名目成長率4%論:エスタブリッシュメント主流から嫌われるこの数字が閉塞を打破する | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

名目成長率4%論:エスタブリッシュメント主流から嫌われるこの数字が閉塞を打破する

秘書です。


増税と金融引き締めが常に正しいと考える政策コミュニティ主流の「空気」

努力はしたくない、勉強もしたくない、手練手管で今の給与を維持したいという「打算」

子どもたちの就職は大丈夫かという「心配」



かつて、「空気」+「打算」が「心配」につながらなかったのは、ひとえに経済が成長していたからです。

経済規模が縮小している中では、「空気」+「打算」→「心配」です。

つまり、名目成長率でいえば微弱な成長しかできず、すぐに経済規模が縮小する水準であるにもかかわらず、高度成長期とおんなじ思考形式(勝ちパターン)のエスタブリッシュメント主流こそが、子どもたちの就職難の根本的原因をなしているのではないでしょうか。


まるで、日露戦争の必勝パターンで、空母を中心とする米国機動部隊に何度でも繰り返し戦いを挑み、連戦連敗しているような状況です。

なんでそうなるのか?2つの仮説。

①インフレ時代の人事査定がそのまま今にいたっており、インフレ対策としての増税と利上げが正しいということが自分の立身出世の基準である。(デフレと闘っても人事評価にならない)

②社会人になるときの試験勉強(正解の決まっている勉強)以来、勉強しておらず、20代のときの思考パターンのままである。(ある特定の正解があることが前提の思考であり、その正解とはエスタブリッシュメント主流のコンセンサス。コンセンサスは空気だから実証は必要なし。そして、人事情報に全力を集中する。)

いずれにしても、戦前・戦中の「失敗の本質」から学ぶことなく、何度も同じ過ちを繰り返すというのは、本当に歴史の学びが薄い弊害ですね。



■マスコミまで「増税止む無し」の大合唱
増税だけが財政再建の道ではないことを示す
2010年12月29日 ダイヤモンドオンライン 高橋洋一 [嘉悦大学教授]

 先週末に、民主党が「たちあがれ日本」に連立参加を持ちかけていることが話題になった。もちろん、たちあがれに日本は、民主党が復縁を持ちかけている社民党と外交・安保で真逆の政策だ。

 ただ、郵政民営化には消極的で、大きな政府路線で民主党とたちあがれ日本で共通項がある。大きな政府路線から、財政再建でも増税路線と一致する。しかも、民主党の現執行部は、口ではデフレ脱却というが、マニフェストや党内からの日銀法改正要望を無視して、事実上のデフレ容認路線であり、これもたちあがれ日本と同じだ。

 もっとも、この連立話は立ち消える可能性が高く、与謝野氏だけが閣僚参加する布石かもしれないが、先の総選挙で与謝野氏は小選挙区敗退・比例復活だから合点がいかない。ただ、民主党は財務省が主導する増税による財政再建至上主義に乗っていることは明らかになった。

経済成長による税収増こそ
財政再建のオーソドックな道
 財政再建を増税によって行おうとする点では、民主党も自民党も大差ない。ちなみに、12月26日のテレビ朝日番組で、仙谷由人官房長官は、このままで財政は立ち行かなくなるので増税が必要と、増税による財政再建を発言した。自民党も先の参院選で、消費税増税による財政再建を打ち出している。菅総理も消費税増税に前向きだ。多くのマスコミも財政再建には増税といっている。

 しかし、財政再建の手段は増税だけではない。経済成長による税増収もある。実は、この方が財政再建の歴史からオーソドックスな方法であるが、なぜか日本ではほとんど忘れ去れている

現在のようなデフレでは財政再建はうまくいかない。1960年代からのOECD加盟国の中で、財政再建に成功した事例と失敗した事例を調べると、名目成長率が高くなったほうが成功している(グラフ1)。 


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小泉政権のときにも、十分な成長ではなかったものの、経済成長によってプライマリー収支は大幅に改善した(グラフ2)。

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 こうした過去の教訓から、増税の前にデフレから脱却して、名目成長率を高くすることが重要になってくる。具体的には、プライマリー収支を改善するために、名目成長率を先進国並みにの4%にしておく必要がある

 それは以下の説明でわかる。

 財政再建とは債務残高対GDP比を発散(上昇)させないことなので、債務残高対GDP比の変化に着目しよう。


マスコミまで「増税止む無し」の大合唱
増税だけが財政再建の道ではないことを示す
123456(債務残高/GDP)の変化分
=-(プライマリー収支/GDP)-(名目成長率-名目国債金利)×(前期の債務残高/GDP)……(*)

 この右辺の第1項から、
プライマリー収支を黒字化すると、債務残高対GDP比が減少し、
プライマリー収支が赤字化すると、債務残高対GDP比が増加し、

 右辺第2項から、
名目成長率>金利なら、債務残高対GDP比が減少し、
名目成長率<金利なら、債務残高対GDP比が増加することがわかる。

 これまでの歴史や各国のデータから、
名目成長率<4%なら、ほぼ名目成長率<金利、
名目成長率>4%なら、名目成長率>金利か、名目成長率=金利がわかっている(グラフ3)。


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 これから、
①名目成長率<4%なら、プライマリー収支をかなり黒字化しないといけないが、
②名目成長率>4%なら、時間がかかるが、財政再建は達成可能が容易になることがわかるだろう。

 名目成長が高くなるとプライマリー収支が良くなることを考えれば、名目4%が財政再建のための最善の策になる

なお、名目成長率を4%程度にするのはそれほど難しいことではない。今のマイナスのインフレ率をプラスにするには、11月11日と12月2日付け本コラムを参照していただきたい。

長期にわたる財政展望の
試算を拒否した財務省
 ある人が、(*)式を見て「かならず金利の方が大きくなる。そうでなければギャンブルが成り立ってしまう」と、言ったことがあった。

 これが国債金利ではなく民間金利だったら、それは正しい。常に成長率の方が高ければ、民間の金利で借り入れて何かに投資すれば、かならず儲かるということなるので、それはあり得ない。

 しかし、国債金利は民間金利より必ず低い。というのは、国債金利はリスクゼロの金利であるが、民間金利はリスクゼロでなく、国債金利の上にさまざまなリスクが乗せられて決まるからだ。

 こういうことをいう人の背景には、経済成長率が高まると、金利が高くなるので、経済成長では財政再建できないという考え方がある。

 なぜそう考えるかといえば、財務省が公表している財政の中期展望で、成長率が高くなった場合の金利の関係を3年間だけ計算しているからだ。3年間は金利が高く利払い費の方が、成長率が高くなった場合の税収増より少し大きい。

 そのため、税収増があっても金利が高くなって財政再建しないと思い込む人が多い。ちなみに、その数字を信じ込んでいた元総理秘書官もいた。その秘書官が付いていた総理も、判断ミスをしただろう。

 しかし、5年以上先を計算すると、金利の上昇による国債費の増加分はほとんどなくなる。利払費は国債の年限によって違うが、年限は平均で5、6年なので、5、6年後にはほとんど増えない。

 ある国会議員が質問主意書で、財政の中期展望をもっと先まで計算しろと政府に要求したことがあるが、「計算しない」と財務省から答弁があった。この計算しないという答弁は驚きだ。経済成長率が上がって財政破綻するのなら、世界中の国がみんな破綻しているはずだ。


国債発行額自体が
過剰に膨らまされている
 それにしても、ここ数日のマスコミ報道における「2年連続で租税等収入が国債発行額を下回る異常事態なので、増税が必要」という叫びには、ほとほとうんざりだ。

 たしかに、財政状況は普通ではないといえる。ただ、ほんの少し前の07、08年度予算では、歳出総額83兆円、租税等収入は53.5兆円程度、国債発行額は25兆円程度だった。民主党政権になって、デフレによる税収の落ち込みはあるが、従来の自民党政権での施策をそのままにして(予算組み替えをせずに)、民主党の施策を上乗せしたために、歳出が膨らんだ。

 その結果、10年度と11年度はそれぞれの歳出総額は92.3兆円、92.4兆円。これに対して、それぞれの租税等収入は37.4兆円、40.9兆円を見込んでいるため、国債発行額の44.3兆円を下回ったのだ。

 そこで増税というが、それよりも歳出規模を抑えるための予算組み替えが先だ。だがマスコミは、第1に上に述べたように、歳入増を増税でしかできないと思い込んでいる。第2には国債発行額自体が過剰に膨らまされた数字であることを、まったく報道しない。

 国債発行額44.3兆円のからくりを述べよう。

 歳出の内、国債費は21.5兆円。これは問題ないと誰も気にとめていないが、過剰計上だ。その内訳を見てみると、債務償還費が11.6兆円と利払費が9.9兆円。くせ者は債務償還費だ。

 そのほとんどは、特別会計に関する法律第42条第2項に基づく定率繰入といわれるものである。具体的には、前年度期首における国債残高の1.6%が、一般会計から国債整理基金に繰り入れられる。国債整理基金で国債償還のために資金を積み立てるわけだが、この仕組みを減債制度という。

 借金返済のためにお金を積み立てるのは、当然だと思うかもしれない。しかし、よく考えてみると、借金をする場合(=国債発行)、借金を返すための手持ち金(=歳出)を増やすために、さらに借金を増やすのは本末転倒だ。要するに、減債制度の運営のために、さらに国債発行を増やさなければいけないのはおかしい。


つまり、債務償還費11.6兆円を計上することで歳出が11.6兆円膨らみ、その分の新規国債発行額が増えているのだ。このように債務償還費を歳出に計上しているのは先進国では日本だけだ。国際基準で歳出予算を書き直せば、44.3兆円から11.6兆円を引いた32.7兆円が新規国債発行額だ。

 ちなみに、日本でも、1982~89年度、93~95年度は定率繰入が停止されていた。先進国では存在しない減債制度を日本だけが墨守しつつ、財政赤字を過度に強調するはおかしい。

プライマリー収支の赤字は
小泉政権下の最悪時程度
 ちなみに、日本のマスコミは国債発行額44.3兆円が、あたかも財政赤字のように報道しているが、国際的基準で見た財政赤字は32.7兆円なのである。

 もっとも財政状態を見るには、上述したように財政赤字は必ずしも適切でなく、財政収支から金融関連を除いたプライマリー収支(=税収などから(国債費を除いた歳出)を引いたもの)で見る。2011年度予算で見ると、プライマリー赤字は22.8兆円だ。

 財政再建の議論では、国債発行額44.3兆円をゼロにしなければいけないと思い込んでいるマスコミが多い。そこで、経済成長だけは無理で、増税という話になる。しかし、黒字化しなければいけないのは、プライマリー赤字22.8兆円だ。

 この赤字は解消可能な数字だ。小泉政権での最悪時は2003年の28.4兆円。それが07年には6.4兆円まで、22兆円も改善したからである

→成果のあった小泉政権を「空気」で全面否定するから、正しい解決策がとれない。

→名目成長率4%論は、日本の政策コミュニティ主流では「悪魔の手法」といわれています。そんな成長はできない、と。しかし、正常な先進国はみな4%程度の成長はしています(潜在成長率2%+まともな物価の安定2%)。名目成長率4%は無理という人は、何でそんなに成長するのかという。では逆に聞きますが、青年たちが就業し、能力があるにもかかわらずパートしか職がない女性がほんとうにやりたいことをしたら成長率があがりませんか?若者、女性を排除し、潜在的な可能性を封印している現体制の潜在成長率0%はしかたがない、というのはとんでもない社会的不正義でしょう?潜在成長率0%論こそ、青年たちから未来を奪う悪魔の論理です。何が悪魔かというと、青年が社会に出ようと思えば親の雇用を奪うしかないというゼロサム社会をつくっているからです。成長がなければゼロサム社会になってしまいます。一家の中にゼロサム状況をつくっている。これが悪魔の論理ではなくて何が悪魔なのでしょう?終身雇用のエスタブリッシュメント主流には理解不能なのかもしれませんが)

■ケインズより先に恐慌脱出 年末に「是清自伝」のすすめ
2010.12.28 zakzak 高橋洋一
連載:激震2010 民主党政権下の日本

年末年始はまとまって時間がとれる貴重な休みだ。何かとせわしくテレビもいろいろな番組を提供するが、じっくりと読書をするのもいい。おすすめは、『高橋是清自伝(上・下)』(中公文庫)と『随想録』(中公クラシックス)だ。

 まず断っておくが、私は高橋是清と同姓であるが、縁戚関係はない。是清の研究はいろいろな人で行われており、その子孫に洋一という実在人物がいる。そこで、私は何回か是清研究者から照会を受けたことがある。

 また、是清の大恐慌における経済政策は世界的にみても顕著であったので、海外でもよく研究されている。現在のFRB(連邦準備制度理事会)議長のバーナンキ氏もプリンストン大教授時代に是清の経済政策を高く評価していた。

 私がプリンストン大にいたとき、バーナンキ氏はひょんなことから私が是清の親戚と誤解していた。もちろんその誤解は解いた。

 いずれにしても、是清の自伝と随想録は面白い本だ。是清の人生は波瀾万丈だ。それほど裕福な出身でなかったが、英語と出合い、海外に行くが、そこで騙されて奴隷同然の召使いにされる。それを逃れて帰国し、英語教員などを務めた後、官僚になり、現在の特許庁の初代長官に就いて特許制度の基礎を作った。

 その後ペルーに渡り銀鉱事業を行うが失敗。帰国後、日銀に入行。日銀副総裁として、日露戦争の際、戦費調達のために外債調達で活躍した。

 その後政界入りし、1913年から34年までの間に大蔵大臣に7度もなった。21年には首相にもなっている。最後は軍部によって自宅で暗殺された。

 クライマックスは、31年からの金解禁停止(金本位制からの離脱)や公債日銀引き受けによる財政出動だ。現在でいうところの財政政策と金融政策のフル活動によって、世界大恐慌の中でも日本経済をデフレからいち早く脱出させた。

 この点でケインズより先に大恐慌脱出策を実施したと世界で高く評価されている。是清がすごかったのは、財政政策の着眼とともに金融政策を縦横に活用したリフレ(リフレーション=デフレから緩やかなインフレを目指す)政策を実施したという点だ。公債を日銀引き受けすれば、通貨量が増加し、デフレがすぐに直ることもよく知っていた

 しかも、市場経済をよく理解していて、当時「富国強兵」といわれていたが、是清はそのかわりに「富国裕民」という言葉を使っていた。

 是清の前任の大蔵大臣である井上準之助はデフレを助長する緊縮財政、金融引き締めを行い、好対照であった。現在の財務省と日銀が行っているのは、当時の準之助のような緊縮財政、金融引き締めと同じ系統だ。今求められるのは、是清のような政治家と政策だ。(嘉悦大教授、元内閣参事官・高橋洋一)

 次回から「2011『日本』の解き方」に改題します。


→歴史は繰り返す、一度目は悲劇として、二度目は喜劇として。

→世界大恐慌の中の緊縮財政と金解禁。なぜ、このパターンを日本のエスタブリッシュメント主流は繰り返すのか?

→戦前はまだ、奴隷同然の召使まで一度は落ちた人が、有能であれば総理にまでなれたんですね。そういう人だからこそ、生きた経済がわかっていて、エスタブリッシュメント主流の空気を突破できたのかもしれませんね。