昔の『こち亀』を読むと、大人になった今だからこそハッとする1コマがある。1ページ目でいきなり「さあて、プラモでもつくるか」って、勤務中なのに(笑)。

このノリが数十年も許されているのは、両さんの持つ人徳ゆえだろうか。

そんな人徳の持ち主に、ぜひとも道案内していただきたい。東京都葛飾区にある「亀有香取神社」では、7月1日より亀有周辺の案内板「両さんと歩く亀有マップ」を設置している。

このマップ、主に4つの要素で構成されている。
まず1つめは、町会の説明。亀有には30数点の町会が存在するのだが、その中の18町会を厳選し、紹介している。

2つめは、亀有に存在するお勧めポイントの案内。こち亀の銅像や神社・お寺、史跡などを地図上に示している。
3つめは、実際の風景写真と『こち亀』で描かれた亀有の風景を対比。両者を見比べて「同じように描いてるんだな」と、思わず感心させてくれる。
4つめは、亀有の今昔物語。同じ場所の時代ごとの風景写真を数点並べ、亀有の変遷を目で見ることができる。


このような案内板を製作したきっかけを、香取神社の宮司である唐松範夫さんに伺った。
「きっかけは2つあります。まず1つは、最近は学校で地元の歴史をあまり教えなくなったんですね。また、最近の亀有は人が増え、お子さんや若い女性の参拝も増えております。そこで、亀有のことをよく知れるような、楽しめるものを作りたかったんです」

「もう1つは、昨年のドラマの影響で亀有への観光客が増えているんですね。しかし、銅像等はあっても亀有の街へ導くものが今までなかったんです。
そして結局、皆さんは柴又に行ってしまうんですね。この案内板を見てもらうことで、亀有の街の方にも足を運んでいただきたいです。銅像とワンセットと思っていただければ幸いです」

そして、実際に案内板を見てみる。もう、スゴいのだ。何がスゴいって、両さんや中川や麗子たちの登場シーンが「これでもか!」と、ふんだんに使われていて。
それにしても、秋本先生(『こち亀』の作者)も、よくここまで協力したな……。

「秋本先生は亀有にお住まいで、今でもお正月やお祭りのとき、お忍びで神社にお越しになるんです」(唐松さん)
こういった繋がりで、今回は異例の協力体制を得ることができ、このような亀有マップが出来上がった。何しろ、案内板に使われている『こち亀』のイラストは計32点! 秋本先生が描き上げた生原稿をそのままスキャンしたものを、先生のご好意で提供してくれたという。

ちなみに、案内板は4メートルという特大サイズを誇る。そこに所狭しと描かれる両さんたちと、亀有の風景。
コレ、お時間のある人は是非訪れて生で見てみてほしい。『こち亀』の1シーンと亀有の風景写真が全く同じアングルで掲載されているから。
看板だったり、電柱だったり、何だったりが、全部一緒! 「ここを両さんたちも歩いていたんだな」と感慨深く、思わず実際に行ってみたくなる。案内板に使われているコマ数も豊富なため、ちょっとしたストーリーも把握できる。だから、ボードを見ているだけで楽しい。

『こち亀』を読んでいるとわかるが、プラモやラジコンにばかり精を出してると思いきや、イザという時は厄介な事件の解決を果たしてみせる両津勘吉。
この案内板も、“やる時はやる男”の本領発揮か。
(寺西ジャジューカ)