大企業の内部留保わずか1%で若者の就職難が解決 - 3%で月1万円賃上げ可能 | くろすろーど

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 きょうの「しんぶん赤旗」の1面トップで、大企業内部留保の国公労連試算が取り上げられましたので、その記事とともに、国公労連試算を紹介します。


 厚生労働省の今年度の「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」 によると、卒業予定者の「就職希望者数」は、大学41万人・短大5万3千人・高専5千6百人・専修学校20万人で合計66万8千6百人。「うち就職(内定)者数」は、大学23万6千人・短大1万2千人・高専5千3百人・専修学校7万6千人で合計32万9千3百人。就職難民は33万9千3百人にものぼります。国公労連試算による主要企業144社の「内部留保の1%による雇用増」の合計は、39万3,150人です(※連結内部留保による試算なので、若干の重複が生まれることになり、単純には合計できませんが、就職難民33万9千3百人の雇用増には十分の数字です)。主要企業144社の内部留保のわずか1%だけで、超就職氷河期とされている新卒者の就職難が解決するのです。


 ▼2011年1月8日(土)「しんぶん赤旗」
 月1万円賃上げ可能
 大企業内部留保3%分
 国公労連試算


 日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)は、大企業の内部留保(連結ベース)のごく一部を取り崩すことによって、全労連がいま春闘で要求している月1万円の賃上げと、雇用増が可能になるという試算をまとめました。内部留保の活用を求める声が広がっています。


 試算は、全労連・労働総研の調査をもとに、主要企業144社と持ち株会社142社の内部留保の活用について調べたもの。


 内部留保の3%以下を取り崩すだけで正規・非正規雇用労働者に月1万円の賃上げを実施できる主要企業は、120社にのぼります。


 雇用(年収300万円、1年間の雇用)について見ると、内部留保の1%を使うだけで1,000人を超える新たな雇用をつくりだすことができる主要企業は、87社ありました。


 主要企業のうちトヨタ自動車の内部留保は13兆2,756億円。この0.49%を使っただけで、正規・非正規を合わせた労働者約38万人に月1万円の賃上げが実現します。また、1%を取り崩せば、4万4千人を超える労働者を新たに雇用できます。


 民間企業労働者の年間平均賃金は1997年から2009年にかけて62万円以上も下がる一方、大企業の内部留保は142兆円から244兆円に激増。これが日本経済の成長を止める原因となっています。経済の健全な成長のために、内部留保を賃上げと雇用確保に活用すべきだとの主張が財界系シンクタンクからも出るほどです。


 これにたいし日本経団連は、近く春闘方針として出す「経営労働政策委員会報告」で連合が要求している1%アップを拒否する方針をもり込むと伝えられ、国民の要求に背を向けつづけています。


(国公労連の内部留保活用による雇用増、賃上げ試算から)

くろすろーど-赤旗


(注)三菱UFJ=三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友=三井住友フィナンシャルグループ、みずほ=みずほフィナンシャルグループ、日本電信電話の4社はいずれも持ち株会社です。


 ▼国公労連の試算
 2011年春闘資料
 内部留保関連資料(雇用増、賃上げ試算)
                         2010年12月 国公労連


 1.資料の概要


 本資料は「2011年国民春闘白書」(全労連・労働総研編集)に掲載された主要企業・連結内部留保一覧に基づいて内部留保の1%による雇用増と非正規を含む全労働者に月1万円の賃上げをするための内部留保の取り崩し率について試算したものです(下表参照※連結内部留保一覧はブログでは省略)。2011年春闘に当たり膨大な内部留保の社会的な還元を求め大企業の社会的な責任を追及する宣伝に利用してください。


 2.内部留保の1%による雇用増


 ◆主要144社のうち87社で1,000人以上の雇用可能


 主要企業144社について内部留保の1%を雇用に回すとどれくらいの雇用増があるのかを試算しました。雇用については年収が300万円で一年間雇用とします。


 この試算によると、主要企業144社のうち87社においてそれぞれ1,000人を超える雇用が可能です。このうち9社では1万人以上の雇用が可能であり、14社では5,000人から1万人未満の雇用が可能です。


 個別企業をみると、トヨタ自動車は内部留保が13兆2,756億円であり、その1%によって4.4万人の雇用が可能です。


 3.月1万円賃上げをする場合の内部留保取り崩し率


 ◆88社中の70社、3%未満の取り崩しで
  正規と非正規に月1万円の賃上げが可能


 (1)正規労働者の賃上げ


 主要大企業144社について正規従業員全員に月1万円賃上げ(ボーナス6月含めて年間必要財源は18万円)するために内部留保の何%を取り崩せばよいか試算しました。


 この試算によると、主要企業144社のうち126社において内部留保の3%未満で正規労働者全員に月1万円賃上げが可能です。


 (2)非正規労働者の賃上げ


 主要企業144社のうち非正規労働者(雇用関係のある臨時従業員)の人数が明らかな企業は88社です。この非正規労働者全員に月1万円賃上げ(年間必要財源は12万円)するため内部留保の何%を取り崩せばよいか試算しました(下表参照)。さらに正規と非正規に両方に月1万円賃上げする場合の内部留保の取り崩率も試算しています。


 この試算によると、88社中、70社で内部留保の3%未満の取り崩しによって正規と非正規に両方に月1万円の賃上げが可能です。


 (3)個別企業の例


 トヨタ自動車は内部留保が13兆2,700億円であり、正規32万人と非正規5.9万人とに月1万円賃上げをするのには内部留保の0.49%を取り崩せば可能。


くろすろーど-内部留保(最終)


▼付録


 1.「内部留保の取り崩しは可能なのか」疑問にこたえる


 【Q】 内部留保は資産であり、機械設備、土地などの形になっており簡単に売却できないので、賃上げや雇用増の財源にはならないのでは?


 【A】 いいえ、そうではありません。資産の中では、機械設備など簡単に売却できない固定資産も大きいですが、流動資産として預金、受取手形、有価証券、公社債などなど換金性の高い(現金化しやすい)部分もあります。この部分を取り崩せば賃上げや雇用増の財源になります。駒澤大学経済学部の小栗崇資教授は「内部留保の主要部分である利益剰余金の約4割は換金性の高い資産」と指摘しています。(※参照→大企業の内部留保の4割強は雇用維持に活用可能 - ほんの一部の取り崩しで雇用を守れる


 2.ビラの原稿例


 巨額な内部留保の一部で雇用増と賃上げを
 企業は社会的責任(CSR)を果たせ
 内部留保の1%で千人以上の雇用増(主要144社中の87社で)
 非正規も正規も月1万円賃上げ可能(内部留保の3%未満。70社で)


 各大企業は、株主配当と役員報酬を引き上げる一方、労働者には賃金を抑制し、長時間過密労働を押し付けて巨額な内部留保をためこんでいます。景気が悪化している今こそ、好景気の時からずっとためてきた内部留保のほんの一部を社会的に還元し、雇用増や賃上げをおこなうべきです。


 例えばトヨタ自動車の場合は、内部留保が13兆2,756億円であり、その0.49%を取り崩せば正規32万人と非正規5.9万人に月1万円賃上げは可能です。また内部留保の1%によって4.4万人の雇用が増やせます(年収300万円)。


 全労連調査をもとに試算すると主要企業144社のうち87社において内部留保の1%によってそれぞれ1,000人を超える雇用増が可能です。また非正規従業員が明らかな主要企業88社中、70社で内部留保の3%未満の取り崩しによって正規、非正規あわせ全ての労働者の月1万円の賃上げが可能です。


 各企業は「利益至上主義」に陥ることなく、今こそ自らの社会的責任(CSR)を果たし、内需拡大による景気回復を目指すべきです。