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2010年10月28日(木)

極みの境地から見えたこと プロゲーマーとゲーミング 後編2-2

文:電撃オンライン

『電撃ゲームス』

 前回に引き続き、プロゲーマー田原氏へのインタビューをお届け。今回は田原氏が提唱する“ゲーミング”によるコミュニケーションの可能性、田原氏がプロゲーマーとして活動してきた中で見えたこと、そして求めるその先についてお伝えする。

プロゲーマー

【人物紹介】

FPSプロゲーマー
【田原“uNleashed”尚展】

  2007年にプロゲーマーとして活動開始。メインでプレイしているFPSは『Quake Live』。最近はマウスパッドの開発が楽しいと語る。


Vol.2-1からの続き)

ゲームイベントで
人と知り合うのがすごく楽しい

 前回(Vol.1-3)にお話ししたゲームイベント“Bigbang 2010”でも素晴らしい出会いがありました。このイベントには、パックマンの世界記録保持者などが来ていて、ひょんなことから知り合いになれたんです。みんな僕よりもはるかに年上なんですが、話を聞いていると「人生をパックマンにかけてきた」とか言っていて、非常におもしろいんですよ。

――ちなみに、FPSには高年齢のゲーマーはあまりいないんですか?

 トッププロとなると確かにいませんが、普通にプレイしているシニアゲーマーはたくさんいますよ。僕が実際に会った中で最高齢は68歳でした。息子にPC一式を持って来させて大会に参戦していたのですが、若いプレイヤーにボコボコにやられまして。するとマイクを借りてきて壇上に上がり、「40歳以上のプレイヤーは来い」と言ってシニアトーナメントを始めちゃったんです。

――勝手にトーナメントを開催してしまった(笑)。

 さらにおもしろくするために、強いプレイヤーにはハンデとしてお酒を飲ませたりとか、本気でゲームを活用した交流を楽しんでいる感じがしました。端から見ていて、いいなぁ~と。

――ゲームに年齢は関係ないですよね。いくつになってもゲームを楽しんでいると。

 まさにそう思います。あと、海外の知り合いが多くなった理由に、Facebookの普及もあります。自分のプロフィールを名刺がわりに使えるので便利です。一度会っただけでもその後にコミュニケーションがとれますし、大会で渡米したときに滞在先として泊めてくれたりもするんですよ。逆に彼らが日本に来たときは世話をしたり、楽しく遊んだりします。

――そうしてコミュニティが広がっていくんですね。

 ゲームは時代とともに形を変えていくものだと思いますが、ゲーミングという部分は、いつまでたっても変わらないと思います。

世界で認められる
マウスパッドを開発するまで

 僕はスポンサーとして契約してもらった縁もあって、ARTISANというブランドのゲーム用マウスパッドの開発のお手伝いもしていますが、そもそもゲーム用マウスパッドは海外メーカーが主流です。ただ、海外は技術レベルが低くて、靴の中敷きと同じような物を素材として使っているんですよ。

――靴の中敷きと同じ素材ではダメなんですか?

 そういう素材だとマウスパッド内の場所によって抵抗感が違うんです。あるときグロウアップ・ジャパンの社長から「正確な操作が要求されるFPSで抵抗感が違うのはどうなのか。均一にするのが必要なんじゃないか」と指摘されたんです。それまでは、そんなことを考えたこともなくて、でも考えてみると確かにそうなんですよ。

――そこからマウスパッドの開発やスポンサーにもつながったわけですね。

 そうですね。いざ開発を始めてみると、日本のすごさみたいなものに触れることができました。というのも、繊維工業の技術で日本はズバ抜けているんですよ。これと同じレベルのものを海外メーカーに求めても、まず作れません。

――そこまで技術に差があるんですね。

 僕がプロデュースしたモデルが近日中に発売されますが、これは8月に行われたQuakeCon 2010のARTISANブースで試作品として先行展示されていたものです。前回もお話ししましたが、とあるトッププロゲーマーが大会でこれを使って決勝まで残ったんですよ。彼は頭脳派で、AIMが格段にうまいわけではないんですが、大会での命中率がすさまじくて。これはマウスパッドのおかげなんじゃないかと思い、自分のやってきたことに自信を持ちました。

次の世代のゲーマーに
何かを残していきたい

 実は今の僕は、人の役に立ちたいということを考えて活動しています。ゲーマーとして社会貢献をしていくことで、次の世代の日本のゲーマーに何かを残せればいいなと考えています。ですので、今回のARTISAN製のマウスパッドも、ようやく芽が出てたのでよかった。そういった何かを残していきたいですし、何かを伝えていきたいと思っています。

――就職後の活動についても教えてください。

 実は就職する前に、オランダ人の友人と1年半ぐらいかけて、日本でまたe-Sports的なものを盛り上げていきたいと構想していたんです。ただ、資金やノウハウがないままだったので、途中で頓挫(とんざ)してしまいました。就職先はWebサービスの会社になりますが、そういったノウハウの習得も考えて選んでいます。それが自分の生業になるかはわかりませんし、趣味で終わるかもしれませんが、ゲーム文化を盛り上げるために挑戦したいと思っています。

【用語解説】

●BigBang 2010
 8月5日から9日まで、アメリカのアイオワ州オタムアで行われたゲームイベント。『Quake Live』の大会だけでなく、『パックマン』のハイスコアアタックや、29人のゲームデザイナー&プレイヤーが選ぶゲームの殿堂選出会なども行われていた。

●ゲーム用マウスパッド
 マウス操作が重要となるPCゲームをプレイする際に、マウスと同じぐらい重要といわれているのがマウスパッド。ゲーム用マウスパッドは、事務用マウスパッドとは異なり、激しいマウス操作に対応できるように幅40cm以上のものも珍しくない。有名ブランドとしてRazer、SteelSeries、DHARMAPOINTなどがある。

●e-Sports
 エレクトロニック・スポーツの略。FPSやRTSなどのPCゲームだけでなく、最近では対戦格闘ゲームもe-Sportsの種目として扱われるようになってきた。主に反射神経やその場の判断などが求められるゲームを、デジタルなスポーツの一種として扱う。


―ARTISAN製マウスパッドの日本技術へのこだわり―

プロゲーマー
▲『KAI.g3 飛燕』では梨地織りとも呼ばれるアムンゼン織りを採用し、トラッキング性能が向上。

 グロウアップ・ジャパンが開発・販売を行っているARTISANブランドのゲーム用マウスパッドは、日本が好きでたまらない同社社長の理念により、日本の技術を使って製作されており、素材を含めてすべて国内で生産されているのが特徴だ。マウスを滑らせる、止めるといったマウスパッドの性能を決める中間層に、極小の気泡が整然と並ぶ“特殊構造体中間層”を採用。これによりマウスパッド全面で均一な滑りが実現した。なお、開発に携わった田原氏によると、最新作の『KAI.g3 飛燕』では、多数の現役FPSゲーマーがテストプレイに参加しているとのこと。その結果をフィードバックすることで、多様なプレイスタイルに合わせた製品作りが実現したそうだ。


『電撃ゲームス』

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データ

▼『電撃ゲームス Vol.14』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2010年10月15日
■価格:650円(税込)
 
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