南海、空港線乗客6年で倍増
訪日客取り込み 次は難波
南海電気鉄道は31日、関西国際空港に乗り入れる空港線で、2017年4~12月期の乗客が前年同期に比べ11%増の1122万人となったと発表した。訪日客の利用が増え続け過去6年で2倍強に増えた。今秋には難波で大型複合ビルを開業する予定で、好調な空港線を企業としての成長につなげるには乗客の周辺ビジネスへの取り込みが課題になる。
空港線は泉佐野駅(大阪府泉佐野市)から関空駅を結ぶ路線。旅客の7割が定期券以外で、大阪市内のターミナル難波駅に向かう乗客などが利用する。訪日客は関空から、リムジンバスなどを除くとJR西日本とのどちらかを利用することが多い。
乗客数は東日本大震災が発生した11年が直近で最も少なく540万人だったが、訪日客に支えられ1割前後の増加が続いた。急行の1日あたり運行を6年前より50本増やし、特急「ラピート」も増便、搭乗率は31%から62%に上昇した。
南海は大阪府南部の人口減少に直面しているが、空港線の乗客数の伸びは同じ時期の関西の私鉄では突出している。阪神電気鉄道が17%増で、近畿日本鉄道は2%増にとどまる。関空と同様に訪日客が急増した成田空港(千葉県)を発着する京成電鉄の路線(8割増)よりも、空港線の伸びが大きい。
17年4~12月期は空港線の旅客収入は74億円で、鉄道全体の17%を占める。8%だった6年前に比べ南海の経営での位置づけが高まっている。
同日発表した連結売上高は前期比1%減の1639億円、営業利益は2%減の257億円だった。このうち鉄道など運輸業はいずれも5割弱を占め、関西の大手私鉄4社ではもっとも比率が高い。南海には京都、大阪、神戸などの大都市間を結ぶ路線がなく、沿線ビジネスが小規模だったためだ。
■大型ビルや高架下開発
南海では今後、難波駅周辺の事業てこ入れが必要になる。関西では近鉄グループホールディングスは阿部野橋駅(大阪市)に「あべのハルカス」を建設した。阪急阪神ホールディングスは梅田駅(同)で不動産開発を進める。対してミナミは多くの訪日客でにぎわいながら、南海はターミナル開発に出遅れてきた。4815億円(17年末時点)の有利子負債を抱え財務体質に課題があるのが理由の一つだ。
特に商業施設は訪日客をうまく取り込めていなかった。「なんばパークス」と「なんばシティ」の売上高は16年に大幅改装するまでほぼ横ばい。16年度は12年度に比べ6%増えたが、難波駅に隣接する高島屋大阪店は同じ期間に8%伸ばしている。
南海は今秋、同駅西隣に地上30階建ての大型ビル「なんばスカイオ」を竣工する。オフィス以外に外国人が医療サービス目的に訪れる「医療ツーリズム」の拠点を設ける。人間ドックなどを備えた病院が入居する。
さらに難波の消費者を南側に取り込む。隣の今宮戎(えびす)駅までの高架下には飲食店や宿泊施設を導入。新今宮駅の近くには外国人向けの就労支援拠点も設ける予定だ。