TBSテレビは、2010年12月2日の情報通信審議会の作業班(情報通信技術分科会 放送システム委員会 ホワイトスペース活用放送型システム作業班)で、7月から8月にかけて実施したエリアワンセグ実験について報告した。TBSテレビは、2010年7月30日にホワイトスペース特区の先行モデルの対象に選ばれており、実験試験局の範囲内で今回の実験を行った。報告を行った技術局担当局長の本間康文氏は、実験で浮き彫りとなった課題を順番に挙げた。

 TBSテレビは、「地域活性化のためのビジネスモデル実験の推進を予定しており、赤坂で成功事例をつくり、それを全国の活性化につなげていきたい」「地域活性化のために実験試験局であっても、突っ込んだ情報を提供していきたい」という。これらを実現するうえで、実験試験局の制限事項がビジネスモデル実験の実施の妨げになると指摘した。

 例えば実験試験局は、「原則、アナウンサーによる生放送が禁止されている」という。「地域放送では一定の生放送が必要になる。考慮していただきたい」と主張した。さらに、放送中に映像や音声で固有名詞(例えばレストランの店名など)を視聴者に示すことも禁止されているほか、CM挿入による広告放送も実施できない。「従来の広告放送モデルがそのままエリアワンセグのビジネスモデルになるとは考えにくいが、新たな広告モデルを探る必要がある」として、様々な可能性の模索に向けて実験試験局免許の運用緩和を要望した。

 視聴面では、不特定の人が受信できない点が足かせになっている。免許者指定の受信機での実施が規定されており、この条件を満たすには、最低でも受信者の許諾を得なければならない。「スタッフが説明をしたり許諾画面を表示したりする必要がある。ふらりと通りかかった人が試しに受信する、ということになりにくい。視聴者数を増やすのが難しい」という。

 エリアワンセグを受信するまでの手順が複雑な点も、視聴のハードルとなっている。携帯電話機などのワンセグ端末の再スキャン機能を使い、チューニングをしないとエリアワンセグの周波数を受信できない。エリアワンセグの受信機能をよく知らない来場者には、「説明員がつきっ切りで補助しなければならないケースもある」という。「フェリカリーダーと組み合わせて簡易選局を実現している携帯端末があるが、我々は携帯端末自体の選局機能を向上したほうが便利だと思っている」と述べた。

 ネットワークIDにエリアワンセグ用のものが一つしかない点も課題として挙げた。今後、ホワイトスペース特区の対象となる事業者など、エリアワンセグ事業者が増加した場合、隣接地区で実験が行われる可能性が大きくなる。

 今回の会合では、フジテレビジョンもエリアワンセグ実験の結果を報告した。同社はエリアワンセグの電波と既存の放送波の干渉という視点から、今後の課題について述べた。例えば、エリアワンセグが地上デジタル放送波に干渉を与えた場合について、「エリアワンセグの送信を即時停波できるような制度的手当てが必要になる」とした。このほかに、エリアワンセグの送信システムの構築について、「放送波への干渉を最低限にするには、送信アンテナを低い場所に設置するなどの工夫をしたり、小電力による複数アンテナを用いてサービスエリアをカバーしたりすることが有効」と述べた。