自分は情報収集に抜かりがなく、優れた洞察力を持っていると考えている人は多いのではないでしょうか。残念ながら、そんな人でも、エセ科学やインチキ療法に騙されてしまうことがよくあります。そんなあなたに朗報。インチキ情報を本当の科学と区別するのは、驚くほど簡単なんです。産婦人科医のAmy Tuteur博士が、エセ科学を見抜く6つのポイントを紹介します。
インチキ療法というものは、見るべき場所さえ知っておけば、見破れるサインであふれています。

秘密の知識を主張する

誰かに「秘密の医学的知識を教えてあげる」と言われたら、すぐにその場を離れましょう。秘密の医学的知識なんてものは存在しないのです。数千もの医学ジャーナルが競い合っているこの時代、研究者は論文発表のプレッシャーと戦っています。そして、研究結果はインターネットであっという間に拡散し、誰でも検索できる状態になります。医学に関する情報で、秘密のものなど存在しえないのです。

「これは壮大な秘密プロジェクトなんだ」

現代医学において、人命救助につながる情報を専門医の間で隠すなどという秘密のプロジェクトは、かつてあった試しがありません。もちろん、民間企業が競合他社との差別化や自社製品の悪影響を否定するために情報を隠すことはありえますが、医療のあらゆる側面は、競合で満たされているので、大規模な秘密プロジェクトなど存在しようがないのです。医者、科学者、医療関係者を取り巻く壮大な秘密プロジェクトなど、ヤブ医者の心の中にしか存在しません。

心にもないお世辞

何かを売りつけたいヤブ医者はいつも、潜在顧客にお世辞を言いながら近づいてきます。平気で、「稀に見る賢さ」「洞察力がある」「用心深い」などの言葉を並べ立ててあなたを誘惑するのです。彼らは、自分の考えがなく大勢に流される人をカモだと思っています。でも、本当の医療従事者であれば、あなたにお世辞を使う必要はありません。彼らは、何が真実で何がそうでないかを知っていて、それがあなたにとって喜ばしい情報かどうかを問わず、あなたに教えてくれるはず。ヤブ医者がお世辞を使ってあなたを騙そうとしても、それを信じるも信じないもあなた次第なのです。

毒素という警告

以前、「毒素は現代の"悪い体液"である」という内容の記事を書いたことがあります。最近よく耳にする"毒素"という言葉は、中世で言うところの"悪い体液"と同じ文脈で用いられているのです。目に見えないけれど、そこら中にあふれている。そして、人々は常に、存在するかどうかもわからない脅威にされされているのです。"悪い体液"とは異なり、毒素そのものは悪いものと考えられていませんが、"悪い"会社や不健康な食べ物によって私たちの環境にばらまかれていることは自明でしょう。問題はただ1つ。「毒素」は、想像の産物であること。つまり、中世の"悪い体液"や"瘴気"と何ら変わりないのです。体内に有害な物質があるかもしれないという理由だけで、それらをたった1つの「毒素」としてひっくるめて、ジュース・クレンズのような方法で浄化できるはずがないのです。

実際、多くの病気に寄与している化学物質は存在します。ニコチン(タバコ)、アルコール(酵母)、アヘン剤(ケシ)などがそれに当たるのですが、人体が「毒素」などというものを生み出すことはありません。人体からの排泄物は、肝臓などの器官ですぐに代謝され、腎臓のように、排泄のために存在する器官によって排泄されるのです。

「華麗なる異端者」という情報源

ヤブ医者の多くは、その分野の訓練を受けていません。それが産科だろうと免疫学だろうと、そんなことは問題ではないのです。彼らにとって重要なのは、「華麗なる異端者」の意見。華麗なる異端者らは、優れた理論を呈するものの当初は受け入れられず、苦難の末最終的には新しい説として世間に認められ、科学の姿を変えたというのが彼らの主張です。このような主張は、科学に革命的なアイデアをもたらしたのは型破りな異端者たちの"思いつき"だったという考えに基づくものですが、これは真実に反します。科学における革命的なアイデアは、決して思い付きなどではなく、膨大な量のデータを収集した結果なのです。それを世間に伝えたり受け入れられるには、混乱を伴うことがあります。ガリレオは、地動説を"思いついた"のではありません。新しい望遠鏡を使って、かつて誰も集めたことのないデータを収集し、そのデータを説明する唯一の理論が地動説だっただけなのです。

難解な科学的理論を持ち出す

ヤブ医者は、自分でも理解していない難解な科学的理論を持ち出して、信奉者をけむに巻こうとします。例えば、量子力学やカオス理論などがその例。どちらも非常に難解な分野で、高度な数学的知識が要求されます。大学で専門として学ばない限り、それについて得意げに話す資格などありません。エピジェネティクスや微生物叢などの、まだ解明が進んでいない新しい分野でも同じことが言えます。どちらも未解明なことが多く、アカデミックなバックグラウンドを持たない人が専門家を自称していても、疑わざるをえません。これらの分野には最新の実用的な意義があるなどと主張するのは、危険極まりない行為です。放射線が発見された当初、放射線は老化や死を抑えるなどという誤解が蔓延し、水から化粧品まで、ありとあらゆる物に放射性化合物が添加されたことがありました。そのような過ちを、繰り返してはならないのです。

科学の世界には、こんな諺があります。「常識を覆す主張には、常識を覆す証拠が必要である」。ヤブ医者の主張はたいてい常識を覆すものですが、証拠を伴いません。彼らは、上記6つの危険信号の一部またはすべてを駆使して、あなたにインチキ商品を買わせようと企んでいます。これら危険信号を1つでも発見したら、目の前にある商品はエセ科学に基づくものであると確信して間違いないでしょう。

Six red flags you need to recognize to quack-proof yourself|The Skeptical OB

Dr. Amy Tuteur(原文/訳:堀込泰三)

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