「子供の貧困対策大綱」を閣議決定 親世代の学び直し推進
政府は29日、経済的に厳しい家庭の子供を支援するために必要な施策をまとめた「子供の貧困対策大綱」を閣議決定した。「貧困の世代間連鎖を断ち切る」という基本方針を掲げ、親世代の学び直しなどを進める方針。貧困に直面する子供は6人に1人いるとされ、現場からは「学びの機会」を得るための環境づくりを求める声があがる。
「子供の貧困率」は、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子供の割合を示す。厚生労働省が3年に1回実施する国民生活基礎調査によると、2012年時点で16.3%(前回比0.6ポイント増)。大綱を受け、各都道府県は貧困対策計画をまとめる努力義務が課せられる。
大綱では「子供の将来が生まれ育った環境で左右されることのないよう貧困対策は極めて重要」と強調し、保護者に対する学び直しやひとり親家庭に対する支援、奨学金の拡充など計約40項目を重点政策として示した。文部科学省や厚生労働省は15年度予算で貧困対策事業の拡充を要求する方針。
今後、子供の貧困問題が改善されたかどうかは、貧困率や大学進学率など25の指標を使って検証するとした。一方、各指標の具体的な数値目標については「さらに検討が必要」(内閣府)として大綱では明示しなかった。
大綱は昨年、超党派の議員立法として昨年6月に成立した「子どもの貧困対策推進法」に基づいてまとめられた。法律は大綱の策定を義務付けており、有識者の提言を踏まえ、内閣府や文科省、厚労省が具体的な施策を検討していた。
国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩部長は「貧困率の高いひとり親世帯には重点的な支援が必要。子供の貧困は将来の貴重な労働力の損失にもつながる。社会全体で改善に取り組むべき問題だ」と話す。