「炎上マーケティング狙っていない」--studygiftに集まる賛同と批判の声

岩本有平 (編集部)2012年05月23日 19時26分

 paperboy&co.の創業者であり、カフェ経営やクラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」などを手がける家入一真氏。そんな家入氏が中心となって立ち上げたプロジェクト「liverty」がある。

 「イメージ的にはTwitterでフォローしあったり、Facebookで友人関係になったり、そんな感じでチームを作っていければいい。職業も立場もバラバラ、1つの企画をモチベーション高くやっていく」――家入氏がこう語るように、livertyでは経営者からサラリーマン、フリーランサー、学生ら約20人が集まり、自分たちの手がけたいサービスを企画し、素早いスピードでリリースしていく。


liverty代表の家入一真氏

 サービスで得た利益やノウハウをメンバー間で分配することで、時間や場所、社会的な立場に縛られない新しい働き方、生き方を模索していくという。プロジェクトで得たノウハウなどは、最終的にドキュメント化して共有し、地方などにも広げていくことも目標としている。

 すでにサイト上には、公開前のものも含めて数多くのサービスが並んでおり、5月、6月にも逐次サービスが公開されていく予定だ。

炎上したstudygift

 そんなlivertyから5月17日に立ち上がったサービス「studygift」について、ソーシャルメディアを中心にさまざまな議論が巻き起こり、炎上の様相を呈した。

 studygiftは、「学費が払えず学校に通えない」「学生のうちに挑戦したい事がある」といった学生に対して、プレゼンテーションの場と、サポーター(支援者)からの支援を受ける場を提供するクラウドファンディング型のプラットフォームだ。サポーターは支援した金額によって、学生が提案するリターンを得ることができる。法人向けの「特別サポーター」の枠も用意する。目標金額の75%までをサポーターから集め、残り25%を自力で集めることをルールとしている。

 第1号の案件として登場したのは、Google+で投稿をチェックしているユーザー数日本一となったことでも話題を集めた坂口綾優さん。彼女は、早稲田大学社会科学部の3年生だったが、これまで受けていた2つの奨学金が受けられなくなったため中退しており、復学のための資金を同プラットフォームで集めることとなった。5000円の支援をすると、週1回程度彼女がメールマガジンを配信し、9月と3月の成績発表に合わせて活動報告を行う。また10万円を支援する企業スポンサーに対しては、個別にPR支援などを行う。

 サービス開始から50数時間で170名弱のサポーター、20件以上の企業サポーターがつき、目標としていた87万1566円を集めることに成功した。その後もサポーターは増え、5月23日14時時点でのサポーターは195人、集めた金額は97万5000円となっている。

 しかしその一方で、システム面での不備やシステムの不明瞭さ、坂口さんを前面に押し出したサイトプロモーション、坂口さんが奨学金を受けられなくなった理由についての説明不足などで、ソーシャルメディアでは応援の声以上に批判の声が上がり、各種ブログでもさまざま見解が出された。

炎上マーケティングをするつもりはなかった

 もともとstudygiftは、livertyのメンバーであり、ブロガーのヨシナガ氏が持ち込んだ企画。同氏は坂口さんの大学の先輩であり、Google+への投稿を薦めた人物だという。


ヨシナガ氏

 「坂口さんから学費を払えなくて卒業できないということを聞いた。今までの時代ならフリーターになり働き口を探すような生き方が考えられるが、クラウドファンディングが出てきて、ネットでなら学費を集められるのではないかと思った」(ヨシナガ氏)

 そこで当初は家入氏の手がけるCAMPFIREの案件として持ち込んだが、CAMPFIREでは「個人の学費や生活費といったもののファンディングはしない」というポリシーがあったため取り扱えなかった。その後家入氏やヨシナガ氏がブログやTwitterでstudygiftのようなプラットフォームの必要性を尋ねたところ、賛成する声が多かったため、サービスの立ち上げに向かった。「実際困っている学生が居ることも分かった。これは可能性があると思った」(ヨシナガ氏)

 「彼女をプロデュースした、広告塔にしたと言われるがそうではない。彼女の(奨学金についての)話ありきで、救いたいと思って作った」(家入氏)。「1人のためのサイトではなく、可能性のある万人が頼れるプラットフォームにしようというのがもともとの考え」(ヨシナガ氏)

 だが、運営側の落ち度もあった。ヨシナガ氏が「(開発は)実質作業は2日3日くらい」と説明するとおり、スピードを重視するあまり、「支援」と表現すべきところが「寄付」となっていたり(個人間送金での寄付は資金決済法上認められない)、坂口さんの状況についても、当初は「大学を中退になりそうな状態」と表記していたが、実際は学費未納で退学となっていたりした(ただし、早稲田大学では学費が払えず退学となった場合も、教授会の審議で認められれば再入学可能)。

 文言の修正や支援を希望する学生のための募集フォームを設置するなど、早急な対応を行ったが、それが逆に「以前と内容が変わっている」と問題視された。また、家入氏自身もTwitterで感情的なツイートを行うなどして、批判的な人々に対して“燃料”を投下する形になった。

 家入氏はこのような状況について、説明が足りなかったと振り返る。「なぜ坂口さんがお金を必要としているか、そしてプラットフォームとしての立ち位置について説明が不足していたと思う。やることも多すぎて、まず何をやるかでも混乱した。だが『炎上マーケティングを狙った』『彼女をプロデュースしようとしている』と言われるとカチンと来てTwitterで感情的な発言をしてしまった」(家入氏)。

 同様にヨシナガ氏も、「意図的に奨学金や彼女の状況について隠していたわけではなく、情報収集が不足していた。炎上マーケティングは狙っていない。坂口さんの立ち位置についても、支援を受ける側であるにもかかわらず、システム面にまで言及していたところも問題だった。だが困った学生を支援したいという思いはストレートなものだ」と話す。

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