFound]

Brian Barrett(米版/satomi)