脱社畜ブログ

仕事観・就職活動・起業についての内容を中心に、他にも色々と日々考えていることを書き連ねていきます。

『働くことがイヤな人のための本』:働くことを真剣に哲学する

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あなたは「自分は、なんで働かなくてはいけないんだろうか」という疑問を抱いたことがあるだろうか。

 

世の中には、何の疑問も抱かず、働くことを当然のこととして受け入れることができる人もいる。しかし、受け入れられない人もいる。例えば僕は、定期的にこのことを自分に問うては、悶々と考え続けている。「純粋に生きるため」というのは、原始時代の狩猟採集とかならともかく、現代の労働だとなんだか違う気がする。「社会のため」というのは安直すぎるし、綺麗事に聞こえる。こうやって色々と考えているが、答えはまだ出ていない。

 

そして、今日紹介する『働くことがイヤな人のための本』(中島義道は、一度でも「仕事とは何なのだろうか」と問うたことがある人には、お薦めの本だ。

 

 

タイトルから勘違いされやすいのではじめに断っておくと、この本はニートやひきこもりに対して、「仕事にはこんな価値がある、だから働こう!」と単純に促すような本ではない。そんなNHK教育のような生ぬるい内容では決して無い。仕事というものを賛美するでもなく、貶めることもなく正面から捉え、あくまで真剣に哲学しようというのが、この本の立ち位置である。だから、説教や綺麗事がイヤだと毛嫌いしている人は、敬遠しないで是非手にとって見て欲しい。逆に、やさしい社会復帰系の本を求めているのであれば、本書を読むのはやめておいたほうがいいだろう。

 

本書は、20代ひきこもりの大学生Aさん、30代OLのBさん、40代サラリーマンのCさん、50代会社経営者のDさんと、中島先生の対話という形で進んでいく。「働くことに疑問を抱いている」という人は、大体このAさんからDさんの誰かに自分を重ねられるのではないかと思う。この4人と先生が、対話を通じて仕事とはなんだろうか、という問いを、どんどん深掘りしていく。決して綺麗事では済まさせない、真実を捉えようという真剣な姿勢がそこにはある。

 

ちなみに、本書には、明確な答えや結論のようなものがない。中島先生の書いていることが腑に落ちるという人もいるだろうし、なんだかよくわからないという人もいるだろう。僕にとっても、なんだかしっくりしない記述がいくつかあった。そして、最後まで何度か読んだが、未だに「働くというのはどういうことなのか」ということに対して、自分の解答を見つけることはできていない。

 

しかし、答えや結論が書いてないから、本書に価値がないということは決して無い。本書を読みながら、4人の登場人物と一緒にこの問題を考えることで、仕事に対する問題意識はより鮮明になるかもしれない。純粋に読み物としても、不思議な魅力が本書にはある。

 

転職サイトや就職サイトが押し出しているような、「仕事を通じて成長する!」といった紋切り型の仕事観による労働の押し付けを「なんだかなぁ」と感じている人は、ぜひ本書を手にとって見てほしい。あなたの問題はおそらく解決しないが、一歩先に進める可能性はある。