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なぜオランダが「自転車大国」なのかという知られざるその理由

By Laura Gilmore

オランダといえばチューリップと風車をイメージしますが、実は「オランダと言えば自転車、自転車と言えばオランダ」とオランダ政府観光局がアピールするくらいに「自転車の国」でもあります。首都アムステルダムでは人間の数よりも自転車の数の方が多く、ハーグを訪れる観光客の70%が自転車で旅をするそうです。オランダで他のヨーロッパ諸国でも類をみないほどサイクリングが人気になった背景について、BBC特派員Anna Holliganさんがリポートしています。オランダの自転車大国ぶりとはどのようなものでしょうか。

Why is cycling so popular in the Netherlands?
http://www.bbc.co.uk/news/magazine-23587916

Holliganさんは「omafiets」という、かごが枝編みでリアにブレーキがあるオランダのいわゆるママチャリに乗って実際にオランダを旅することで、オランダ人がサイクリングをこよなく愛する理由について調査しました。

By Frank Chan

◆自転車中心への転換
第二次世界大戦以前、オランダでの主要な移動手段は自転車でした。しかし1950年代、1960年代になると自動車が急速に普及するにつれて様相は一変します。ヨーロッパの多くの国々がそうだったように、オランダ国内の道路も自動車があふれかえるようになり、自転車は道路の縁へと追いやられていくことになりました。この自動車数の飛躍的な増加は、交通事故による死者数の増大を招き、1971年には車にはねられて亡くなった人の数が3000人を越え、そのうち子どもが450人を占めるという状態になりました。結果、子どものための安全なサイクリング環境を求める社会活動が起こることに。

By Boston Public Library

さらに1973年に起こった石油危機が自動車の信頼性と持続性を大いに揺さぶります。産油国がアメリカとオランダを含む西ヨーロッパへの石油の輸出をストップしたのです。

社会運動と石油危機の問題は、オランダ政府が自転車用のインフラ整備に本腰を入れる後押しになりました。オランダの都市開発は、都市化する他の西洋諸国でとられていた自動車中心の道路建設方針から脱却して独自の道を歩むことになるのです。

サイクリングを安全にし、より多くの人を招待できるようにと自転車専用道路の巨大ネットワークが構築されました。専用レーンは自転車専用であることが標識ではっきりと明示され、道路も平らに舗装されます。また、追い越し可能なように十分な道幅が取られました。


オランダの都市の多くでは、自転車専用道路は自動車交通網から完全に分離されています。ところにより分離が不十分で両者が混在しているところもありますが、そこでも「自転車優先」という表示を見つけることができます。また、オランダによくある円形交差点「ラウンドアバウト」でも、自転車に優先権があります。

By Public Information Office

ラウンドアバウトでは、自転車が交差点を通過するまで、自動車は忍耐深く待ちます。「自転車は権利」という考え方は、自転車に乗って道路を走りラウンドアバウトに到着した多くの旅行者にとって特異な異国の概念に思えるでしょう。

◆自転車体験は赤ん坊から
オランダの子どもは、歩き始めるよりも前から自転車の世界にどっぷり浸かっています。乳児やよちよち歩きの幼児は「bakfiet」という赤ちゃん専用シートか積荷かごのある自転車にのせられて移動します。これらのシートは外敵から赤ちゃんを守るようにキャノピー(風よけ)を装備しています。オランダでは親は赤ちゃんを自転車に乗せるための投資をおしみません。

By Mark Stosberg

子どもたちは成長するにつれ、自分の自転車に熱中していきます。自転車レーンは、子どもたちが乗り降りするのに簡単で安全なように十分な幅がとられています。オランダでは18歳になるまで自動車を運転することが許されていないこともあって、10代の若者に自由を与えてくれるのがサイクリングなのです。

By Lighttruth

また、オランダでは学校で自転車に慣れるよう教育されることも自転車浸透の大きな要因です。全ての学校には駐輪場があり、90%の生徒が自転車で登校しているという学校もあります。

By Sameer Vasta

◆自転車をとりまく環境
オランダの自転車乗りなら誰もがあこがれる大学都市フローニンゲンでは、中心部の駅地下には1万台の駐輪場が完備され、入り口でどこに駐車できるのか電子カウンターで表示されるなど自転車インフラは非常に先進的です。

また、オランダの自転車置き場は非常にユニークで、学校の外、オフィスビル、店先など所定の場所であればどこでも駐輪することが可能。ただし、間違った場所に駐輪していると、自転車はチェーンを切断してでも撤去され、25ユーロ(約3200円)以上の罰金を払うことになってしまいます。

By Thomas Hawk

オランダではサイクリングがあまりに一般的なので、Holliganさんが町ゆく人にサイクリストかどうか尋ねると「サイクリストじゃない、ただのオランダ人だ」と怒られることもあったそう。

By Ben

オランダ人は、自分たちを守ってくれるサイクル交通ルールと自転車用に設計されたインフラのおかげで、ヘルメットをかぶらない傾向にあります。オランダでヘルメットをかぶって自転車に乗る人を見たら、それは旅行者かプロのサイクリストでしょう。プロではない旅行者でも、平坦なことで有名なオランダの土地なら短期間で全土を走破することも十分可能です。

◆性能ではなく愛着
彼らは自転車を人生という冒険を一緒に旅する信頼できる仲間だと見なしています。このような関係では、長いつきあいであることが重要です。古い友ほど良いのです。車輪につけた泥よけからガラガラと音をたてながら、後ろから自転車がやってくることは珍しくありません。むしろ、すりきれてくたびれた古い自転車は、長く続く愛情を証明するものとしてステータスがあるのです。

By Robert Wallace

◆権利であって権力ではない
みんなが自転車に乗り、知人が自転車に乗っているということは、道を分け合わなければならないときにより多くの共感を持ち合えることを意味します。

サイクリストは交通ルールを尊重しこれに従うことを期待されています。無謀な運転をしたり、間違った場所を通ったり赤信号を無視したりすれば、罰金を科されるかもしれません。もし夜にライトをつけていなければ、警官(こちらもたいてい自転車に乗っているのですが)は60ユーロ(約7700円)の反則切符を切るでしょう。また、オランダの法律で装着が義務づけられている反射板がなかったらさらに多くの罰金が科されます。


もちろん依然として事故は起こります。しかし自転車が関係する交通事故では、保険会社は「厳格責任」と呼ばれるオランダの安全コード185条を参照にします。それはよく「罪を科す法律」と誤解されているのですが、その法律が本質的に意味するのは「ドライバーはサイクリストと自転車に対して最低50%の金銭賠償をしなければならない」と言うこと。つまりこの法律は自転車愛好家を守っているのです。

By Werner Kunz

Holliganさんは、オランダで自転車に乗れば力強く守られていると感じとても楽しい経験ができると言います。路上に危険はあります。けれど、それは相手が重い荷物を積んでいてさらに交差点が貧相なデザインなのに危険な運転をしているというきわめてレアな場合のみとのこと。あなたも一度、オランダでチャリダーマンになってみてはいかがでしょうか。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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