行政の持つ個人情報は垣根の曲がり角にきている

昨日に引き続き、岡崎「Librehack氏」事件の続きです。

刑事事件は知らん顔、民事事件はやるきゼロはおかしくないか?

昨日のエントリどおり岡崎市役所及び立中央図書館が見解を出したことは述べました。
その後も気になっているのが声明のうちのこの一文。

その後の捜査により、大量アクセスを行った人物が逮捕され、報道によりますと、起訴猶予処分となっているとのことです。

まるでヒトゴトですね。
とりあえず、刑事訴追としては起訴猶予処分になって決着したかにみえます*1が、現実にLibrehack氏が岡崎市行政や岡崎市立図書館に損害(ミツビシはこの際無視)を与えているのであれば、速やかに損害賠償の民事訴訟が提起されるべきであります。
ちなみに、岡崎市中央図書館条例は次の記載があります。

(利用の制限又は禁止)
第6条 教育委員会は、図書館を利用しようとする者又は利用する者が公の秩序若しくは善良な風俗を乱すおそれがあると認めるとき、又は図書館の管理上支障があると認めるときは、図書館の利用を制限し、又は禁止することができる。
(損害賠償)
第7条 図書館を利用する者は、故意又は過失によりその利用する図書若しくは記録その他の資料等又は図書館の建物若しくはその附属設備を損傷し、又は滅失したときは、その損害を賠償しなければならない。ただし、教育委員会において損害を賠償させることが適当でないと認めるときは、この限りでない。

行政内部にいる人間ならお気づきかと思いますが、主語は「教育委員会」です。おそらく、一定程度図書館長に権限委譲はありましょうが、「利用の制限または禁止」「損害賠償」は、教育委員会が主体となって行使する内容です。
もちろんLibrehack氏を相手取って岡崎市行政や岡崎市立図書館が民事訴訟を起こす可能性はゼロに等しいと想像します。が、「損害」が発生し、その対応・修正に多額の費用をかけたというならば、岡崎市立図書館は条例に基づき、損害賠償を請求することが条例で義務付けられている、他方、
「損害はなかったんだよ」
といえば、あの一連の騒ぎはなんだったのでしょうか?
損害が発生していないことは、Librehack氏の「シロ」を意味します。
そうなれば「被害届」そのものが無効、逆に名誉棄損でLibrehack氏が岡崎市を相手取って訴訟を起こすことも考えられるのです。

なぜ図書館はMDISを擁護するのか?

これも多くの方が疑問に思っていることでしょう。
答えは簡単です。
「メンツをたもつ」
ためです。
同図書館は、あとで調べたところ「プロポーザル方式」で業者選定・契約締結をしています。単なる価格競争ではなく、ベンダー各社に提案をしてもらい、もっとも優秀とされる業者を選ぶというものです。
これは、契約方法としては、一つの理想形ともよべるものですが、肝心なのはどのような提案の聴取審査をしたかということです。岡崎市立図書館の職員の図書館システムに対する意識・知識はあまり高くない(若手はともかく幹部に限っていえば)ようですので、「プロポーザル方式」の利点が活用できたか、怪しいものです。
私は
「いずれの社(ベンダー)も甲乙付け難し」
なんちゃって、結局買いたたき(=一番安いベンダー)あたりに落ち着いたのではないかと推理します。もし、
「そうではない! あくまで性能・条件でM社を選んだんだ!!」
と幹部が云い張るようであれば、私が市庁であれば監査に命じて、幹部全員の身辺調査をいたします。なぜかって?
収賄のおそれ」
に決まっているじゃないですか。

現場では、誰でもひとりひとりきり…

なんだか「エースをねらえ」の主題歌のような小見出しになりましたが、「ひろみ」には、宗像コーチのような有能な指導者もいれば、お蝶夫人のような品格ある先輩方もおりましたね。
今回、
岡崎市立図書館も
愛知警察も
司法(検察・裁判所)も、
それぞれもてる分野のエキスパートはいても、IT関係に詳しい方(単なる「オタク」ではなく、「IT」を自分の業務と関連付け、必要な対処案を立案すべき方々のすがたがみえてきません。
でも、程度の差こそあれ、一定程度の理解はあったと思います。
ところが、上記3者ともに、お互いの職掌やプライド、個人情報の垣根のせいで、相互連絡・意思の疎通に支障をきたす場面はなかったでしょうか

トラブルの相談窓口と教訓の共有

いちばんの改善策は、図書館における相談窓口の設置です。
図書館利用と個人情報としてはいまのところ、日本図書館協会の図書館の自由委員会というのがありまして、

・図書館の自由に関する相談への対応と事例研究
・『図書館雑誌』誌上に「こらむ図書館の自由」を執筆し、宣言の普及に資する
・ニューズレター『図書館の自由』の編集発行
・図書館の自由に関する研修への講師の派遣
全国図書館大会 図書館の自由に関する分科会の運営
IFLA/FAIFE(表現の自由と情報のアクセスに関する委員会)との連携協力

のような活動をしていますが、今回の件については黙秘をつづけています。
別に委員会だけで解決不可能なら、別に有識者から必要に応じ、指導助言を得ればいいと思うのですが「公共図書館員のタマシイ」を大切にする人の集まりですからそれも無理からぬことでしょう。

“目に見える利用者”だけがお客様

最後に素朴な疑問。
図書館内OPACを子どもが遊んで(=目的外使用)しています。図書館員が注意してもなかなかいうことをききません。おかげで、他のOPACを利用したい方は困っています。そんなとき、警察に相談すべきでしょうか?

  • 直接来館された方だけが「利用者」
  • Web-OPACを利用する人は「外の人」=ドウデモイイ

こんな悪習が図書館界の一部にはあります。
一足飛びに「改善」はできなくとも、できることからはじめていきましょうよ

*1:私個人としてはLibrehack氏の行動に“悪意はなかった”という以上、不起訴処分が適当であると思いますし、反面「起訴猶予」で済んでホットしている気持ちが正直ありました