英語を習得するには、英語を喋る恋人をつくればいい。
ってよく言われるけど、英語圏の恋人をつくるのなんて夢のまた夢だよ!
とお嘆きの貴兄に。

夢が叶うよ!

「リアル対話で学ぶ実践英会話 SUMMER STORY」は、iPhone/iPod touch用英会話学習アプリ。
夏休み、寮に三人の留学生がやってくる。
しかも、全員かわいい女子さん。
案内役として、きみは夏休みの40日間毎日、三人の女の子と英語で交流していくのだ。

という夢の設定で英会話を学習するアプリが「SUMMER STORY」だ。

キュートな留学生は、元気いっぱいの活発少女リサ、おしとやかで花が大好きなアリソン、ツンデレでオタクな少女シャーロットの個性豊かな3人。

マップ上にいる女の子のうちひとりをタッチすると、英語の対話モードになる。
バストショットの女の子が、英語で話しかけてくる。
画面下のメッセージウインドに英語と日本語訳が親切に出てくるので、何を言われたのか、ちゃんとわかる。
その次に、自分が話すべき台詞が表示される。
シャーロットとの最初の対話はこんなふうだ。
Hi! Are you the exchange student from Australia?
やあ!キミがオーストラリアからの留学生かい?
スピーカーマークをタッチすると、英文を読み上げてくれる。
それにならって、自分で発音してみる。
うまく喋れなかったら、
What did you say?
今なんていった?
って聞き返されるので、もう一度。
うまく英文を発音できたら、女の子が応答してくれる。
You are?
キミは?
I'm your guide.
僕は、キミの案内役だよ。
なんていうふうに「聞く」と「話す」を対話形式で進めていく。
以上を繰り返していくのが、このアプリの骨格だ。


うーむ、このシンプルなシステムが実にうまく構築されている。
ぼく自身、「TOEIC TESTスーパーコーチ@DS」という英語学習ソフトのシステムデザインを担当したことがある。
そのときに痛感し、やりがいがあるなと思ったことは、ゲームと学習の融合のむずかしさだ。
というか、ひどいのがたくさんあるんだよー。
正解の単語に弾をあてるなんてのもあって。正解わかってるのに弾が当たらなくていらいらしたり、分かってないけどまぐれで当たったり。

学習要素とゲーム要素が、分離解体していて、相互に邪魔してる。
これ、絶対ゲームなんてろくに遊んでない人がゲームっぽくすればいいんでしょって感じで入れたな、って印象をうけるものがたくさんあった。

「SUMMER STORY」は、そのむずかしい融合を、コミュニケーションを軸にすることで、高レベルでクリアした。
語学の根源であるコミュニケーションを学習とゲームが支えるように構成されているのだ。
というかプレイしている間、学習している感じも、ゲームしている感じも、あまり受けない。
女の子たちと英語で対話していることを純粋にシミュレートしている感覚に満ちているのだ。

もちろん細やかなゲーミフィケーション(Gamification:ゲームをおもしろくするために使われるノウハウ)の工夫もあって、学習をあきさせないようになっている。

たとえば、対話を続けていくと好感度があがり5つのハートマークを埋めていく(目標設定)、発音の良さに応じてエフェクトが変化する(リアクション効果)、聞く喋るを交互に行う感覚の楽しさ(リズム/身体性)、自己紹介からはじまってじょじょに女の子と親しくなって悩みゴトをうちあけられたりする(ストーリー展開)、3往復ぐらいの対話を1セッションにしている(テンポ)、naitiveモードでやると難しいが2倍進行できる(レベル特典)、デートタイムや親睦会など条件によって発生するイベント(スペシャルボーナス)、40日という時間制限を設ける(タイムリミット)、などなど。
そういったゲーミフィケーションが、プレイヤーのモチベーションを保ち、あきさせない。

ぼくは、この3日間で、8時間もプレイして、それぞれ3人の留学生とのエンディングを見た。まだ3人が絡むイベントもあるようなので、もうしばらく遊べそうだ。英語学習アプリをこんなに集中して長時間プレイしたのは、はじめてのことだ。


学習サイドもでしゃばらない。復習テストや、学習達成度表示といったものが割り込んでこない。
そもそも対話で進んでいくので、重要単語順といった学習効率を最重要したタイプのものではない。

英語はコミュニケーションであり、コミュニケーションすることで英語は習得できるという理念にもとづいて構築されていることが伝わってくる作品だ。

教育的な頭でっかちから抜け出せなかった教育系ソフトにも、じょじょにゲームと学習の美しい融合をみせるものが現れはじめた。
この方向で、つぎつぎと素敵な学習アプリが登場することを望むし、ぼくも作っていきたい。(米光一成)