「重要容疑者」裁判・矢野側尋問につっこみを入れてみる(2)


1月9日付〈「重要容疑者」裁判・矢野側尋問につっこみを入れてみる(1)〉に引き続き、福間智人弁護士(中田総合法律事務所NPO法人「林檎の木」理事)が矢野穂積「市議」の代理人として柳原さんに対して行なった尋問の内容を検討していきます。


福間 原告と朝木市議の「諍い」を見た人はいるのですか。
柳原 現に見た人はいません。が、これまで述べたことをもとに、合理的に普通に考えて導き出されるということです。
福間 原告が明代を叱責していたのを現認した人はいないのですね。
柳原 裸足で飛び出す状況ですから、それにふさわしい何かがあったと考えられます。素足で飛び出して転落現場に向かったのですから。
〔中略〕
福間 朝木明代市議を担当した瀧野医師の証言です。警察にも聞かれたが、ストッキングが破れたかどうか、そこまでは覚えていないと言っています。瀧野医師がわからないという回答ですから、ストッキングは破れていたかどうかわからない。
井田 異議があります。誤導です。警察が確認したのですから。
〔中略〕
裁判長 この部分だけではわかりませんね。


このあたりについては東村山市民新聞」2009年12月19日付更新(リンク先の文末資料1参照)で騒いでいました(現在は〈決定的事実がついに判明〉に移植)。


 朝木明代議員遺族や矢野議員は、病院に搬送された朝木明代議員の救急救命を担当した防衛医大病院担当医師に、事件後、朝木明代議員がストッキングをはいていたか、足の裏がどうなっていたか、ストッキングは破れていたか、を詳細に質問し確認しました。ところが、担当医師は「ストッキングは自分達が脱がせました」と認めた上で、「それは、警察にも聞かれたんですけれど、そこまでは覚えていないですね」とはっきりと語っていますし(録音あり)、このことは法廷でも間違いないと証言しています。つまり、東村山警察は朝木明代議員がはだしであるいたかどうかわからなかったため、この担当医師に聞き出そうとしたのですが、残念ながら、ストッキングを脱がせた医師らは朝木明代議員の足の裏が汚れていたかどうかは、覚えていなかったのです。
 しかも、ストッキングを脱がせたという事実を覚えていた担当医師が特に記憶してないところをみると、顕著に「はだしで歩いた」などという痕跡があったと推定することはできないと考えるのが常識的です。


「朝木明代市議を担当した瀧野医師」(福間弁護士)というのは「病院に搬送された朝木明代議員の救急救命を担当した防衛医大病院担当医師」のことと思われますが、鑑識医ではなく、目の前の患者の治療に全力を尽くすべき救急救命医がストッキングの破れや足裏の汚れについて覚えていなかったからといって、
「顕著に『はだしで歩いた』などという痕跡があったと推定することはできないと考えるのが常識的です」
などと主張するのは無理筋というものでしょう。なお、『民主主義汚染』では、朝木明代の死因に関する「判断を左右する重要な鑑識材料」のひとつに、「ストッキングの足の裏側が一部破れており、ストッキングの破れの部分と足裏の汚れが一致していた」ことが挙げられていたことが報告されています(143ページ)


福間 乙18号証。千葉さんが作成した準備書面です。p9最下部に警察が転落したことを否定する趣旨の発言があります(?)。甲18号19号証で瀧野医師は、須田刑事から、「朝木市議であることはマスコミに隠しておくように」と指示を受けたと言っていますね。瀧野医師は知っていますか。
柳原 具体的に瀧野医師がどう言っていたか詳細に記憶していませんが、名前は覚えています。


乙18号証が何の書面を指しているのかはわかりません。刑事が医師に「朝木市議であることはマスコミに隠しておくように」と指示したことについては、「東村山市民新聞」の2009年12月19日付更新(リンク先の文末資料2参照)等でも触れられていました(現在は〈決定的事実がついに判明〉のページに移植)。


▼副署長チバが事件の捜査を指揮した東村山警察は、朝木明代議の死亡が確認された直後に、防衛医大病院に検死に刑事らを派遣した。派遣されたのは朝木明代議員と面識のある刑事課係長刑事須田豊美だったが、須田は病院担当医師に「朝木さんであるということは、マスコミなんかの問い合わせがあっても黙っててくれ」(録音あり、法廷でも認める証言)と口止めをした。もちろん、須田はこの病院で死亡したのが朝木明代議員であることは知っていたが、遺族側にも全く知らせず,変死体の扱いで通そうとした。しかし,変死体であればあるほど、身元確認は必死に警察がするものだと、病院側は証言している。少しでも朝木明代議員が防衛医大病院で死亡した事実を遺族側が知ることを遅らせようとしたのである。そして、遺体を早く火葬にするよう、つまり最大の証拠を遺族側に見せないようにしていたのである。まだまだ、おかしな事実はある。


「口止め」の件については、『民主主義汚染』で次のように説明されています。

 ・・・午前一時過ぎ、病院に到着した刑事は、運び込まれた女性の死亡が午前一時ちょうどに確認されたことを知る。霊安室に駆け込むと、遺体はなんとなく朝木明代に似ている。矢野からの妙な電話と中年女性がビルから転落したらしいという話から、刑事は「朝木市議ではないか……」――とつぶやいた。しかし、女性は身元を証明するものは何も身につけておらず、まだ対外的には遺体が朝木明代だとは断定できなかった。だから、刑事は遺族が確認するまでこのことは口外しないよう防衛医大病院の〕医者に念を押した。警官であれ赤の他人が、ケガ人の身元を確認するのは容易ではない。写真でなら見たことがあるとか、前に一、二度見かけたことがあるという程度では、一人の人間の顔は確認できない。重傷のケガ人や死体となれば、どうしても普通の顔をしているわけではないからである。また、間違った情報が流れれば混乱の元になるからだ。・・・
〔中略〕
 矢野が防衛医大に到着したのは、午前三時ごろだった。しかし、不審死の場合、遺体の検案が終わるまでは、たとえ遺族であろうと、遺体と対面することはできない。遺体になんらかの手が加えられる可能性もないとはいえないからである。これは、遺体が明代である可能性が高いからという理由ではなく、ごく一般的な措置なのだ。矢野や遺族らは、遺体になぜすぐ会わせないのかと騒いだという。しかし、検案が終わるまでは、会わせるわけにはいかなかった。
『民主主義汚染』139〜141ページ、太字は引用者=3羽の雀)


また、前掲引用記事の末尾で触れられている「火葬」云々については荒唐無稽としか言いようがありませんが、これに関連する話題は前に少し出ていたので、ついでに言及しておきます。

福間 上腕内側部に痕があり、他殺の相当性を認める判決が出たことを知っていますか。
柳原 知っておりますが、そうでない判決の方が多いんじゃないですか。


福間弁護士が言及しているのは、
「少なくとも被控訴人矢野穂積「市議」〕が本件のアザが他殺を疑わせる証拠となるようなものであると信じたことについては相当の理由があるというべきである」第1次FMひがしむらやま事件・東京高裁平成19年6月20日判決)
「控訴人ら矢野穂積朝木直子両「市議」〕が本件転落死につき他殺の可能性を示す証拠があると信ずるについて相当の理由がなかったとはいえないというべきである」『東村山の闇』事件・東京高裁平成21年3月25日判決)
等の判決だと思われます。


他方、「創価問題新聞」事件(東京高裁平成21年1月29日判決)では、司法解剖鑑定書記載の本件損傷〔上腕部のアザ〕の存在により本件転落死が他殺であることが推認される」という矢野・朝木両「市議」の主張を排斥して
「本件転落死が殺人事件であると認めることは到底できず、他にこれを認めるに足りる証拠はない」
と認定されるとともに、
「本件損傷の存在から、本件転落死が他殺であると信じるについて相当の理由があったということはできない」
として相当性も否定されました。


このあたりの主要資料は、判決抜粋も含めて「東村山市民新聞」の迷宮〈上腕部の皮膚変色痕(アザ)と司法解剖鑑定書〉にまとめてありますが、その後の西村修平・街宣名誉毀損裁判でも、地裁高裁とも、上腕部のアザに関する西村修平の、つまりは西村が依拠した矢野・朝木両「市議」の主張を排斥し、「他殺」説の真実性・相当性をともに否定しています。


さらに対創価学会街宣名誉毀損裁判では、矢野「市議」らが依拠するいわゆる鈴木医師意見書について、
上記創傷がいかなる凶器等により形成されたのかを特定するに足りる証拠もないのにもかかわらず、上記皮下出血が手指によるものであるとしている点においてそもそも疑問があるものであって、合理的な根拠を欠くといわざるを得ないものである
とばっさり切り捨てられてしまいました。


矢野・朝木両「市議」はこれらの判決を一切無視し、紙版東村山市民新聞」168号(2010年12月15日付)第4面欄外でも、
〈★「潮」「タイムス」「千葉副署長」第1次FMひがしむらやま事件判決で、他殺がはっきりした朝木議員殺害事件。犯人逮捕へ御協力を。〉
などと平気で宣伝し続けているわけです(2010年9月3日付〈遺族(朝木直子)と元同僚(矢野穂積)にさえスルーされる中、新宿で星に願いをかけたクロダイくん(行政書士・黒田大輔)〉等も参照)。


さて、次で最後です。


福間 千葉さんが事務所の鍵の発見状況を書いていますね。事件当時は公表されていなかった。鍵はおしぼりに入れられていた。警察犬が捜査したあと9月4日に届けられた。あなたは知っていますか。
〔中略〕
柳原 何を言いたいのかわかりませんが、鍵が見あたらず、警察犬がまわったあとの時期に、ビルの2階に鍵があったことは知っています。
福間 そうです。これは、第三者が関わっている殺人の証拠だと思いませんか。
柳原 まったく考えません。草の根事務所にはバッグがありました。鍵はその中にあったのでしょう。
福間 そうすると、その鍵は事務所から現場に誰が置いたのですか。
柳原 わかりません。見ておりませんから。〔中略〕警察犬の捜索が終わった後に、現場で発見されたのですから、合理的に考えれば誰かが置いたということでしょう。


この時、傍聴席の朝木直子「市議」は「千葉が最近、言いだした」とつぶやいていたそうですが、これは西村修平が完全敗訴を喫した街宣名誉毀損裁判で出てきた話です。東村山市民新聞」でも一時大騒ぎしていました。関連ページはまとめWikiの第6回口頭弁論(2009年11月11日)の項にまとめてありますが、とりあえず以下の記事を参照。


判決ではもちろん、
「本件鍵束が本件転落死事件後に行われた現場付近の捜索後に本件マンション2階階段において発見されたこと・・・は、前記認定のとおりであるが、そのことから直ちに亡明代を殺害した犯人が本件鍵束を同所に置いたという事実が推認できるわけではない」第1審
「本件鍵束の発見状況についてもそれ以外の状況が全く明らかではない下では、・・・計画的な殺人を裏付ける証拠とすることはできない」控訴審
として、鍵束が「第三者が関わっている殺人の証拠」(福間弁護士)という主張は一蹴されています。この裁判で西村を全面的に支援した矢野「市議」らおよびその代理人である福間弁護士は当然これらの判決についても承知していると思われますが、それでなぜこのような質問が平気でできるのでしょうか。


以上、長々と見てきたように、1月7日付エントリーで指摘したように、「不利な事実は公表せずに一方的に自分に都合のよいことを公表」する「草の根」の体質をまさに象徴する尋問だったと言えるでしょう。


〔この記事は1月10日午後にアップしたものです。〕