NECアクセステクニカ「AtermWM3500R」(以下、WM3500R)は、有線WiMAXモデムとしても機能する。
先代のAtermWM3300Rもそうであるように、ポータブルルーターもUSB接続できる機能があること自体はそれほど珍しくはないが、本機の機能が少し違うのは64ビット版Vistaを除くWindows Vista以降やMac OS X 10.4〜6で「OS標準のドライバで動作する」ことだ。
さらにオプションの専用クレードル“PA-WM02C”(実売3000円前後)を導入することで「有線LANポートも利用できる」ようにもなる。有線接続が柔軟に利用できることで、ノートPCやスマートフォン、タブレット機器だけでなく、無線LANを備えないデスクトップPCやネットワーク機能付きの家庭用テレビやレコーダーにも利用範囲が広がる点がWM3500Rの大きな特徴といえる。
もっとも、モバイルでの利用が中心なら有線での接続はメリットは特に感じないかもしれない。WiMAXは基地局のアップデートや対応エリアのさらなる拡充により、都心エリアにおいては実測20Mbpsを超えることも珍しくないほど快適になっている。WM3500Rの無線LANは最大150MbpsのIEEE802.11n対応なので、理屈の上では無線LANの通信速度がWiMAXの速度に影響する可能性は低いだろう。
しかし、モバイル環境だからこそ「たくさんの無線LAN電波の飛び交う場所=かなり混雑している場所」が多いのも事実だ。イベント会場や繁華街などユーザーが多そうな場所で無線LAN電波を検索すると、驚くほどたくさんの無線LANアクセスポイントが見つかるのを経験したことがある人も多いと思う。
そこで今回は、いくつかの場所で無線LANと有線接続でどれだけ通信速度に違いがあるかをチェックすることにした。
送受信速度の測定はspeed.rbbtoday.comを用い、5回計測した上位3つをスコアとして取り上げた。WM3500Rの無線LANは、屋外の公衆無線LANなどでチャンネル1が集中して利用される傾向があるため、これとの干渉を避ける目的でチャンネル7に変更し、かつIEEE802.11n有効、送信出力100%で、無線LAN端末(子機)との通信方法は“速度優先”に設定した。
まずは東京23区西部の筆者自宅。動作している無線LANアクセスポイントはIEEE802.11g対応が1台、5GHz帯のIEEE802.11n対応が1台。WM3500Rでチャンネル7を使うので、チャンネル13の無線LANアクセスポイントとはIEEE802.11nのデュアルチャンネルだと干渉するが、あえてこのまま検証した。なお、5GHz帯のアクセスポイントは2.4GHz帯を使うWM3500Rの無線LANとは周波数帯が異なるので干渉の影響はない。WiMAXの電波状況は、WM3500Rのインジケータ本数で3本中2〜3本をうろうろする程度である。
結果は予想よりも大きな差が出た。2つの有線接続がおおむね下り17Mbpsほど出たのに対して、無線LAN接続では10Mbps程度に留まった。あくまで予想の範囲だが、WM3500Rのチャンネル7はチャンネル1のIEEE802.11nと、チャンネル11のIEEE802.11gの干渉で十分に速度が得られないということになる。一方、上りについては干渉の影響を受けるほどの速度ではないといったところだろう。
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