いったいなにができるだろう。

 医師でも災害救助のプロでも自衛隊でもなんでもない自分が。震災後どれだけ多くの人々がそう自問しただろう。目の前の惨状に無力感を覚える、私もそんな1人だった。

著名な音楽アーティストたちが発起人となったボランティア

 ある日ネットで、被災地に向けた3泊4日の災害ボランティアの募集が目に留まった。これまで週単位の参加を条件とするのがほかにあったのだが、山積する仕事を残していけるほどの余裕もなかったし、1週間自己完結できる自信もテント生活が初めての私にはなかった。

長引く避難所生活の「心安らぐひととき」

東日本大震災の被災地では、震災から1か月以上が経った現在でも、多くの被災者が避難所での不便な生活を強いられている〔AFPBB News

 ap bank Fund for Japan。ap bank は、自然エネルギーや環境保全問題に取り組んでいる著名な音楽アーティストたちが発起人となっている非営利組織だ。

 夏の野外音楽イベントに参加していたので、その活動内容は私も知っていた。その ap bank が震災支援に乗り出すというので、説明会に参加した。当日会場は、20代を中心とする若者であふれ返っていた。

 ざっと200人以上はいたと思う。席につけない人々が、何重にもなって小さな会場を埋めていた。

 司会は、世界一周クルーズで知られる非営利の国際交流のNGO団体ピースボートだった。現地で震災支援の舵を切るのは彼らだという。意外だったのだが、阪神・淡路大震災、新潟県中越沖地震や海外の数多の災害時にも緊急災害支援の実績がある。

 災害救助の経験はないが認知度が高い ap bank とコラボレーションした格好だ。活動の拠点は宮城県石巻市。今は増えてきているが、当初から県外のボランティアをいち早く受け入れている自治体である。

 現地の様子を映像で見ながら状況の確認と支援内容、ボランティアの心構え、必要な準備など流れるような説明を受けていると、まるで行楽に出かけるような気分になりかけた。

 その時、一石を投じたのが、震災直後から被災地入りし、このために戻ってきたというスタッフからの一言だった。