2人はギタリスト〜唯と梓の、もしくはギー太とむったんのアンサンブル〜

 ここ最近けいおん!関係のエントリを書いては消し書いては消しとして、心の整理がいまだについていないらしいraydiveでございます。なんとなく放課後ティータイムIIを聴けば落ち着くような気もする。


TVアニメ「けいおん! ! 」劇中歌集 放課後ティータイム II(初回限定盤)

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 それはさておきまして、今回の本題。
 はてブをがさごそと巡っておりますと、以下のエントリに辿り着きましてね。


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2年生編で「唯は別にギタリストとしての成長を目指してもいなければ、(原作だと)そんなすごくもなんともない。あずにゃんの方が天才」という事で概ね決着をつけてたんですね。

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 エントリ自体は原作とアニメの違いを浮き彫りにしてて(多少突っ込みたいところはあるにしろ)良いエントリだと思うのですが、引用箇所が実に違和感を感じてしまいます。何がってあずにゃんの方が天才」ってところ。
 言葉のとらえ方の問題かもしれませんが、「天才」であるのと「楽器がうまい」ことには、何も関係ありません。無論テクニック的な強さという点では、間違いなく梓のほうに軍配が上がりますが。


 実はこの箇所についてははてブの方でid:sasahira氏が的確にコメントされていました。


あずにゃんの方が天才」これは違う!二人は「正反対のスタイルのギタリスト」。お互いにないものを補完する関係として設定されているのは二人のギター選択で明らか。

はてなブックマーク - とある神尾の雑文目録(チェキ空ブログ) / けいおん!(原作)を後世に語り継ぐ〜その3:「唯への美化」を乗り越えるあずにゃん


 まあ、このコメントで全てを言い表しているので何も書かずともいいのかもしれませんが、以下蛇足的に2人の持つギターから見えてくることをつらつらと書いてみましょう。

ギターの選択から見えてくるもの

[rakuten:ishibashi-ochanomizu:10009307:detail]
[rakuten:ishibashi-shibuya:10021518:detail]


 いわずとしれたレスポール(原作はハニーバースト、アニメはチェリーバーストの色)とムスタング(マッチングヘッドのキャンディアップルレッド )。2人の選択理由というと、唯は「かわいいから」とレスポールに一目惚れ、梓は「手が小さいから」ムスタングを選択しています。唯は購入時初心者で何も分からず、適当に気にいったからだと思われますが、梓は明らかにプレイアビリティを気にして選択しています。原作でもアニメの描写でも、この2人のギタリストの対比として、

  • 唯:感覚で弾く人
  • 梓:技術面を磨いた人

として、異なるタイプのギタリストとして描写されていくことになります。


 それが一番出ていると自分が思うのはチューニングをするときの2人の差異。唯は(絶対音感の持ち主であるにしても)ざっくりとチューニングして合わせて、梓はチューナーを使って音を合わせる。アニメにも原作にも描写されていましたが、このあたりのかき分けがきちんと出来ているのが、原作者からして楽器弾きなんだなということを伺わせます。*1
 ついでに梓がムスタングを選んだという点からさらに面白いことが分かります。自身がムスタングを触ったことがないので、Wikipediaのフェンダー・ムスタングの項を参照しますと、取り扱いが結構難しいと書かれています。

ムスタングは他のフェンダー製ギターに比べて仕様が独特なため、サウンドも個性的である。主な特徴としては、1. ショートスケールであるためにサステインが短い、2. 搭載されているシングルコイルは低音はややチープである、3. アームは使うたびにチューニングが狂う、などである。これらは難点ともいえるが、一方で長所や個性として捉えると、1については歯切れの良いサウンド、2については低音が薄いために音の抜けは良い、3については軽く触れるだけでアーミングが可能(小指が当たるだけで動くほど軽い)、と考えることもできる。

フェンダー・ムスタング - Wikipedia


 体が小さいから、なおかつ「暴れ馬」を押さえられるぐらいのテクニックが梓にはあるからムスタングを選択したんですよってことですな。


 唯のほうはというと、先ほども述べましたがチューニングの話やミュートを知らないけど出来ている話、などどれも「感覚的にやっちゃえる」ギタリストと描写されます。女子にはその重さで弾きにくいであろうレスポールで弾きこなし、梓に「すごいのかすごくないのかよく分からない人」と評価される……新歓ライブで「演奏に、感動してしまった」わけですから、梓にはギタリストとして感じるものがあったのでしょう。それは梓にはない部分であり、唯が持っているものだということです。

余談

 ちょっと話はずれますが。
 梓が軽音部に入部後、唯が梓にギターを教えてもらっている箇所がいくつも出てきます。そして、野外フェスで遠くから聞こえる音楽に耳を傾けたり*2、「得意なのは音楽」*3と言ってギターを弾き出したり、梓のギターに勉強中にもかかわらずリズムを取り出したり*4します。
 よくよく(良いか悪いかは置いておいて)成長が描かれないといわれる「けいおん!」ですが、これってコードをど忘れしちゃっていたころから明確に成長しているんじゃないですかねぇ、と思うのですがどうなんですかね。

長くなりそうなのでこの辺で締め

 原作からこうやっていろいろと考察していくと、その原作の細やかさがなかなか面白い。で、これを受け継いでさらに深く追求したのがアニメ版でしょう。アニメではさらに推し進められて、2人のプレイスタイルの違いを、明確に「音」で表しています。
 

 その辺の話はまたおいおい。

*1:ちなみに原作3巻68ページで「湿気でオクターブチューニングがずれる」と梓が話しているところで、唯が「確かめてみよう」と返すのを見ると、原作2巻の53ページで「チューナーって何?」状態から成長しているんだなぁと感じますね。

*2:3巻93ページ

*3:4巻64ページ

*4:4巻40ページ