そもそもソーシャルメディアって何? mixi、GREE、Twitterの3社が議論


 「ソーシャルメディアサミット2011」が15日に都内で開催された。主催はアジャイルメディア・ネットワーク株式会社(AMN)。ブログやソーシャルメディアを活用したマーケティングで活動する同社の設立4周年記念を兼ね、申し込み数で500人以上が集まったという。

 「日本のソーシャルメディア」「日本でのFacebook」「企業のソーシャルメディア利用」「ソーシャルメディアが何を変えるのか」の4つのテーマに関して、それぞれの分野で活躍するパネリストを集めたパネルディスカッションを実施。それぞれ、AMN代表取締役であり著名ブロガーである徳力基彦氏が話を聞き出すイベントとなった。

「ソーシャルメディアって何なのか、自分自身が知りたい」

 徳力氏は開会の挨拶でまず、「そもそもソーシャルメディアって何なのか、自分自身が知りたいので開催した」と問題を提起した。

アジャイルメディア・ネットワーク株式会社の徳力基彦氏

 「ソーシャルメディア」という言葉は最近注目を浴びているが、新しい言葉ではない、と氏は説明する。徳力氏も2006年に自身のブログで「最初に、CGMと呼ばずにソーシャルメディアと呼ぶべきだったのかもしれない」というエントリーを書き、「消費者もプロも企業もみんな巻き込んで、『ソーシャル』な『会話』や『コミュニケーション』が発生することが本質」と論じている。

 当時は、ソーシャルメディアという言葉は流行らないだろうと思いながら書いたというが、Googleトレンドを見ると、2010年から急激に使われるようになってきている。徳力氏は、2005年のブログブーム、2006年のmixiブーム、2007年のSecond Lifeブーム、2008年のバイラルビデオブーム、2010年のTwitterブーム、そして2011年のFacebookブームの兆しを並べ「ソーシャルメディアも流行語で終わるのか、と自信がなくなる部分がある」と自問自答。改めて「ソーシャルメディアって何だろう、と今日考えたい」と語った。


Googleトレンドで見た「ソーシャルメディア」という言葉の使われ具合各年のトレンドをふまえ「ソーシャルメディアも流行語で終わるのか」と自問自答

サービスごとにつながり方に違い

 1つめのパネルディスカッションは「日本のソーシャルメディアの未来はどうなるのか」と題し、mixi、GREE、Twitter(デジタルガレージ)の3社からそれぞれパネリストが登壇。自社サービスやソーシャルメディア全体について議論した。

 mixiを運営する株式会社ミクシィの辻正隆氏は、特徴として「心地のよいつながり」を挙げた。Twitterが有名人などともつながる数百人規模の「インタレストグラフ」、Facebookが同僚・友人を中心とする150~200人程度の「パブリックグラフ」であるのに対し、mixiは親しい友人・知人との数十人とつながる「プライベートグラフ」だとして、「ちょうど年賀状を送るぐらいの人数」と説明した。

 その特徴が現れているマーケティング事例として、2010年12月1日から24日まで展開したオンラインイベント「mixi Xmas 2010」を紹介した。自分のページにくつ下を飾り、マイミクと互いにベルを慣らし合うことでポイントがたまるというものだ。計267万人が集まって、人気ゲームのサンシャイン牧場に匹敵する広がりとなり「Facebookに比べてもグラフの“濃さ”を立証できたと思う」と語った。

株式会社ミクシィの辻正隆氏Twitter、Facebook、mixiのソーシャルグラフの違い

 GREEを運営するグリー株式会社の伊藤直也氏は、「コミュニケーション量が最大化されるのが幸福である、という考え」と説明。「“宿題終わった”“お疲れ”といったコミュニケーションが多い」と紹介し、価値のある情報もいいが、そうしたチャット的なコミュニケーションがを数多くやりとりされていることが受け入れられていると語った。

 その流れで同社のゲームについて、「新しいゲームをどこから知るかというと、友達からのクチコミが多い」というデータを紹介。16日間で100万人のユーザーを集めたという「無限マラソン」を例に、「こういうシンプルで説明のいらないゲームが、クチコミに乗りやすくユーザーを集める」と語った。それを受けて徳力氏が「同じことがゲーム以外でも起こりうるか」と質問すると、「GREEでアバターがなぜ収益になるかというと、コミュニケーションがあるから」と答え、「海外ではアバターはあまりビジネスになっていないが、同じように展開できるかどうかが分かれ目」と、今後について語った。

グリー株式会社の伊藤直也氏GREEの会員数の推移

 プライベートコミュニケーション色の強いこれら2つのサービスに対し、Twitterの事業を日本で展開する株式会社デジタルガレージの佐々木智也氏は、「Twitterはコミュニケーションにもなるしメディアにもなる。有名人のアカウントが増えたので、自分では発信せず読むだけの用途のユーザーも増えた。われわれはそのすべてに対応したい」と特色を説明した。

 グリーの伊藤氏はそれに対して「Twitterはパブリックなうえ、一方向フォローでサービスからユーザーをどんどん勧められる。一方でGREEはプライベート。両者でソーシャルグラフの作られ方が違い、使い分けになるだろう」とコメント。佐々木氏も「Twitterではソーシャルグラフも独特で、関心グラフが凝縮されていく形になる」と答えた。

株式会社デジタルガレージの佐々木智也氏Twitterの2011年の目標

「ソーシャルメディアでは人が軸になる」

 徳力氏は「昔からゲームセンターでコミュニケーションしていたじゃない」と親に言われたという話をマクラに、「ソーシャルメディアは何が違うのか、これからの私たちの生活をどう変えていくか」と問いを投げかけた。

 グリーの伊藤氏は、「インターネットは、誰が言ったかより何を言ったかが重要といわれるが、ソーシャルメディアで、何を言ったかより誰が言ったかが重要になってきている」と、コンテンツにおいて人が軸になっていくことを指摘した。

 ミクシィの辻氏も、友人が勧めた本を買ってみるなど、友人・知人関係が消費行動に影響することを挙げ、「SEOからSGO(Social Graph Optimization)へ」と、企業サイトがソーシャルグラフに最適化する必要性を説いた。

 デジタルガレージの佐々木氏も、「Twitterでは、企業ユーザーが情報を発信したり、お勧めのユーザーを提案したり、人を軸にして新しい発見がある」と、Twitterの特徴を語った。

 最後に、徳力氏の「これから、こういう未来を作りたいという目標は?」という質問には、ミクシィの辻氏は「今年をソーシャルメディアマーケティング元年にして、大きなものにしていきたい」と回答。グリーの伊藤氏は「スマートフォンの世界に入るとグローバルになる。Facebookと同じことをしても勝負にならない。GREEではエンターテインメントがカギになる」とコメント。デジタルガレージの佐々木氏は「もっとユーザーに楽しんでいただきたい。雪とか交通事情も流れてきて便利だけど、Twitterで社会が変わったということもあっていい。いずれにしても、世の中の役に立つツールになっていけば」と語り、パネルディスカッションを終えた。


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(高橋 正和)

2011/2/16 11:56