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Pythonでおk ─ 書評: C言語によるスーパーLinuxプログラミング
あのね、この本のAmazonの内容紹介が あまりにたわけていて ね。
Cライブラリで、効率的にプログラミング! Webアプリの世界ではPHPやJavaが格段とポピュラーだが、ハードウェアの操作や ユーザーインタフェース、画像処理などの分野ではC言語でしか扱えないものが多く、近年、現場でのニーズは高い。 本書は、プログラミングでの複雑な処理を短時間に組むために用意されたライブラリに焦点を当て、その使い方を解説しました。 データベース・プログラミングからネットワーク、科学技術計算、コンピュータグラフィクスまで、 ライブラリの活用術を身につけ、複雑なコーディングを簡素に実現する。 LinuxのディストリビューションにはUbuntuを採用。
あれですか句読点のところで毎回「なわけねーだろ」とかツッコミ入れる視聴者参加型インタラクティブ漫才か何かですか。SBCの編集会議はよくこれを通したよね。
まあそんで、どんだけひどい本なのか興味あったので一応読んでみたわけですけど。これねえ、内容自体はそんなにひどくない。もちろんCによるという時点でどうころんでも 前提がおかしい のはどうしようもないわけだけども、そこはさておくとすれば、各章の記述は真摯です。第1章「なぜいまCなのか」に至ってはCにもよくないところはあるし適材適所で、みたいな、おいおいそれ最初に言っちゃうのかよ?っていう筆致になっていて、まあ、おそらく著者はそういうところで嘘がつけない奴なんだろうなあというのはにじみ出ている。あるいはたとえばコラム32の「CやUnixの基礎に関する、おすすめの参考図書」に挙げられているのが
といったラインナップで、間違ってもK&RとかC:ARM5とかじゃないというあたりに、著者の趣味というか方向性は如実に出ているといえるし、あまり悪い印象は受けない。
したがってかえすがえすも惜しいのは本書はCである必要とLinuxである必要がないという 根本的問題 をまったく解決していないという仏作って魂入れずな著作であるという点で、各論はそんなにひどくないのに全体としてみたときに誰が得するのかよく分からないというか、とくに7章でGLibが出てきて12章でGTK+を紹介してからは概ねGTKの枠内でプログラミングしていくわけだけれども、「それPyGTKでよくね?」「それCだとライブラリ使うけどPythonなら楽勝じゃね?」という、とくにUbuntuはわりとPythonよりの環境であるために余計に、Cでないといかん理由がなすぎて非常に清々しい気分になる一冊と言えますね。
まあそういうわけでこの本はむしろPythonに翻訳する修行をすることによりPython力を高めるPython本として使うのが正しい使い方というふうに思うわけです。あるいはMonoも悪くないね、GTK#を使ってみるよい機会になるでしょう。そういった練習問題集として見れば(各章はよく書けているだけに)結構使えるんじゃないかという気がしてきました。C言語によらないスーパーLinuxプログラミングのための本だったんだね。