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フェルドマンの「7つ道具+1」

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photo credit: H is for Home via photopin cc

倉下忠憲『フェルドマン式知的生産術』という本を読みました。

» フェルドマン式知的生産術 ― 国境、業界を越えて働く人に


本書は2008年に発売された『一流アナリストの「7つ道具」』という本の増補版です。

タイトルから「アナリスト」という言葉が消えているのは、本書で紹介されている「七つ道具」が、ビジネスの現場でより普遍的に必要とされるようになってきているからでしょう。

たしかに本書を読み進めていくと、どの道具も(ないよりは)持っていた方が良いだろうなと思わされます。

本書で紹介されている知的生産の「七つ道具」は以下の7つ。

  1. 「分析力」
  2. 「プレゼン力」
  3. 「人間力」
  4. 「数字力」
  5. 「エネルギー管理力」
  6. 「言語力」
  7. 「商売力」

この中で特に私が気になったのが、次の三つです。



「分析力」

アナリストが分析力を持っていなければ、仕事にならないでしょうが、それ以外の職種でも情報を扱う力の必要性が高まっている傾向はあるでしょう。

著者はこう書いています。

経済学者、社会学者、小説家や心理学者など、情報を扱う方法はそれぞれの専門によってさまざまですが、専門家の能力として共通しているのは「AとBという情報を持っていること」ではなく、「AとBという情報からCという結論が導きだせること」つまり「情報と情報の関係をつくる力」なのです。

まさに知的生産を支える力ですね。

本書で紹介されている「分析スタイルの4分類」は、いろいろ応用が利きそうです。

「時間・エネルギー管理力」

仕事術としてよく話題にあがる「時間管理」あるいは「セルフマネジメント」について。どれぐらい細かくやるかは個人差があるでしょうが、まったく手段を持っていないと、思うように成果が生み出せないことになりかねません。

フェルドマンは、ざっくりと時間管理を二種類に分けています。つまり「中長期的なスケジュール」と「日々のスケジュール」です。この分け方は私のセルフマネジメントともかなり重なっています。最低限、これぐらいしておけば、方向性を大きくぶらすことなく、毎日のタスクを片付けていくことができるでしょう。

本書では著書の手法が簡単に紹介されています。たった一章分ですが、セルフマネジメントについて示唆の多い内容だと思います。

面白いのが次の文章。

机に座って目がすぐに届く壁に直径三十センチメートル、秒針が刻々と動く時計を掛けています。仕事をしながらも常に時間を意識するためです。時計は私にとって「早く帰りたいなら、いま働け」というメッセージなのです。

「早く帰りたいなら、いま働け」は至言ですね。なにかしら、「タスクシュート」に近いものを感じました。

「商売力」

手っ取り早く言えば、ブランドを構築する力です。

次の指摘には、やや耳が痛くなります。

ついつい「うちはいいものを安く売って、サービスもいいですよ!」といいことばかり言いたくなりますが、それだと顧客は「いったいどういう会社なのか」と戸惑ってしまい、かえって集客力が落ちてしまいます。

これは良いことを言い過ぎるというよりは、何を売りにすべきかが見えてないということなのでしょう。そして、何を売りにするのかは、自社の特徴と市場のニーズをしっかり把握しておく必要があります。

さいごに

こうした「7つ道具」は、ないよりはあった方がよいでしょうが、全てを完璧なレベルで備えられる人は皆無でしょう。ただ、最低限「1」ぐらいのレベルは持っておいた方がよいかもしれません。「0」だとかけ算したときに、計算結果もゼロになります。

しっかりした内容はあるけれども、「プレゼン力」や「商売力」がゼロなおかげで、まったく価値が広がらない。こんな状況は珍しいことではありません。

少なくとも、自分にどういう力があって、何が足りないのかを自覚しておけば、それを補ってくれる人とコンビを組むこともできるでしょう。大企業の社長でも、得意なことが異なる副社長と組むことで、ビジネスを大きく発展させてきた例があります。

こうしたマネジメント的な考え方も、「7つの道具+1」の「+1」にあたる「結合力」と言えるのかもしれません。

» フェルドマン式知的生産術 ― 国境、業界を越えて働く人に


» 一流アナリストの「7つ道具」―フェルドマン直伝!「掛け算」の知的生産術 (ピンポイント選書)


▼編集後記:
倉下忠憲



今回紹介した本は、よく考えたら翻訳じゃないんですよね。ご本人が日本語で書かれている。そのせいか、回りくどい表現がなくすっきり読み進められました。私も、そういう文章を心がけたいものです。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。