胸毛ネットワークス

格闘家に関する余計なお世話なコラム

エメリヤーエンコ家の格闘談義

2011-01-17 22:20:45 | エメリヤーエンコ家の格闘談義
2010年6月26日、ヒョードルvsヴェウドム戦前夜。静けさが全てを支配する。



「ヒョードル・・・」

ヒョードル 「・・・ん?」

「ヒョードル・・・」

ヒョードル 「誰だよこんな時間に・・・」

「ヒョードルや」

ヒョードル 「・・・俺?俺の声?」

































「出かけるのをやめなさい」



















ママ 「出た」

ヒョードル 「いやいやママ、続いてるから。普通に割り込んじゃってるから!台無しだよもう!まだまだあったんだよ、2010年は名言の大豊作の年だったんだ。ちゃんと準備してたんだぞ!」

ママ 「持ってるな」

ヒョードル 「だあっ!言うな!し、しかもなんかこう、上手い感じに!」

ママ 「『今日俺はまともに歌わないよ』をもじって『今日俺は語らないよ』とか?」

ヒョードル 「そっ、そそそ、それもいいんじゃないかい?それじゃなかったけどね。そそそそんなんじゃないよ」

アレキ 「お前ら今年もおめでたいにも程があるな。まあそれよりさ、年末年始の興行ラッシュにコメントしないわけにはいかんから。毎回物議をかもす青木の試合が組まれたDREAMから行こうか」

ヒョードル 「青木vs自演乙は青木らしい負け方だったね。1Rを切り抜けた安堵の気持ちから安易にタックルに行ってしまった。おそらく1R終えた時点で、2R速攻で極めてマイクアピールせずに早々と控え室に戻るという行動で、こんなお祭試合を組んだ主催側に無言のアンチテーゼとして伝える。そんな演出まで考えてたんじゃね?らしい負け方ってのは青木が打撃を受ける瞬間っていつもフッと気が抜けてる時なんだよ。それは自分のグラップリング力に自信があるゆえに集中力が切れる“慢心”が招いた結果。青木がグラウンドに持ち込んだもののパウンド負けする場面がよくあるのと同じように、立ち技の選手なんだからあっさりテイクダウンできるだろうと。みんな分かってることだけど最初から総合ルールならいつもの青木はあんな安易なタックルはしないよ。ただ自演乙陣営はあのカウンターは何回も練習してたんじゃないかと思うね。『青木は相手の打撃の合間を縫って組み付いてくるから総合ルールになったら自分から仕留めようとするな。タックルへのカウンターだけ狙え』って。あのルールで青木の総合での評価が下がるわけないんだけど、世間一般は自演乙は総合でも青木より強いと思っちゃうんだろうな。解説のマサトなんてその象徴みたいなリアクションだったけど、ただよ、いくら興奮したって『1R逃げまくったからこうなるんですよ』はイタすぎるな。

ちとマサトについて言わせてもらうと、問題はK-1ルールであって青木がああいう戦略を立てるのは当然だよ。責められるべきはルール、もしくはレフェリーであって青木の戦い方を糾弾してる連中は矛先を間違ってる。マサトは他にも石井がバンナに打撃を仕掛けたことを高評価してたり、そこいらの素人でも分かりそうな質問を須藤に聞いたりして『やっぱコイツK-1以外のことは分からないんだ』と改めて思ったね。そのK-1っていうのは、K-1はテレビ放送することで打ち合わざるを得ないルールに色々変えてったんだけどそれはアゴも強く打ち合いが得意なマサト有利なルールでもあった、そのバチバチ打ち合うK-1だよ。こういうタイプはあらゆる場面を想定しなきゃいけない総合では通用しづらい。なんで石井がバンナに殴りかかるのか、それが理解できないならまだしも“打撃で勝負を挑んだ”とまで思ってるんだから。でもやっぱ一芸に秀でているがゆえに分からないんだろうな。紙一重って言うからな。

総合はやることが多いからマサトの頃のK-1のように足を止めて打ち合うような単細胞じゃなく幅広い神経が必要なんだよ。単細胞ってのは悪口じゃなくて何て言うかなあ・・・直線的な?頭が固い?これが悪口?(笑)でもさあ、言い訳じゃなくあくまでもタイプの問題を言ってるんだから悪口じゃないんだよ。おそらくマサトがキックの前に総合に出会ってたとしても辞めただろうし、K-1で頂点に立ってた頃でももし喧嘩相手がそこいらの素人であってもケンカ度胸があってレスリングや柔道、柔術が普通程度できる相手だったら勝てなかった可能性はあったろうね。K-1の解説でも『行かなきゃダメですよ』ってコメントが多いのもその表れなんだよ。

立ち技系選手で総合で成功するタイプってのはアウトスタイルの得意なヤツだよ。ブアカーオやペトロシアンなんかいいね。今は全盛期を過ぎたけどミルコがそうだったよな。意外に思うかもしれないけど今回所と対戦した渡辺一久も同タイプだよ。KIDもそう、一見野生的に見えても決してバチバチ系じゃない。あくまでも遠い間合いからトリッキーな動きを交えて一発打っては離れるっていう頭を使った戦い方をしてる。まああくまでも総合に向くかどうかの話だからおいといて、渡辺が寝技で善戦したのはフィジカルもあろうし所の雑な攻めもあったけど柔軟な考え方があったからだと思うよ。ただ柔軟がゆえに出たであろう後頭部ヘッドバッドは、当たらなかったと思うけど一度ストップさせて口頭注意くらいしないとレフェリーとしてダメだな。

現に今のUFCのトップクラス達を見てみるとアウトボクシングが得意な選手ばかりだろ?アンデウソン、LYOTO、GSP、アルド、エドガー、クルーズ・・・。じゃあケイン・ベラスケスやジュニオール・ドス・サントス、ショーグンのようなバチバチ系がトップ張ってるのはどうなんだって話になるけど、格闘技ってのは階級が増えるほどスタイルが違うんだよ。重い階級になるほどスピードやスタミナが必要で疲れやすいアウトスタイルってのは、一発当たれば倒せるっていう魔力と比較して非効率だから。上記の3人は打ち合いに必要なアゴの強さやハンドスピードなんかの条件を持ってるのがあるけど、一番の理由はバックボーンのレスリングや柔術のレベルの高さにある。軽い階級でもこれは関係ある。まずは倒されないまたは倒されても大丈夫ってのがあるからできるんで、だから逆にストライカー出身はバックボーンが打撃だから倒されないようにアウトボクシングが必要ってことになるのよ。組み付かれることを気にしてちゃバチバチ打ち合うなんてできないからさ。ただ上記3人の彼らが通用してるのはあくまでも現時点での話しな。ショーグンなんか変化しつつあるしね。

ミノワマンvs泉だけど泉はこれまで総合に転向した柔道家の中でもスマートに戦うね。中村和裕のスマートを通り越したズル賢さまではないけどその分精神的にも強いし、賢さと精神力のバランスが取れているから安定した戦績を残していくんじゃないの。現時点では石井より強いかな。でもやっぱりこの先階級は落とさないと体格差がキツイと思うけどなあ。

高谷vsビビアーノは、高谷にとってやり易い相手だったからね。まあビビアーノとは前回トーナメントで当たって高谷の方がダメージがあるにも関わらずスプリット判定だったからな。なんか高谷vsジョン・ホーキを思い出したよ。テイクダウン取れないで焦っている顔のホーキがビビアーノとダブった。小ずるい感じも似てるし(笑)。ブラジルの柔術家ってああいうのが多いよな。たぶんジョゼ・アルドも自分より打撃ができて腰強い相手だとパニクるタイプだと思う。てか高谷のようなタイプは柔術家の鬼門だからな。

川尻は精神的な成長が表れてきたね。以前のようにガンガン打撃を仕掛けてくる相手に対して打ち返すことをしなくなった。俺は戦前の予想ではトムソンのようにガツガツ来るタイプは分が悪いんじゃないかと思ったけど、トムソン相手でも熱くならず冷静にテイクダウンを積み重ねたのは良かったね。ある程度キャリアを積んだ選手に『強くなった』ってなかなか言えないけど、川尻の場合はそれが言えるんじゃないかな。

アリスターvsダフィーはあんなもんだよ。アリスターの相手がダフィーに決まったとき、ネットで『楽しみ』やらDSEを絶賛する声がちらほらあったもんだから、ダフィーって見たことなかったから何試合か見てみたらとてもアリスターの相手じゃないと思った。何で騒いでるか調べてみたらどうやら6勝1敗の戦績やUFC最速KO記録とかいった触れ込みが原因なのかね。やっぱ何試合か見ることが一番分析しやすいけど、戦績で分析するなら誰に勝って誰に負けてるのか、またその相手はどのくらいのレベルなのかくらいまでは考慮しないとな。クートゥアーもトップを張ってたけど、その頃でさえ戦績だけ見るとたいしたことない選手になるからな。

石井vsバンナは、バンナの寝技での動きがそこそこ上手かったのが印象に残るな。GSPと練習したことあるようだけどその辺なのか。石井はねぇ・・・んー、あれでいいっちゃあれでいいんだけど。テイクダウンして押さえ込むっていう。取りあえず関節技と打撃に関しては伸びしろを感じないというか。練習ではまかなえないセンスはもちろん必要なんだけどその2つにはそれを感じないんだよね。これまで勝ってきたランクの選手には通用するだろうけど今回のバンナ戦でもあのアキレスの取り具合は柔道家ってのを差し引いても有り得ないし、下になったときの動きも鈍いね。まあ自他共にセンスがないことは承知してることだし、スマートに戦うよりも無骨に組み付いてコツコツパウンドって道を磨くのがいいんじゃね?石井の良さは“勝つことが第一”って考えを持ってることなんだから、日本ではブーイングされまくりだけど勝ち続ければ間違いないんだって信じてて欲しいし、そういう強さは持ってると思うし。

しかしお前、横田に勝ったナラントンガラグはかなり強いぞ。名前が長いとかバカにできないぞ。郷野に勝った時点でKID戦とは比べ物にならないくらい総合の選手になってたんだけど、川尻とやったとしても勝っちゃうかもよ。青木のようなトリッキーでセオリーにない動きじゃないと正攻法じゃ勝つのが難しいくらいの選手になってるよ。この選手は対KIDが総合初戦だから日本で発掘された総合格闘家と言ってもいいと思うんだけど、日本のクソ興行のバカに出来ない部分ってこれなんだよな。ミルコの総合での実力を発見したのもそうだし、アンドリュース・ナカハラしかり。お祭カードからたまに本物が落ちてくるんだよ、たま~に。

日沖vsサンドロはサンドロの見えなかった部分がはっきり見えた面白い試合だったね。日沖はサンドロの腕が折れそうになったとき折れるのに折らなかったのかどうかは分かんないけど、そうだとしたら俺は甘いなと思うな。サンドロ陣営も本人も止めるなと言ってる以上はやむを得ないかなと。何も折った後中指立てろとまでは言わんがあの場面は非情にならないと、レフェリーストップになっていたらサンドロが報われん。あそこまで腕が曲がる人間は結構いるから。止めなかったレフェリーは迷ってるうちに時間が経ってしまった可能性も否定できないけど結果的にナイス。サンドロは負けてなお株を上げた感じだね。さっきの話に戻るけど、このサンドロやナラントンガラグも軽い階級の中ではバチバチ系だけどサンドロのバックボーンは柔術でナラントンガラグはモンゴル相撲がルーツ。

K太郎vsヤスベイは裏メインだったというか。これまでの試合でも感じてたけどヤスベイもルーツが柔術のバチバチ系だよね。奥野戦でアウトスタイルっぽいことはしてたけど、にしても前出過ぎな性質は隠せてなかった。リーチ差と奥野のスタイルを考えたらもっと出なくてもよかったはず。で、K太郎戦だけどK太郎はヤスベイとは真逆の性質で、今まで言ったバチバチ系を『動』とするならK太郎は『静』になるね。『動』とか『静』とか、打撃だけのタイプ分けじゃなくてグラップリングでも同じなんだよ。実績のあるグラップラーで『動』タイプにはディエゴ・サンチェスやヒカルド・アルメイダなんか代表的で、こういう動タイプってやることが増えるMMAでは寝技は使わない、あるいは得意でない傾向がある。アルメイダはヒューズにチョーク取られたり長南にもヒールを一瞬極められたり、サンチェスなんて寝技に行く場面なんてホント少なくてむしろ殴り合うイメージの方が強いだろ。逆にグラップラーで『静』タイプってのは要は細かい技術屋だよな。代表的なのが青木やK太郎、菊田・・・。挙げると日本人選手ばかりで外国人選手ではほとんど浮かんでこないね。昔のミノタウロがやや近いかなとは思うけど、それほど日本人選手は静タイプが多くて、日本人の細やかさってのがこんなところにも表れてるんだよ。分かりやすく打撃とかグラップリングとかで分けて名前を挙げたけど、『動』とか『静』って要は人間の性質のタイプなんだよ。まあさっき悪口っぽくなったけど基本『動』タイプってのは細かいことは考えない、フィジカルや根性重視、純粋、単純明快、といった特徴があって、『静』タイプは当然その真逆の傾向がある。もちろん『動』でも『静』でもない中間の選手だっていっぱいいるわけよ。

で、話を戻すと『動』のヤスベイを『静』のK太郎が極めるのは元々のグラップリングの実績も違うけど、MMAだと余計に有り得なくはないかなと。戦前のヤスベイの評価の方が高かったのは『動』であるがゆえの手数の多さも加味されてたんだろうな。俺もヤスベイ勝つと思ってたもん(笑)。

アレキ 「じゃあUFC」

ヒョードル 「エドガーvsメイナードは最終ラウンドラスト1分でのラッシュでメイナードかなと思ったけど、まあドローでも仕方ないかな。人気のあるエドガーをプロテクトしたとも考えられなくはないけど、手数の多さってのはやっぱり評価に値するなと。

五味の負け方は五味がライト級第三集団に留まっていることを確信させる負け方だったね。ちょっとあの取られ方はないな。前言ったように近々引退か、それともこの第三集団レベルの選手と勝ったり負けたりを繰り返すのか。最近の本人のインタビューとか読んでもまだいけると思ってる反面テンションが保てない的なコメントがあるってことが、そこのところをハッキリできてないんだろうね。でもやっぱグイダはタフだよな。最後カウンターの膝も入ってるのにな。アクションが大きいから関節とか取りやすいタイプで2Rにももつれた時腕十字やチョーク取れる場面はあったんだけど、五味だし今の状態じゃなおさらトライすることできないわな。

キム・ドンヒョンvsネイト・ディアスはキムがツイてたな。結局ネイトが押してたわけだから放った反則ヒザの減点の加減しだいで決まっちゃったわけだけど、反則はこれくらい判定に響くんだよってのを知らしめた意味で俺は良かったと思う。でもキムは調子悪かったのか相性の問題なのか動きが悪かったね。スタミナがすぐ切れることがあるんでそれに当たった感じだったけど。相性で考えるとネイト・ディアスって、兄貴も同類だけどレスリングは捨ててスタンドでも寝技でも一発狙いだから、それを警戒しすぎたのかもしれないね。グレイ・メイナードがネイトとスプリット判定だったように、警戒心が強い選手はランク的に格下でも一発を持った選手が相手だと競った試合になる場合があるんだよ。ランペイジとユン・ドンシクも似たような試合だった。警戒心が強いだけじゃなく頭の悪い選手でもそういうことは起こるよ、シウバがマーク・ハントと競ったように(笑)。しかしあの動きだとキムは厳しいな。五味もそうだけどUFCではこの辺のトップ集団とは明らかに差がある集団って、もう沸かす試合で生き残れるギリギリのラインだからな。

チアゴ・シウバvsブランドン・ベラは、ベラについて前も言ったかなあ、明らかに性格的に打撃向きの選手じゃないんだよ。というか今回の試合見てると格闘家向きじゃないとさえ感じるんだよな。とにかく受身過ぎて見てられないというかなぁ。じゃあカウンタータイプなのかというと相手が出てくるとバックステップかクリンチが主で、テイクダウンするでもない。となると勝つには仕掛けていくしかないわけなんだけど。相手が打撃の強いチアゴ・シウバってことで攻撃の選択肢がなかったってことが一番の要因だろうとは思うけど、でもいつもあんまり勝利に対してハングリーじゃないのかな、ガツガツした感じがないもんな。それはそれでUFCでチャンピオンシップにまで出られたんだから大したもんって感じか。まあ練習環境の問題ってのも大きいから何でか分からないけど」

アレキ 「じゃあ今後の注目カードについて」

ヒョードル 「アンデウソンvsビクトーはアンデウソンの判定勝ちだろうな、いつものようにアウトボクシングでポイント稼ぐ戦略で。ビクトーが勝つのは難しいけどタックルに見せかけたパンチでのKOを狙うしかないね。テイクダウンしたところでビクトーはちょこちょこパウンド打つしかできない。そうなるとチェール・シェノンのように5R押さえ込めるかというとビクトーじゃ無理だろ。以上!」

ママ 「皆様今年もよろしくお願いします。って言えるのもあと1年ですね。だって・・・」

アレキ 「また来週~!」

最新の画像もっと見る