『火垂るの墓』に対する最も参考になる米Amazonレビュー

先のエントリで最近の火垂るの墓に対する米国Amazonのレビューを複数紹介したが、ついでに今までに最も参考になると評価されたレビューもまとめて紹介したい。米国Amazonにおけるあらゆる商品の中で最多(注:2009年現在では既に最多ではない)のレビュー数556を誇る『火垂るの墓』のレビューの中から、"Most Helpful First"でソートした結果の最上位のレビューである。

270 人中、258人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
アニメをあらゆるメディアの中でも最も悲しいカタチに昇華させた, 2004/1/11
By Ian Krupnick (Colorado Springs, Colorado United States)

通常、私は映画で泣くことはありません。私は一粒か二粒の涙を落とすことになるような映画が好きです。ところが『火垂るの墓』はそのようなレベルの映画ではありませんでした。それらの映画では私が悲しんだとしても、途中いくつかの悲劇が起こったとしてもラストシーンでは、悲劇に巻き込まれた人物は成長し、より良い生活を過ごすようになるとの希望を残してくれるのです。『火垂るの墓』は最後まで希望を残してくれませんでした。良くなる希望も可能性も全然ありません。これは最も無慈悲な人生です。良くなることが全然ない人生。この映画はあなたを感動させたりはせず、あなたの心を粉々に打ち砕くでしょう。

清太と節子(少年と彼の妹)は正義ではなく、彼らの口汚い小母は悪ではありません。この映画においては戦争の良い面も悪い面もどちらも問題ではありません。これは人々が、親切だったり、無関心だったり、まったく邪険に扱ったりすることをただ描いたストーリーです。清太は、多くの子供が清太と同じ状況に置かれたときにしがちな過ちを犯します。

この映画は15年前の作品ですが、その美しさはまだ失われていません。『火垂るの墓』が描くイメージは侘び寂びを感じさせます。ラストシーンは私の記憶に生涯焼き付き、一生忘れることは無いでしょう。心を揺さぶる、胸を締め付けるような結末はたいていの人々を打ちのめすことになるでしょう。

私は『火垂るの墓』が大好きです。私は『火垂るの墓』の戦争と人生に対する目を反らすことのない姿勢が好きです。少女が蛍に囲まれて遊ぶ様子の優雅な美しさが好きです。そしてラストシーンで私に押し寄せた感情の嵐が好きです。

なぜ蛍はあんなに儚いのでしょうか?



202 人中、191人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
強く心を揺さぶり、忘れがたいほどに詩的な反戦アニメ, 2003/2/6
By Lawrance M. Bernabo (The Zenith City, Duluth, Minnesota)

火垂るの墓』は私が今までに見た中で最も説得力のある反戦映画である。これはつまり、アニメ映画という観点では、これほどまでに心を揺さぶるような作品はほかに見あたらないと言うことだ。バンビの母親の死はトラウマになるほどのショックだが、この映画の終わりまでにあなたが打ちのめされることになる絶望や悲しみとは比べるべくもない。この映画はある駅で彼の死を示す若い少年の幽霊とともに始まる。その後我々は彼のストーリーを見るために蛍を追って過去へ進む。"Brain's Song"のオリジナルムービーの冒頭において我々は「すべての実話は死で終わる。これは実話である」と告げられる。その観点で言えばフィクションの『火垂るの墓』が実話であると認めることに何の問題もない。

第二次世界大戦末の数ヶ月、米軍の空襲爆撃機神戸港を破壊した。当時の神戸ではほとんどの建物は木造だった。清太(辰巳努/J. Robert Spencer)は14歳の少年で4歳の妹の節子(白石綾乃/Rhoda Chrosite)とともに生き残った。彼らは空襲で母親とはぐれ、母親を襲った死の運命を免れた。彼らの父親は海軍士官で帝国海軍に従軍しており、2人の子供たちは小母に預けられることになった。学校でも工場でも清太は何をして良いかわからなかった。そこで彼は妹の面倒を見ることにした。しかし、小母は常に清太を叱りつけ、米を得るために母親の着物を手放した後は、彼女はほんの少ししか分け前をよこさなかった。清太は節子を連れ、防空壕として掘られた洞窟にすむことを決める。しばらくの間、彼らの生活は素晴らしいものだったが、食べ物と交換するものがなくなって、食料が底を突いた。清太は生き残るため食料を盗まなければならなかったが、その一方で節子は飢餓からどんどん衰弱していった。

この映画は野坂昭如によって書かれた半自伝的な小説をベースにしており、野坂は小説『火垂るの墓』で日本の文学におけるピューリッツァー賞に当たる直木賞を受賞している。清太のように妹ともに空襲を生き残ったが、彼が面倒を見ていた妹を亡くしている。明らかにストーリーはある種の妹への贖罪から構成されており、野坂にとってはカタルシスを与えると言うよりは、懺悔のようなものだろう。脚本の高畑勲はこの悲劇を詩的な経験だけが描写可能なカタチに変え、実写のアクション映画では過去になしえなかった映画的な叙情を実現した(たとえば、蛍と、空襲の後の風に舞う灰との対比などの手法)。この映画には静謐さがあり、重要で短い瞬間を強調する意図を含んでおり、心を引き裂くようなストーリーが致命的な結末へと進む時に、それぞれのシーンを深く心に刻ませる。節子を演じる幼い少女の声は素晴らしいの一言に尽きる。私は白石綾乃の出演作には特に興味はないが、通常アニメで子供が描写されるのに比較して、極めて自然という点で素晴らしい。

火垂るの墓』は忘れることができない映画である。見た人の大半を号泣とはいかなくても泣かせることになるだろう。『火垂るの墓』を見ることは痛みを伴う経験だが、戦争の恐怖を描き、幼い子供たちに何が起こったかを示す映画は、そうした効果を持つものだ。『火垂るの墓』を2度見ると、より感情が揺さぶられることになる(あなたは節子の最後の言葉の意味を一度見ただけでは理解できないだろう。しかしもう一度見直すときにはそれがあなたに及ぼす影響に対して準備できる)。あなたは一生この映画を忘れることができないだろうし、この映画を幼い子供に見せるときには、とても、とても注意深くあるべきだ。なぜなら、この映画はアニメに対する見方を永遠に変えることになるからだ。これはあなたにも同様に当てはまる。



49 人中、48人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
戦争の他方の死傷者への洞察, 2000/9/4
By David J. Huber (New York, NY United States)

まず第一に、このレビューを読むのをやめて、この映画を見るべきです。見ればアニメーションがいかに美しく素晴らしくなりうるのか理解できます。この映画はビジュアル的に素晴らしく、魅力的です。

アニメーションを超えて、『火垂るの墓』は真に完璧に構成された脚本と言えます。この映画の主題は戦争と死ですが、特に戦争が無実の人々にどのような影響を与えるかが重要となります。これは、第二次世界大戦末期の日本における空襲の最中、食料が不十分で、親のいない子供たちが見捨てられて死ぬ物語です。

このストーリーは信じられないほど悲しいですが、聞いて見ることがとても重要です。見ている最中には泣かせたとしても、あなたの人生観を変えるパワーはないハリウッド映画のメインストリームとは異なり、この映画は本当に悲しいです。幼い子供たちが死にます。彼らは病気と飢餓によりとても無惨に死にます。全体の過程はよく描かれており、あなたは自分が飢え、病気になったように感じるでしょう。アニメーションの演出は効果を増大させます。

ラストにおいてすべてがうまくいくわけではなく、恐ろしく打ちのめすような結末になる映画を見ることは良いことです。なぜなら、しばしば人生は全く最低でフェアではなく、自身にとっては当てはまらなくても、多くの他の人々にとっては当てはまるものだからです。すべてが最終的にうまくいくわけではないことを覚えておくことは良いことです。映画においてこのことをリアルに示すことは何も悪くありません。私はこの映画を子供に見せようとするでしょうか? 答えはYesです。小さい子供たちはとても強くこのメッセージを受け取るでしょう。もし私たちが小さい子供たちに戦争の馬鹿げた本質を若い年代の内に見せることができたなら、無関係な哲学的、人種的、遺伝的、地理的、その他諸々の取るに足らないことのために互いに殺し合うことに必要性を感じない世代が生まれるかもしれません。

映画を見た後、私の頭の中は真っ白になってしまいました。これはこの映画が本当に素晴らしいということを物語っています。しかし、どうしようもない悲しさに打ちひしがれることを覚悟すべきです。私はこの映画を冬に見ました。そして5ヶ月後の夏、私はその年初めての蛍を見て、突然襲ってきた悲しみに涙が止まりませんでした。これはこの映画がいかに強力かを示していると思います。

私はこの映画を少年・少女への教育において使いたいと思います。おそらく何年もの間。この話を読み解くことは大変価値があることだと思います。この映画は真のアートワークで、アートワークができると考えられることをすべてやっています。これはあなたを変える力を持っており、ストーリーを忘れさせない力を持っています。すべてにおいてエクセレントです。

最後に注意点。完全な映画を見るためにレターボックスがつけられたバージョンを入手すべきです(なぜレターボックスなしで映画がリリースされるのでしょう? 絶対変です)。そして、日本語で字幕のついたコピーを入手します(さもなければ、もちろん、あなたは日本語をしゃべれなければなりません)。あなたは、オリジナルの日本語、そしてオリジナルの声優の演技を絶対に、絶対に聞かなくてはなりません。素晴らしい映画です。10億個の★を。



40 人中、40人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
あらゆる映画の中で最もパワフルなアニメ, 2006/8/14
By Ernest Jagger (Culver City, California)

私はこのアニメを数年前に見た。私は、この映画を所有しており、全員に強く勧めたい。このアニメには多くの素晴らしいレビューがあるので、私は多くのレビュアーによって雄弁に物語られている点については繰り返さない。このアニメは非常にパワフルである。このアニメを見るまで、このアニメほど私の魂を揺さぶったアニメは無く、今でもそれは続いている。罪のない人々に犠牲を強いる戦争の愚かさは、人類において真に普遍的で悲劇的な状況である。このアニメは永遠に見続けられることになるだろう。この映画は多くの映画が描くのに失敗したことをやってのけた。人類の起こした行動による結果と、敵もまた人間であり苦しんでいることを描いた。私は今まで数多くの空襲に関する文書を読んできた。日本、中国、ビルマ、東ヨーロッパ、ドイツ、ベトナムカンボジア、実際すべての空襲記録を、若い頃から、特に私が米国空軍にいたときに読んできた。私はいつもこうした空襲を受ける側のことを考えてきた。爆弾はそれがもたらす大虐殺において、対象を見分けることができない。私はこのアニメのすべてが好きだ。なぜならハッピーエンドという逃避が無く、見た者に戦争の本質─大虐殺と死─を伝えるからだ。この映画は空前絶後反戦映画として評価されるものだ。5つ★+無限。

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追記

はてな匿名ダイアリー『火垂るの墓』に対する米Amazonレビュー 低評価版がアップされているので、興味のある人は参照してほしい。実は"Most Helpful First"でソートして結構上位に来るレビューの中にも低い評価なものもあるのだが、なぜか映画の感想ではなく、日本の戦争責任がどうとかいう内容で的外れな感じが否めなかった(だから訳さなかったわけではなく、そこまでたどり着かなかった。どれもこれも長文なんだから)。一方、訳出されたレビューは映画の感想として妥当なものだと思う。確かに清太の行動に対してフラストレーションを募らせた人は多いだろうし、それが低評価に繋がったのだろう。とにかく米国Amazonには膨大な数のレビューが集まっているので、是非一度チェックしてほしい。日本のAmazonのレビューもこれぐらい活性化すると面白いのだろうけれど。

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