近頃、川で釣りをしていると妙な魚がよく釣れる。 そう、外来魚である。 最近では駆除が求められているようだが、ただ殺してしまうというのはあまり気分がよろしくない。 やはりここは食べてみるべきだろう。(平坂 寛)
入手編
漁師泣かせの外来魚
現在、関東地方の河川や湖沼には数種の外来魚が生息し、在来の魚類に取って代わってしまっている。 これらの外来魚には市場価値が全く無いため、ワカサギなどの在来魚を採って生計を立てている漁師の生活を脅かしており、深刻な問題となっているのだそうだ。 しかしいずれの魚も本来は食用目的で持ち込まれたものなので、先入観を捨てて調理法を工夫すればそれなりに美味しく食すことができるはず。 様々な料理に挑戦して試食し、彼らの有効な利用法を探りたい。
楽しい!外来魚釣り
そうと決まればまず外来魚を入手しなければ始まらない。 先ほども述べたとおり、売り物にならない外来魚たちは基本的に魚屋やスーパーで購入することはできない。自分で捕まえるしかないのである。 というわけで近所の川へ釣竿を持って出掛けた。
釣りをする川はできるだけ市街地や田畑から離れたきれいな場所を選んだ。口に入れるものを採るのだから、排水が流れ込んでいる場所は極力避けたかったのだ。
豊かな自然に目を休ませながら竿を出していると…、
開始数十分で最初の魚の反応。幸先がいい。
記念すべき一種目は北米原産のブラックバス(オオクチバス)だった。 と、まあ釣れてくれたのはありがたいのだがいくらなんでもこれは…
本来なら逃がしてやりたいサイズだ。でも相手は外来魚、容赦はしない。ここは心を鬼にして接しよう。
こんな具合に僕は基本的に日頃からアンチ外来魚の立場を貫いているが、唯一つ理解していただきたいのは外来魚に罪はないということだ。悪いのはあくまで彼らを日本に連れてきた人間なのだ。
…野外で、そこにいてはならないはずの外来種を見つけると、どうしてもこんな具合に湿っぽい思想に浸ってしまう。 嫌だ嫌だ。人間とは罪深い生き物だ。などと思っていると…
OH! BIG FISH COMING!! 来た来た来た来たー! ヒャッホゥ!やったね!俺!!
一気にテンションが上がる。 数十秒前まで深刻そうな顔で外来種問題を憂いていた男だとは思えない。もはやただの釣りバカだ。あまりの二面性に自分が信用ならなくなってくる。
魚釣りには魔力があると思う。特に魚が鈎に掛かっている間は余計なことが考えられなくなるのだ。 とにもかくにもめちゃくちゃむやみにめっぽうやたらと楽しいのである。 その魅力はターゲットが外来魚であっても何ら変わることはない。
その後、ブラックバス数匹を追加したのちにルアーを二回りほど小さなものに交換する。狙う魚を変えるのだ。
次なるターゲットはこの魚。鰓(gill)に紺色の点が付いていることからブルーギルと名付けられたそうだ。この魚もブラックバスと同じく北米原産。
しかしこの魚、ぼんやり思索に耽りながら釣っていてもお構いなしにポンポン釣れてくる。大きな魚をドカンと釣るのもいいが、こうして小さい魚をたくさん釣るのもそれはそれで楽しいものだ。
10尾ほど釣りあげたところで仕掛けを変える。今度はサンマの切り身で餌釣りだ。素直にサンマを食べたい気もするが。
釣れたのはやはり北米出身のアメリカナマズ。チャネルキャットフィッシュとも呼ばれる。外来魚としては他の2種よりも馴染みが薄いかもしれないが、関東地方では近年すさまじい勢いで数を増やしている魚だ。
こうして外来種3種が揃った。あとは食べるだけだ。釣れた魚をその場で〆て自宅へと持ち帰る。