前回コラムでは、最近中国で出版した拙書『中国よ、私は誤解したことがあったか?』(中国,我误解你了吗?)の全国プロモーションツアーのために、中国西部の直轄市重慶に赴いた際のエピソードを紹介した。

日中関係が大変な時にオーストラリアに逃げるな!

シドニーで恒例マラソン大会、7万人以上が参加

シドニーマラソン〔AFPBB News

 尖閣諸島問題を巡り、日中が火花を散らすなか、反日感情が再び台頭している。重慶でも「それなりの仕打ち」を受けるだろうと懸念していたが、実はそうでもなかった。肩の荷を降ろした、と結んだ。

 その後、筆者は9月14日―23日までオーストラリアに滞在した。シドニーマラソンに出場するためだ。

 中国のネット掲示板などでは、「加藤さん、日中関係が大変な時に海外に逃げるなんて卑怯じゃないか!」「結局は臆病者だったか、失望した」などのコメントが多々見受けられた。

 9月18日、北京で挙行された5年ぶりの反日デモを含め、事態を現場で目撃できなかったことは心残りだ。

 中国国民の筆者への罵声が収まりそうにない状況から、(1)シドニー行きは3カ月以上前から決まっていた(2)3カ月前にこのタイミングで尖閣が荒れることを予測するキャパシティーが筆者にはなかった(3)決して逃げているわけではないく、コラムなどで継続的に言論を発表している、の3点を自らの中国語版ツイッターで声明として掲載した。

北京に戻ると空港には10人を超える記者が出迎え

 9月24日6時。シドニーから11時間、ついに北京空港に降り立った。拠点とする場所に戻ってきた。長旅でクタクタになった体を宥めながら、出口を過ぎると、10人を超える記者がそこで待っていた。

 「ちょっと待ってくれ」

 日頃から新聞やテレビで言論活動を行っている筆者にとって、自宅付近で張られることには慣れている。ただ、さすがに今回は驚いた。「なんでこの時間に北京に戻ってくること知ってんだよ?」

 途方に暮れつつも、1時間ほどかけて、グループ取材に丁寧に答えた。国内が反日感情で覆われている時、記者だろうが、一般民衆だろうが、中国人を乱暴に、粗末に扱ってはいけない。誠意を見せることがすなわち保身になる。