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新日鉄住金・ポスコ訴訟、和解で手打ち 中国勢と競争、実利追う

2015年10月22日 | 企業研究
真相深層 鉄鋼、変わる日韓「協調」
新日鉄住金・ポスコ訴訟、和解で手打ち 中国勢と競争、実利追う
2015/10/22 3:30 日経朝刊

 新日鉄住金と韓国鉄鋼大手ポスコとの高級鋼板技術の流出を巡る訴訟は、
ポスコが300億円を支払うことで和解した。鉄鋼は拡大意欲が強い中国勢などが
相次いで増産に踏み切り、供給過剰で市場環境が悪化している。競争が激しさを
増すなか、新日鉄住金とポスコが築いてきた協調関係も変質した。
和解で手打ちし、実利を追う。



「カネより重要」
 「実質的には勝利だ」――。新日鉄住金からは安堵の声が漏れる。
求めていた約1千億円の賠償には届かないが、同社関係者は「和解金より、
もっと重要なものが獲得できた」と口をそろえる。
 同社は明らかにしていないが、訴訟の対象になった高級鋼板「方向性電磁鋼板」
のライセンス料や販売地域についてポスコと合意できたもようだ。この電磁鋼板は
変圧器などに使い、相次ぐ発電所の新増設で品不足感が強い。価格は一般に流通
する鋼材よりも大幅に高く、利益率も大きい。

 ポスコは韓国や米国で電磁鋼板を販売し、世界シェア2割前後と新日鉄住金に
迫る勢いだった。和解でポスコの販売を今後韓国を中心とする地域に制限できる
とみられるほか、ポスコから電磁鋼板の販売に伴いライセンス料収入が見込める。
 交渉を有利に進められたのは「敵失」があったからだ。ポスコが2007年、
電磁鋼板の技術を中国企業に流出させたと元社員を提訴。この裁判で元社員は
「流出したという技術はもともと新日本製鉄(現・新日鉄住金)の技術」と主張した。
 思わぬ証言が飛び出し、新日鉄が12年にポスコを技術流出で提訴し、争って
いくうえでの有力な支援材料となった。ポスコは「法廷で消耗戦を続けても機会
損失が発生するだけ。戦略提携をより強化するために和解した」(幹部)と説明する。

 かつてポスコが新日鉄住金を「育ての親」と呼ぶこともあった協調関係は様
変わりした。ポスコは1960年代、日韓基本条約に基づく経済協力資金を元手に
八幡製鉄や富士製鉄(後に統合し、新日本製鉄)など日本の鉄鋼各社が技術供与し、
設立した。新日鉄にとってアジア市場で韓国勢との過当競争に陥ることを避ける
ためにはポスコとの「協調」が重要。同社首脳はポスコのトップと親交を深めてきた。
 ポスコの実質的な創業者、朴泰俊(パク・テジュン)氏は技術面などで育てて
くれた新日鉄の稲山嘉寛元社長に恩義を感じていたという。稲山氏の秘書を務めた
千速晃元社長も、朴氏の秘書だったポスコの劉常夫(ユ・サンブ)元会長と親しく、
2000年に締結した戦略提携では互いにトップとして交渉に臨んだ。

 だが新たなライバルが台頭し、それまでの秩序は一気に揺らいだ。
欧州アルセロール・ミタルは2000年代初頭に積極的なM&A(合併・買収)で
規模を拡大した。
 さらに中国の粗鋼生産量は14年に8億2270万トンと、10年前の3倍に急増。
中国勢は安値で輸出攻勢をかけている。鋼板市場のグローバル化に伴い、
自動車用鋼板などで新日鉄住金とポスコも海外市場で激しくぶつかり合い、
競争の側面が目立つようになった。

市況低迷は深刻
 中国製鋼材の大量輸出による世界の鋼材市況低迷は深刻で、採算改善は
当面見込めない。ポスコも安価な中国製鋼材に販売先を奪われている。
 中国経済の減速で輸出環境は不透明さを増しており、収益悪化懸念は
ポスコだけでなく、新日鉄住金にも忍び寄る。今回の和解劇には旧秩序の協調関係が
崩れるなか、法廷闘争より収益基盤の立て直しを優先しようとする両社の思惑が
見え隠れする。



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