My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

GDP世界一の都市・東京

2011-02-09 12:58:03 | 4. マクロ経済学

先日、日経産業新聞を読んでいたとき、一面に出ていた世界の都市GDPランキングが目に飛び込んできた。
PWCCが出している試算らしいが、以下のとおり。(リンク先に30位までのランキングがある)

なんと、東京が2008年の試算で、さらには2025年の予測でも世界で一位になってる。
2位がニューヨーク。

国別のGDPでは、去年くらいから中国に抜かれて3位に転落。
さらに先々週は、日本国債も格下げされて、あのスペインより下になっちゃったし。
「あー、もう世界の経済ランキング系では日本はダメだね~。
 こうなったら目指すはナンバーワンよりオンリーワン?(←古い)」
なんて気持ちになっていたが、こんなところに1位が残っていたか!という感慨。

それにしても、次なる疑問は
「何で国別GDPでは米国、中国に次いで世界3位なのに、都市別では東京が1位なの?」
ということじゃないだろうか?

1. 世界に誇る広大な関東平野にMegacity、東京

ここで1位になっている「Tokyo」とは、いわゆる行政区分の「東京都」のことではない。
東京都を中心とする関東平野全体の経済圏「東京圏」(神奈川、埼玉、千葉を含む)を指す。

都市の周りには、ベッドタウンや工場、オフィス郡が存在する。
実際、東京で働いて給与をもらっている多くの人は、実際には千葉や埼玉に住んでいたり、
郊外のベッドタウンに住む人が、買い物などの経済活動を都内や横浜などでするだろう。
このように、郊外の地区を都心の経済活動と切り離すことが出来ないため、まとめて大きな都市の概念として考えるのだ。
こういう大きな都市の概念を、英語でMegacity、もしくはMegalopolisなどと呼ぶ。

東京圏のMegacityは、昔から非常に面積が広く、人口が大きいことで知られる。
一般的にアジア地域のMegacityは欧米より大きいが、その中でも特に関東平野は、
世界のどの都市を擁する平野より圧倒的に広く、どこまでも「街」が切れない。
新幹線で行っても2時間以上「街並み」が切れないのは世界でも関東平野くらいだろう。
こちらのWikipediaのMegacityランキングを見れば明らかなように、東京圏はどの都市よりも圧倒的に多い、3400万人もの人口を擁している。
(二位は中国の広州地域で、2500万人)

つまり、この広い関東平野は日本の人口の約4分の1もの人口を有し、
加えて、そうは言ってもまだまだ強い日本の経済力に支えられ、東京圏のGDPを世界1位に押し上げているわけである。

2. 稀に見る、首都一極集中構造

そうは言っても、国別GDP1位2位の米国や中国に比べると、圧倒的に東京が国のGDPに占める比率は高いんじゃないか?
ということで、国別に最大の経済都市が国のGDPのどれだけを占めるのかを計算してみた。

米国は、GDPランキングに複数都市がランクインしているのを見れば分かるように、
経済発展がいろんな都市に分散。複数の経済中心がある状況だ。
中国も、まだ発展途上だけど、米国と似た分散構造で発達しそうである。

一方、日本は明らかに東京に一極集中の構造だ。
比較的、首都以外の都市が小さいイギリス(GDP5位)、フランス(GDP6位)と比較しても、その集中度は高い。

今後、日本全国の人口は減っていく中、東京圏の人口は増えると予想されている。
東京への富の一極集中は今後ますます極端になるだろう。

3. 世界でも住みやすい都市、東京

MONOCLEというイギリスの住宅雑誌で、毎年「住みやすい都市世界ランキング25」が行われている。
東京は、2008年まではランク外だったが、2009年にはミュンヘン、コペンハーゲンに次いで3位2010年には4位にランクインしている。
(ちなみに他には福岡と京都が25位以内にランクイン)

ヨーロッパ人だけではない。
アメリカでも西海岸のグルメなベンチャー金持ちの楽しみは、週末に「東京グルメ」を楽しむこと、なんて記事を以前Wall Street Journalで読んだこともある。
西海岸からなら、飛行機で10時間くらいで東京着きますからね。

東京は、物価が高い、英語が必ずしも通じない、など外国人にとっては難点もあるが、
広い公園・庭園も多く、緑も豊か、歴史的事物に加え美術・音楽など文化的にも奥が深い、
結構安全、提供される食事のバラエティと質などが海外で評価される理由だ。

4. こうなったら東京中心に高機能移民を呼び寄せ、巨大グローバル特区になれば?

極論かもしれなですが、この「住みやすい都市」であることを活用して、海外から東京に大量に「高機能移民」を呼び寄せたらどうでしょうね?

「高機能移民」というのは、単なる単純労働移民ではなく、
高い職能や学歴などを持ち、高い一人当たりGDPを生み出せる移民を指す。
(私の造語のつもりだったけど、最近良く使う人を見るから、そうでもないのかも。)
インドからのシステムエンジニア移民、フィリピンからの看護士移民、アングロサクソンのバンカー移民、留学して日本の一流メーカーに就職した中国人留学生などなどを指す。

以前の記事「不景気だからこその移民政策のススメ-My Life After MIT Sloan (2010/7/26)」で書いたように、
例えばシリコンバレーの起業家社会を推進しているのは、移民一世である。
なんと起業家の52%が移民一世であるという統計がある。

少子化で労働人口が減少する日本のGDPを保持したいなら、
起業などで経済を活性化させ、旺盛な消費欲で内需を回復させることができる、高機能移民の積極受け入れしか解は無いというのが私の昔からの持論。

で、東京が「住みやすい都市」であることを活用、加えて学歴や職能が高ければVISA申請簡単、税金も優遇、など高機能移民が更に住みやすい仕組みとし、巨大シンガポール的国際都市を目指したらいいんじゃないか。

もっとも高機能移民を呼び寄せるには、「住みやすい」だけでなく「働きやすい」ことが重要だ。
残念ながら、日本の多くの企業は、文書も話す言葉も日本語、
ビジネスで外国人とやりあうことに慣れていない人が多い、
結果として偉くなるのは日本人ばかり、という「働きやすい」環境とは言いがたい。
これは、日本企業が組織的にグローバル化したいなら、いずれ超えざるを得ない壁だ。

5. 東京一極集中で、世界一の便利な巨大都市を目指し、東京で日本の経済成長を牽引する解はあるか?

更に、この際東京圏のGDP比率が日本の5割を越えてもかまわないので、どうせなら効率よく東京一箇所に投資を集中させ、成長させて、
日本の経済全体を牽引させたらどうか、とか書いたら炎上しそうだなぁ・・・。

イメージとしては、東京圏は今より人口が増え、人種バックグラウンドも多様化している。
羽田のアジアハブ化や高速道路の利便性などに加え、全地域WiFiや電気自動車の充電設備など、「スマートシティ」な都市インフラが今より整備され、世界一便利な都市になっている。
また、保育園や移民のサポート施設など人々が安心して働くための社会インフラ、起業家を支える仕組みなどが今よりも整備され、世界で最も経済活動を行いやすい都市になっている。

その結果、アジア地域はもちろん、世界中の経済活動の中心が東京圏に移行している、という夢。
そのためにはそれなりの投資が必要なので、もう東京圏に一極集中で投資してしまえばいいんじゃないか、という論理である。

実際、日本の今後の経済成長を考えたとき、
アメリカみたいに(あるいは中国が今後そうなっていくと思われるように)複数の都市に経済中心が分散し、それぞれが異なる性質(NYが金融中心、Chicagoの製造業中心など)を持ち、
互いに連携して成長する、というモデルを日本が敷衍する感じが個人的には余りしないのである。

単純に「第二の東京」「第三の東京」が生まれるだけなら、
極論ではあるが東京一箇所に集中投資をして、世界一の都市を目指せばいいのでは、ということ。

というようなことを、世界都市GDPランキングを見ながら妄想していたのでした・・・。
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38 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
賛成! (千葉市民)
2011-02-09 13:31:46
バラマキ政策が失敗した以上、選択と集中あるのみ。生き残り戦略なくして日常生活なし。さらに、内田樹氏の指摘にあったように、「地方」からの賛同があれば、現実味があるのでは。

いかにして「地方」をなくすかは、ITインフラ+交通費ではないでしょうか。
Unknown (NS)
2011-02-09 14:08:48
東京が都市国家みたいになって半独立してしまうのもありかもしれませんね~。ちょっと面白い未来。グラフでは出ていませんが、韓国のソウルはもっとGDP集中してそう。
日本人と交換で (ITBoy)
2011-02-09 14:25:39
はじめまして、いつもブログ拝見させていただいております。

4番目の高機能移民についてですが、どうせなら移民とあわせて、日本人も海外へ行くような仕組みにしてもいいと思うのですがいかがでしょうか?(単純に留学程度でもいいと思います)

日本人は東京が「住みやすい都市」である事に慣れてしまっているため、ハングリー精神を失っている状況があると思います。

であるならば、留学したい人を募集して海外へ行き様々な国で学んだり刺激を受けてくる、海外への人脈も作ることができ、グローバルな人材を育てることができる。

そういう仕組みにしたほうが将来の日本の為になるのではないかな?と思いました。
まず自分達が移民になろう (まーくん)
2011-02-09 16:15:10
直感的にですが、大都市であることと起業家のエコシステムが栄えることは同義ではないと思います。シリコンバレーもこの順位に入ってませんしね。

起業家社会というエコシステムは、ビジネスの投資側(VC,Angel)、買い手側(会社、市場)、育てる側(大学、インキュベーター)、そして起業家が絡み、ビジネスの規模に合わせた分かりやすい成功事例やExit手段が確立されていることで初めてsustainableになると思います。

過去も現在も日本企業は外にでて勝負をしているわけで、グローバルスタンダードになれきれない過去の失敗が内需に頼りすぎなマーケティングが原因だと言うならば、移民に頼るのではなく自らが外にでてビジネス開発と技術開発をすれば良いと私は考えます。

以前もどなたかが意見されてたと思いますが、経済的側面のみで移民を語るのは違和感があるし、絵に描いた餅だなと思います。
東京の世界的な立ち位置について (gshibayama)
2011-02-09 16:40:15
どうも。世界都市圏のGDPのPWCレポートの詳細はこちらです。http://bit.ly/alt0Rr

このレポートの最初に記載されているけど、この所メガシティ議論が最近盛り上がってるのって、現在世界人口の70億人のなかで都市人口は50%だが、2030年には70億人に増え、都市人口は7割近くまで上がるという背景があります。欧米のオピニオン誌でも、この手の大特集がくまれてます(IBMやPhillipsがSmart Growthで鼻息荒くなるのもこれが理由)。

- メガシティの台頭に関するCSM誌の長尺記事 http://bit.ly/boSze2 世界の人口の70億から90億人の増加の背景は、都市部人口比率増加。1950年29%から2040年には64.7%に増加予測。メガ都市圏も2から30。水・下水システム、鉄道、緑地の確保が鍵。

- 世界の人口は70億人 NG誌巻頭記事 http://bit.ly/g1pLo5 25年には80億人、50年に90億人。いわゆる都市に住んで、肉を食べて、自家用車を持つ中産階級の人口も08年15億人から40年40億人に増加。コモディティや食料価格高騰の背景

- Foreign Policy The Global Cities Issue http://bit.ly/i1CUZS

というわけで、東京は人口3000万以上の現時点で唯一の都市で、衛生状態、公共交通等ダントツなので、2030年に3000万以上都市になるジャカルタ、マニラ、デリー、ムンバイなどに色々教えれる事があると思います。また、この爆発的な都市化は日本にとって巨大なビジネスチャンスだとおもうんですけど、イマイチ盛り上がってないですね。なんとかしてください。

世界の都市圏、2030年人口予測 http://bit.ly/a9xWjh

僕も、都市圏GDPについて分析記事かいているので参考にどうぞ。

世界の都市圏GDPランキング http://bit.ly/bEjWIi

2025年、世界都市圏GDP予測 http://bit.ly/b8vBdO

Lilicさんが恐れているように、批判を恐れずに言うと、日本はもう体力ないから、国の予算の9割は7大都市圏(GDPの7割以上?)に配分する方向でいかないと、全般的な地盤沈下は止められないと思う。

実際日本の都市化比率は現在62%で、 米82%、韓83%、英80%などに比べてもかなり遅れていいます。言い換えれば都市の人口はもっと伸びる余地がある。

http://bit.ly/huETV3

これからは、世界から日本から優秀な人材を惹きつけるメガシティでないと国際競争にも遅れますよね。

日本でも識者の都市回帰論が増加してますよね。RT @kazu_fujisawa うさぎ小屋2.0 http://bit.ly/daJrQk、@ikedanob 地方から都市の時代 http://bit.ly/c0ZVEj

当面の敵は、NYとLondonでしょう。下記のグローバル都市ランキングレポートを見ても東京はNY、Londonに次ぐ3番手のポジションが確定しちゃってますからね。

- Global Power City Index 2009 http://bit.ly/9WfymW
- A.T. Kearney Global Cities Index
http://bit.ly/fuXFGb
- PwC Citie of Opportunities http://bit.ly/9aikTQ

最後に、青木理音さんの下記のブログ書き込みも参考になると思います。東京に資源集中というと、かなり感情的な理論になりますね。

経済学101 – 日本の強みは東京にある http://bit.ly/cqUNkO

長文失礼しました!
賛同します (mtrock)
2011-02-09 17:22:53
はじめまして。
記事、拝見させていただきました。

ちょうど、卒論で集積の経済の実証分析を行う予定なので参考になりました。
最近では、地方活性化ではなく一極集中型が良いとする議論も増えてきましたよね。
そのほうが、経済的にも環境的にも良いのではないかと思います。

単純な都市化の経済と地域特化の経済のどちらが影響が大きいかは難しいところですよね。
自分が卒論プロポーザルで試しに重回帰をかけた時は、地域特化の経済のほうが効果ありと出ました。

また、面白い記事を期待しています。
近郊に外資特区を (satorukaji)
2011-02-09 17:28:15
東京都内の大規模な再開発はかなり困難で、環境をドラスッティックに変えようと思ってもすぐには変えれないでしょうから、東京近郊の土地があまり有効活用されてない地区、例えば幕張あたりに巨大な外資特区を設けたらどうでしょうか?
近くにはディズニーランドという世界でも屈指のレジャー施設がありますし、大きなイベントを行うことができる幕張メッセもあります。さらに、アクアラインの千葉側にカジノとか作ったりしたら非常に魅力的だと思いますけどね。
Unknown (Unknown)
2011-02-09 20:06:41
東京を英語化したら、それまで日本を支えてきた日本語しか話せない優秀な人材が逃げてしまいます。。。
なぜ東京に限るの? (itoishi)
2011-02-09 22:52:37
全般的には賛成です。しかし、話を東京に限定した意図が掴めません。

東京一極集中の根拠となっているのは「そのためにはそれなりの投資が必要なので、もう東京圏に一極集中で投資してしまえばいいんじゃないか」ですが、これから必要なインフラというと・・・移動体通信網ぐらい?

道路だの保育園だのは、むしろ、他の政令地方都市クラスで実施した方が、トータルコストは安くつく気が。。。きちんと検討してませんが。

また、現状の参入障壁としては、ハード的なインフラよりもソフト的なインフラ(雇用慣習、異文化共生に乏しい文化、等々)の方が、ずっと大きいかと。
(これらは何も東京に限った話ではなく、日本全国的に展開できる話)

東京に限定した方がキャッチーだから?
意見② (ado)
2011-02-09 23:51:36

とここまで書いて思ったのですが、今だって、東京は一極集中化してますよね…。その傾向をさらに推し進めるということですか?

そうであれば、この案を推し進めるというのは誰なのかの方が気になります。民間ならば、ここにいる皆さんがおやりになるべきだと思いますし、東京都等が、自身の地方をより住みやすい場所にするのは当然です。

国が出てくるというならば、ちょっとよくわからない話になってくる気がするんですが…よくわからなくなっているのは私の頭だけですかね。

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