NEC、レノボ本体に2%出資 パソコン合弁発表
スマートフォン台頭に危機感 規模追求へ日中連合
NECと中国のレノボ・グループ(聯想集団)は27日、パソコン事業で提携すると正式発表した。6月をメドにレノボが51%、NECが49%を出資する合弁持ち株会社を設立。日本と中国のパソコン市場でシェア首位の両社が、開発から生産、部品調達を一体化して、競争力を高める。世界3位入りを狙うレノボと、経営体質の強化を急ぐNECとの思惑が一致した。
合弁会社はレノボ・NECホールディングス(資本金約830万円)で、本社機能は東京に置く。生産拠点の米沢事業場(山形県米沢市)を含むNECのパソコン事業と、レノボ日本法人の研究開発・販売部門などが傘下に入る。レノボは5年後に合弁の出資比率を引き上げる権利を持つ。
NECはパソコン事業を合弁に移す見返りに、レノボ本体が新規発行する約145億円相当の株式(出資比率で2%前後に相当)を受け取る。NECブランドは残し、利用者向けのサポート体制も続ける。
■新型端末が市場浸食
「我々は世界三大市場のうち、中国に続き日本でもリーダーになる」(レノボの楊元慶・最高経営責任者)
「世界4位企業と組むことで価格競争力を高められる」(NECの遠藤信博社長)
両社のトップは27日、都内で記者会見し、合弁の意義をこう強調した。
共通するのは激変するパソコン市場への危機感だ。スマートフォン(高機能携帯電話)の世界出荷台数は2011年にパソコンを抜く見通し。米アップルの「iPad」のようなタブレット端末も人気だ。低価格パソコンの「ネットブック」で急成長した台湾・宏碁(エイサー)は、10年10~12月期の世界出荷台数が前年同期比15%減少した。
レノボは05年に米IBMのパソコン事業を12億5000万ドルで買収。世界3位に躍り出たが、欧米市場ではブランド力が弱く07年には4位に後退。金融危機の影響もあり09年3月期には最終赤字に転落し、従業員の1割削減に追い込まれた。
その後、中国政府が農村で導入したパソコンの購入補助金制度を追い風に売上高を伸ばし、黒字を回復。世界で再び攻勢に出ようと海外メーカーの買収を探っていた。
■「選択と集中」の仕上げ
NECは収益力の強化が急務だった。27日に発表した10年10~12月期連結決算は265億円の最終赤字(前年同期は96億円の赤字)で、国内の電機・IT大手に比べ収益回復の遅れが際立つ。
1990年代初頭まで国内で50%超を誇っていたパソコンの国内シェアは、今や約18%。同事業の売上高は約2000億円だが、営業損益は「ここ数年トントンの状況」(小野隆男執行役員専務)。09年には海外市場から撤退した。
NECは10年に赤字続きの半導体事業をルネサステクノロジと統合。携帯電話機事業もカシオ計算機、日立製作所と統合した。パソコン合弁は「事業の選択」の仕上げとなる。今後は主力の通信機器事業のほか、ITサービスと、電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池などに経営資源を集中する。世界と渡り合える製品・サービスの育成が課題だ。