3×3安倍内閣

「もしもし、アベですが…」「どちらのアベさんですか?」 入閣待機組の悲哀続く…

改造内閣が発足し、記念撮影に臨む安倍晋三首相(手前中央)と新閣僚ら=3日、首相官邸(松本健吾撮影)
改造内閣が発足し、記念撮影に臨む安倍晋三首相(手前中央)と新閣僚ら=3日、首相官邸(松本健吾撮影)

 首相の安倍晋三が内閣改造・自民党役員人事の構想を練っていた7月25、26両日、自民党志帥会(二階派)は、大阪市のホテルに総勢2千人を集めて研修会を開いた。「数の論理」を信奉する二階派会長で党幹事長の二階俊博らしい示威行動といえる。

 25日夜、ホテルの一室に、衆院当選7回の山本拓と平沢勝栄、同6回の桜田義孝と福井照の4人がひそかに集められた。いずれも適齢期ながら閣僚経験がない入閣待機組だ。

 奥には二階と、側近の幹事長代理の林幹雄が座っていた。林は「今回わが派からは4人を推薦しました。あとは首相の判断です」と告げた。

 4人は「お任せします」と頭を下げた。二階は無言で深くうなずいた。

 実は安倍には、派閥推薦の入閣待機組を受け入れる余裕はほとんどなかった。内閣支持率が急落する中での内閣改造。信頼を取り戻す「仕事人内閣」を発足させるには閣僚経験者が要職を占めるしかない。国会答弁などが未知数でリスク要因となる入閣待機組は最小限にとどめる算段だった。

 さらに安倍は、野党・メディアにつけ入る隙を与えぬよう内閣情報調査室に対し、閣僚候補の「身体検査」を徹底するよう命じていた。身体検査とは議員のカネや交遊関係、周囲とのトラブルなどの身辺調査を意味する。その証拠に6月下旬以降、内閣情報官の北村滋はほぼ毎日、首相の執務室に出入りしている。

 二階もこの状況を重々承知していたが、だからといって派閥推薦を遠慮するのは領袖の沽券にかかわる。派閥が動いたことを4人に伝える「気配り」でもあった。

   × × ×

 結果、4人は誰も入閣しなかった。

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