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相変わらず原発の話です。まずは 3/25 以降どうなってるでしょう?的なとこ ろから。
1週間前から良くなったことがあるとすれば、時間がたったので燃料からの発 熱がちょっと減った、ということくらいで、良くなった方向の話は 特にありません。まあ、致命的に悪くなったわけでもありません。
これまでに放出したと推定される量からはまあそういうことが起こるのは当然 というレベルですが、福島県の土壌でチェルノブイリの強制移住基準を超えると 思われる濃度の Cs-137 がでたとか、水ででたとか野菜で、とか、そういう話 がいよいよ増えてきています。
チェルノブイリでの強制移住基準は Cs-137 で 15Ci/km^2 以上で、これは Cs-137 からの放射線強度としてほぼ 1uSv/h にあたります。3/28 現在で 放射線強度が 3-5 uSv/h を超えるところはこの強制移住基準にひっかかって いる可能性があります。現在、まだγ線測定では殆どがヨウ素131の放射線で すが、これは半減期が 8日なので事故の人から3週間たって 1/6 程度になって います。 最初の段階で放出されるのは 30:1 程度でヨウ素が多いと考えられ ているので、現在は 5:1 程度になっていると思われるからです。
新聞で原発敷地内で 1000uSv/h とか1000mSv/h とかいった値が報道されたあ とだと 1uSv/h なんて小さくて全く安全ではないかとつい思ってしまうわけで すが、食品の安全基準と比べるとそうもいってられない量です。食品の 安全基準は水で 300Bq/kg ですが、 15Ci/km^2 は 5.5E5Bq/m^2 で、 安全基準のところの水 1.8 トン分の放射性物質が1平方メートルの地面 に落ちている、ということになります。別の言い方をすると、 5平方センチの地面に、水1リットル分の放射性物質があるわけです。 そうすると、外部被曝としては大したことはなくても、地面からまいあがった ものを吸い込んでしまうとか、子供が公園の砂場で遊んでいて砂を口に、と かいったことがあると少なくとも食品の安全基準程度の放射性物質を 簡単に体内に取り込んでしまう可能性があります。
また、チェルノブイリでの強制移住基準が適切なものであったかについては 議論があります。ここでは、遺伝的障害についてまず書きます。 色々な報告書での見積りでは子供の 遺伝子的障害は大したことない、となっているのですが、チェルノブイリでの 実地調査では大変大きい、という結果もあります。例えば このレポート では、 15Ci/km^2汚染で、結構な割合で新生児の先天性障 害が増加してます。(表2を参照)生殖細胞については女性だけが影響受ける わけではないので、妊娠可能な女性の他、生殖可能な男性についても 子供に先天性障 害がでる可能性が高くなる、ということです。
数日前は、電源系統が復帰すれば何もかもが解決する、という感じの報道が なされていましたが、制御室に電気がついただけで、元々あった冷却系の ポンプ等が使えそうになった、という話は一切でてきていません。
タービン建屋の床に高濃度の放射性物質が溶けた水がたまっていて、これが燃 料棒に接触した水が圧力容器の外にでている証拠だ、といった寝ぼけた報道が なされていますが、これはもちろんなにかの勘違いです。12日にセシウムが外で 測定にかかった段階で燃料棒の中身が外まででていることは明らかだったわけ ですから、今頃何を、という話です。もちろん、水がたまっているせいで作業が困難 になっている、とかいうことはあるわけですが、これも作業といっても今更何 をするつもりだったんだろう?と思います。
あちこちで下がってはいます。但し、これは原発からの放出が止まっているか らではなく、I-131 が原発の中でも減っていっているのが最大の理由です。な ので、半減期の長い Cs-137 については今も1-2週間前と大きくは違わないペー スでの放出が続いていると思われます。実際、 3/30 の未明には海を回って関 東に上陸するような風がふき、茨城、千葉、東京等各地で10%程度の放射線強度 の増加が観測されました。29日にも若干の増加が見られます。もっとも、雨は なかったので増加は一過性のものでした。雨が降ったら、 3/21 から 24 にか けてのような大きな増加になっていたかもしれません。
また、何故かプルトニウムについて測定していなかったのはおかしいとか隠し ていたのではないかととか色々な話がでていますが、黒鉛減速剤の火災が1週 間続いたチェルノブイリでさえ、プルトニウムの放出はごくわずかで、健康被 害は圧倒的にセシウム137 によっています。なので、現在のところプルトニウ ムについて特に心配する必要はないのではないかと思います。セシウムのほう が10億倍といった程度でより多くでているので、圧倒的に害が大きいです。
何もしない、というか、ずっとやってきたような中途半端な注水を東電と国が 続けるなら、放射性物質の放出は続くことになります。適切な対策がとられな ければ、年単位で続く可能性もあります。もちろん、1年たてば発熱は 現在の 1/3 程度にはなるので、放射性物質の放出も 1/3 またはもうちょっと 減ると期待できますが、累積の量としては現在の数倍になってしまいます。
もっとも、これは逆にいうと最悪の場合でも放射性物質による汚染は平均的に は現在の数倍ですむ、ということで、かなり様子が見えてきたように思います。
ここ数日風は殆ど西風だったので、日本各地で降下した放射性物質はあまりな かったようです。ゼロ、というわけではなく、例えば東京都(新宿)では 3/29, 30 と若干の上昇が見られています。また、原発近くの東京電力の モニタリングポストのデータでは、基本的に毎日数回上昇があり、 西門データでは東風の時に上昇、となっています。つまり、制御できていない 放射性物質の放出が常時続いていて、風がふけばそっちにくる、というのが続 いているわけです。
日本の会社が無人飛行機を使って 3/24 に撮影した写真が、何故か アメリカで 3/30 に公開されています。 http://photos.oregonlive.com/photo-essay/2011/03/fukushima_dai-ichi_aerials.html です。3号機は上半分がなくなっているだけでなく、下半分についても かなり崩れていることがわかります。おそらく、使用済燃料がはいっていたとされる プールなるものはすでに完全に壊れていて、そこに貯蔵されていた大量の燃料 棒は楽観的には建屋の床、まあその普通に考えると建屋周辺にガレキにまざっ て大量にとびちっている、というふうに考えるべきと思います。
農作物の汚染は関東を超えて静岡まで広がってきました。国際基準ではひっか かるレベルになっています。ヨウ素131だけでなく、半減期が長いセシウム137 も多いので、今後数十年にわたって福島県だけでなく関東、東北、静岡あ たりまで農作物は難しいかもしれません。
(ここから 4/3 修正)
すみません、上の見積もりはかなり悲観的過ぎるかも、という気がしてきまし た。というのは、下にでてくる核実験からの降下物の影響についての長期的な 研究では、土壌に蓄積されたセシウム等を農作物が吸収する分は結構少ない、 ということを示唆する結果になっているからです。それよりも、降下物が直接 成長中の作物にあたって吸収される分がはるかに大きい、ということのようで す。このため、例えばコメの場合、1.6E6 Bq/m2 程度と相当高い汚染をされた地域 (セシウムだけで 2uSv/h にあたります)以外では 100 Bq/kg を超えることはな いかもしれません。
チェルノブイリの放出物の影響についても、最初の数年で 1-2桁減る、という 測定結果が得られています。なので、今後数十年にわたって農作物の汚染が続 く、ということはなさそうです。
(ここまで 4/3 修正)
千葉の日本分析センター の分析結果では、実は Cs-134 が Cs-137 の3倍程度あり、現在ではすでに I-131 より放射線強度が高い、ということが明らかになりました。 Cs-134 は半減期が2年なので、あと1年程度は既に降ったものだけでも目に見えて 放射線強度が下がることはない、ということになります。また、 食品等の測定は Cs-137 しか対象にしていないように思われるのですが、 早急に 134 も測定するようにする必要があります。
従来、 134 があまり問題にされていなかったのは、核実験では Cs-134 は殆 どできないからです。Cs-134 ができるメカニズムは、核分裂でできた Cs-133 が中性子吸収して 134 になる、というものなので、核分裂が一瞬で終わる 核実験では少ないのですが、何年にもわたって中性子を浴びる原子炉中では 結構な量ができます。また、 Cs-137 に比べて 3 倍程度のγ線を出すので、 生体への害も大きくなります。
と、いうようなことは私も今日色々調べて理解したのですが、、、
これに関しては若干希望的観測を書いたのですが、「わが国の米、小麦および土壌における90Srと137Cs濃度の長期モニタリングと変動解析」 という研究会によるとそうもいかないようです。少なくとも水田や畑では、 核実験の降下物の実測データから推測される、セシウムの減少のタイムスケー ルは10-20年(水田のほうが若干は短い)で、崩壊による半減期の 30年とすごく 大きくは違わない、という結果になっています。
図16によると1990年の日本の水田の典型的はセシウム量は 1600Bq/m^2 で、コ メのセシウム量は0.1Bq/kg というところです。単純に地面の量と穀物にでてく る量に比例関係を仮定してよいかどうかは疑問があります(測定結果は必ずしも 比例ではないので)が、比例するとしても 100Bq/kg になるためには 1.6E6 Bq/m2 程度必要です。これは 2uSv/h 程度にあたるので、相当高い汚染をうけ た福島県の一部以外では、コメについては、地面から吸収する分によって規制 値にひっかかるほど汚染されることはない、ということを研究結果は示唆して います。
この研究では、核実験の降下物が10年で1桁というゆっくりしたペースで減って いて、核事件がおわってから25年くらいたって初めて土壌からの吸収が降下物 の直接吸収より大きくなっています。例えば来年とかの、大量に降下物があっ てすぐにの年と、25年後で土壌からの吸収の効率が同じかどうかはこの研究からはわから ないのですが、同じだとすれば農作物の汚染は、今年はともかく来年以降はそ れほど大変ではないと期待できるかもしれません。
また、チェルノブイリ事故による 環境の放射性汚染 という報告によれば、最初の数年は ムギ、ジャガイモの放射性物質のレベルは急速に下がっています。これは、 今年、来年くらいについては 2uSv/h よりずっと低いレベルでも作物の汚染は 大きい可能性がある、ということでもあります。が、2-3年後には下がると期 待できます。
私にもわかりません。
http://www.asahi.com/politics/update/0403/TKY201104030041.html には色々興味深いことが書いてあります。細野豪志首相補佐官の発 言として
事故に伴う放射性物質の放出を止められる時期について「おそらく数カ月 後が一つの目標になる」と述べた。 「使用済み核燃料が1万本以上あり、処理するのに相当時間がかかる」 「事故発生直後は炉心溶融(メルトダウン)の危機的な状況を経験したし、 原子炉格納容器が破断するのではないかという危機的状況も経験した。し かし、そういう状況は脱した。若干落ち着きを取り戻している」従来と違って、若干ですが現実に近い認識になってきたように思います。
特によい方向の話は見えてきていません。但し、データがある範囲では、4 月 にはいってから大量の空気中への放射性物質の放出はないように見えます。一 方、大量の水(海水から淡水に切換えています)の投入は続いており、蒸発して いない分が海に溢れる、という当然のことが起こってきました。
建屋がどこからも水漏れしないようなしっかりした構造なら、数万トンの水が ためられる計算で、現在投入している1日 500-1000トン程度の水ではまだ溢れ ない、というのが机上の計算ですが、どこからか漏れ出して高濃度に 汚染した水が大量に海に流れ出しました。
私の個人的な意見としては、これは流し出してしまう、というのも一つの解だ と思うのですが、今のところその対応ではなく、どこかにためる、そのために 漏れないようにする、という方針のようです。炉心に水を流し込んでいれば、 良く水に溶けるセシウムの他、ストロンチウム等も若干は溶け出すのではない かと思います。若干といっても、キログラム単位である放射性物質にたいして 数千トンの水をかけるわけですから、十分大量に溶けるわけです。
冷やすのは向こう数年間行う必要がありますが、問題は排水の放射性物質によ る汚染が今後どうなるか、ということでしょう。とりあえず、現在すでにある 数万トンについては、海に流さないなら蒸発濃縮して体積を減らしたものをタ ンクに保管するしかありません。蒸発濃縮の施設は東海村と六ヶ所村にあるわ けですが、余震の影響もあって当分使えないでしょう。なので、かなり長期に わたって、排水をそのままためる、ということにならざるを得ないのではない かと思います。
各紙で報道されましたが、格納容器・圧力容器に水を満たし、その蒸発熱で冷 やすことで外に水を流しださなくてよいことにしよう、という話です。
圧力容器・格納容器が壊れていないかもしれない1号機ではひょっとしたらそ ういうこともできるかもしれませんが、格納容器(サプレッションプール)が破 損したとされる2号機、圧力容器まで大気圧とおなじでどこかに穴があいてい る上に使用済燃料プールもおそらく破損した3号機、そもそも使用済燃料プー ルで問題が起こった4号機に対しては意味がある対応ではありません。
また、燃料棒が健全な状態ならばこれでもよいのですが、水に大量の放射性物 質が溶け込んでいるわけですから蒸発させたものを環境中に出してよいかどうかは 疑問です。熱交換器を外に置いて循環させるかことが結局必要なことでしょう。
これは、半減期が 8 日の I-131 が殆どなくなってきて、半減期が2年の Cs-134、30年の Cs-137 がメインになってきたためです。なので、土壌では すでに浸透し、色々化合物を作っていて今後何年も減らない、ということだと 思います。コンクリート・アスファルトでは、水で洗い流すことで減ることが 期待できるので、雨を待つだけではなくそのような対応も考える時期と思いま す。
アメリカによる測定では、福島第一から北西方向、福島市の方向に極めて汚染 度が高い地域が細長く伸びており、文部科学省等の測定でも浪江町津島で 20uSv/h、飯舘村で 10uSv/h、 福島市の色々なところで 5uSv/h という程度になっています。 これらは自然のγ線レベルの 100-400倍で、長期間人間が暮らすのがよいこと とは考えにくいです。
低レベル放射線、特に体内被曝の影響については、色々な規制・勧告では いわゆる線形モデル、つまり、 1Sv で 10% の人がガンになるから、 1mSv ではその 1/1000、1万人に一人がガンになる、という考え方に よっているのですが、これが本当か、間違っているとすればどちら向きか、 ということについては議論があり、低レベル放射線は健康によい、と いう主張から全く逆に低レベル放射線は比例以上に危険が大きく、 対数的にしか効果が減らない(つまり、放射線強度が 1/10 になっても 危険は 1/10 でなく、ちょっとへるだけ)という主張まであり、 どれももっともらしい証拠付きで主張されている、というのが現状です。
今回の事故で福島・宮城から関東全域にわたって低レベルの被曝が起こりつつ あるので、数年後にはその影響が定量的にわかるようになってどの学説が 正しいかわかるかもしれないのですが、それでは手遅れなので、 危険が大きいとする側の学説が正しいかもしれないと思って行動する ことを考えるべきではないかと思います。
関東域は大した汚染ではない、と言われていますが、東京都新宿区の測定では 3/21-22 に降下した放射性物質の量は 1950-60年代の大気中で核実験が行わ れていた時期に降下した総量の数倍あります。核実験についても、 新生児の死亡率、低体重児の割合、乳ガンについて顕著な増加があった という調査もあり(例えば http://gallery.harmonicslife.net/main.php?g2_itemId=204)、 もしもこのデータが信用できるものなら関東でも大きな影響がでることになります。
また、東大柏キャンパスのデータでは新宿区の 10倍ほどの降下物があったよ うであり、大気中核実験の時の数十倍になるわけです。これが全く 無害なら大気中核実験禁止条約は全く無用なものだったわけですが、、、
また、雨の予報もあります。こっちも細かいところはあまり信用できない気が しますが、大体の目安になります。原発から風がふいている時の雨のふりはじ めには気をつけたいものです。
この辺は、ちゃんと国が予報とか出すべきと思いますが、、、 「ただちに健康に危険があるレベルではない」って、それ、ただちではないけ ど危険があるかもしれないの?というような疑問もでてくるわけですから。
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