日本で起きた大地震と核危機によってサプライチェーンの混乱が生じ、人々が知恵を結集して苦闘する中、野村證券は18日、日本の技術系企業各社の施設の状況を詳細に述べた報告書を発表した。

Ars Technicaはこの文書を入手したが、今回の巨大災害の後、技術業界を元の稼働状態に戻すことに伴うさまざまな難題をかいま見ることができる。

業務用電子機器および半導体部門は、地震によってかなりひどい打撃を受けた。企業ごとのまとめは以下に述べるが、その前に、特に2つの分野に注目するとよいだろう。1つはデジタルカメラ、もう1つはプロセッサーのトランジスタをさらに小型化するために米Intel社が予定している移行だ。

デジタルカメラについては、地震によって供給に影響が出る可能性を示す多数の詳細が報告書に記されている。福島にあるパナソニックの施設ではデジタルカメラを製造しているが、複数の従業員が軽症を負い、余震もあって敷地が立ち入り禁止区域に指定されている。

キヤノンは、影響を受けるデジタルカメラ・メーカーの1つに挙げられ、リソグラフィー装置とデジタルカメラのレンズの施設が「比較的大きな損傷」を受けている。しかし報告書では、一部の生産を別の場所に移すことが可能だとしている。(インクジェット・プリンターのヘッドを生産する、福島にあるキヤノンの施設も同様。これ以外のキヤノンの2つの工場も操業を停止している。)

一方で、大きな問題があるのがニコンだ。報告書に記載された合計5ヵ所の施設が操業停止中とある。ニコンを代表するデジタル一眼レフ製品を製造する仙台の施設について、報告書では3月14日(日本時間)の時点で「建物の一部が損傷、操業停止。現在損傷の程度を調査し、再開スケジュールを検討中」としている。

ニコンの工場閉鎖は、カメラファンにとって大きな問題になるだけではない。この閉鎖によりIntel社は、計画している22nmへの移行を延期する可能性があると推測される。

閉鎖されたニコンの施設のうち3ヵ所は、リソグラフィー装置を製造している。これは、Intel社のような半導体メーカーが、チップ上にトランジスタをエッチングするために使用する高性能レンズ・システムだ。ニコンはIntel社の45nm対応工場の一部と32nm対応工場すべてで使用されるリソグラフィー装置を製造していた。ニコンは、来たるべき22nmへの移行に向けたリソグラフィー装置の一部を製造する契約を結んだと伝えられている。

Intel社の公式回答によると、同社は「引き続き日本の状況を注視する」という。Intel社はArs Technicaに対し、「弊社の直接の供給元を対象に行なった予備評価の結果は比較的肯定的で、現時点では、今回の事態を妥当な形で切り抜けてくれると信じている。電力と輸送インフラにおける難題が発生しており、このことが供給元各社に与える意味を引き続き注視し、判断していく」と述べ、さらに次のように続けた。「弊社の方針として、特定の供給元や弊社との関係についてはコメントしない」

ソニー、東芝、TIをはじめとするその他の工場閉鎖

東芝では、2ヵ所の半導体製造工場が稼動不能になっている。そのうちの1つはかなり被害が大きいと見られるが、もう1つは今週にも再開準備が始まりそうだ。

富士通では5つの工場が稼動不能となり、先週末から損傷の評価を開始したばかりだ。デスクトップ・パソコンやサーバーを製造するもう1つの工場も稼動不能となり、そこでの作業は一時的に別の場所に移されている。

テキサス・インスツルメンツ(TI)では、電源用アナログ回路などを製造する2ヵ所の工場が稼動不能となった。そのうちの1つは5月まで稼動できそうにないが、もう1つは4月中旬までに再び稼働する見込みだ。

日立製作所では5ヵ所が稼動不能になったが、電力が復旧したため、損傷の評価を始めている。富士電機は比較的無傷で難を逃れたようだが、三菱電機は、電気通信機器を製造する工場で操業を停止している。

消費者向け電子機器および家電部門も、地震による被害を受けており、パナソニックでは5つの施設で操業が停止している。

シャープの液晶テレビ工場は比較的状態が良く、大きな損傷は報告されていない。工場の操業停止もなく、計画停電による操業時間の短縮だけが行なわれている。

報告書に挙げられている消費者向け電子機器メーカーのうち、最も大きな被害を受けたのがソニーだ。7ヵ所の工場で生産活動が停止または(停電により)短縮されている。これらの工場では、磁気テープ、ブルーレイ、半導体レーザー、DVDプレーヤーなどさまざまな製品を製造している。充電式リチウムイオンバッテリーを製造する2ヵ所も被害を受けた。

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Jon Stokes(Ars Technica)

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