総務省が今年度に実施する「フューチャースクール推進事業」実証研究(「東日本地域におけるICTを利活用した協働教育の推進に関する調査研究」および「西日本地域におけるICTを利活用した協働教育の推進に関する調査研究」)の請負先2社と実証校10校が決定した。

 NTTコミュニケーションズ(NTTコム)が東日本地域を、富士通総研が西日本地域を請け負う。規模や地域、ICT利活用の度合いなどの条件が異なる公立小学校を、東西それぞれの地域で5校ずつ実証校として選定した。

 実証実験では、全児童と学級担任に対するタブレットパソコンの配備のほかに、全普通教室へのインタラクティブ・ホワイトボード(電子黒板)の配備や、校舎内外で通信を行うための無線LAN環境の構築、校務支援やデジタル教材の管理、ポータルサイトやメーリングシステムなどの機能を、クラウド技術を使って提供する「協働教育プラットフォーム」(教育クラウド)──といったICT環境を各実証校に構築する。

 さらに、実証実験のサポートを専任とする支援員を各校に1名以上配置し、授業支援体制を整えることで、整備した環境が実際の授業に活用されやすいよう配慮している。こうした環境の中で、児童がお互いに学び合い教え合う「協働教育」の推進を目的に、実現に必要な情報通信技術面を中心とした課題を抽出・分析する方針である。

2~5カ月間かけて教育効果を実証、評価

 東日本地域を請け負うNTTコミュニケーションズ(NTTコム)では、生徒用のタブレットパソコンとして東芝情報機器の教育用端末「CM1」を採用する。CM1は10.1インチ型の感圧式タッチパネル液晶を搭載し、重量が約1.8kgのWindowsパソコン(AtomプロセッサーN450を採用)である。本体全体がラバーコーティングされていて衝撃や振動に強いのが特長である。NTTコムでは海外の教育現場での採用実績などを考慮して選定したという。東日本地域では、2010年9月中旬以降、環境整備が完了した実証校からシステムの運用/導入を開始し、教員向けの研修などを行った後、12月から2011年1月下旬にかけて実証授業を実施する予定である。

 一方西日本地域を請け負う富士通総研では、生徒用のタブレット端末として富士通製「FMV-T8190」のカスタムモデルを採用する。FMV-T8190は12.1インチ型の静電容量方式によるタッチパネル液晶を搭載し、重量が約1.9kgのWindowsパソコンである。CPUにCore 2 Duoを搭載しており「様々な用途で快適に利用できるよう高めのスペックを採用した」(富士通総研 公共コンサルティング事業部の中川弘文氏)という。こちらは2010年9月上旬から運用/導入を開始し、10月上旬から2011年の2月下旬にかけて実証授業を実施する。

具体的な利用プランは教員と支援員が計画

 こうした環境の整備後、具体的に授業でどう活用するかについては、教員と常駐の支援員が相談しながら決める。ただし実証実験の目的に「ICTを使った協働教育の推進」とあることから、紙の教科書を単純にタブレットパソコンに置き換え、今まで通り教員から生徒への一方向な授業を行うという使い方は想定されていない。生徒がタブレット端末に書き込んだ意見や答えを先生がインタラクティブ・ホワイト・ボードに集約/表示して、その内容についてさらに考えさせるなど、双方向性を生かしながら児童がお互いに学び合い、教え合う教育を実践できる授業モデルが望まれている。

 実証実験の評価方法については、テストの点数が向上するなどの学力による評価ではなく、授業への関心度や学習への主体度がどう変化したかを、教師や家族が評価する形で行われる。

11年度は家庭も含めた教育クラウドを検証

 今回のフューチャースクールの実証実験は、文部科学省が来年度以降に実施を検討している、「ICTを利活用した教育手法を検討する実証実験」と連動することが検討されており、来年度以降も複数年継続される可能性が高い。今年度の実験では検証期間が限られるため、主に授業における活用方法に絞って実験が行われる予定だが、来年度以降は東日本と西日本の教育クラウドを接続しての運用実験に加え、タブレットPCを持ち帰って家庭での学習にどう利用できるか、教育クラウドを使った学校と家庭とのコミュニケーション機能の活用など、家庭まで含めた形でICTをどう活用できるかについて検証を進めることになりそうだ。