法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』世界はダメ男ダメ女で回っている

最後のコーナーで、イギリスの生活保護ドキュメンタリー『給付金とプライド(On Benefits and Proud)』を紹介していた*1。それが生活保護受給者への偏見をあおるだけの紹介で、感心できなかった。
生活保護の必要性については、本当に必要な受給者に迷惑だと、ドキュメンタリー紹介後にコメントしあうのみ。不当な需給があるとしてドキュメンタリーに登場したのは全体の一部でしかないことや、そもそもドキュメンタリーで描かれた受給者が本当に問題なのかどうか、きちんと考察しようともしていなかった。


たとえば母子家庭の受給者がネイルしたり、給付日に食料品を買いに行く姿。いかにも受給者は生活に楽しみをおぼえてはいけないかのような描写。
ケーブルテレビを視聴する受給者も登場する。もともと偏見をあおるような構成のドキュメンタリーだったらしいが*2、イギリスでは基本チャンネルが5つだけで、衛星放送やケーブルテレビが一般的に視聴されているといった番組解説も必要だろう。
さらに「給付金の女王」と紹介された、年間に約1000万円を給付される女性。しかし子供が11人もおり、家事にいそがしくて仕事に行く時間もないことは、さすがに指摘されていた。子供1人につき年間100万円以下と思えば、それほど余裕のある状況とは思えない。
何人かの受給者が新居を求めていたことについても、イギリスでは低所得層まで住宅補助が制度化されていることが説明されていなかった。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/inoueshin/20140712-00037331/

現在は、全世帯の2割ほどがこのハウジング・ベネフィットを受けています。生活保護受給の場合には家賃の100%、それ以外の低所得者には家賃の8割から9割を地方自治体が支給しています。


ちなみに、2013年のチャンネル5の『On Benefits and Proud』につづき、2014年にはチャンネル4が『Benefits Street』という番組を放映したという。
アナキズム・イン・ザ・UK 第16回:貧困ポルノ  | Benefits Street | ele-king

元ヘロイン中毒者や若い無職の子持ちカップル、シングルマザーといった「いかにも」な登場人物たちが生活保護受給金で煙草を吸ったりビールを飲んだり、犯罪を行ったりして生活している姿をセンセーショナルに見せ、国民の怒りを扇動している。と同番組は非難され、無知な下層民がスター気取りで自分たちの貧困を晒していると嫌悪された。

より過激な番組だったらしいが、紹介しているブレイディみかこ氏は下記のような指摘をおこなっている。

 一般に、虐待や養育放棄などの不幸は閉ざされた空間で起きる。だから乳児や幼児のいる家庭を孤立させてはいけない。というのは、幼児教育のいろはである。ましてや食うにも困っている人々が子連れで閉じ篭っている状況はとても不健康だ。

また、下層階級を生みだしたサッチャー政権と、それを生活保護による飼い殺しが固定化した問題も指摘している。

*1:番組バックナンバーには掲載されていない。http://www.ntv.co.jp/marumie/backnumber.html

*2:病気で働けなくなったことをきちんと説明していないという批判もあるらしい。原題で検索すると、それらしきブログやサイトがいくつか見つかる。http://www.huffingtonpost.co.uk/nick-stephenson/on-benefits-and-proud_b_4100782.html