2010年 私的映画ベストテン
私は映画を全体的なバランスや物語の出来というよりは、「あのシーンかっこよかったなー!!!」という絵面で記憶する傾向があるので、2010年に観た映画で心に残ったシーンを挙げていきます。
カウントダウン方式でいきます。
10. 『インセプション』(Dir. クリストファー・ノーラン)
好きなところ:街がめくれる場面、海岸に絶壁のようにビルが立ち並ぶ場面、エレベーターホールで寝ている仲間をアーサーがグルグル巻きにする場面。がんばるアーサー(みんな大好きジョゼフ・ゴードン=レヴィット)。キャストのバランスが完璧!キリアン・マーフィ、トム・ハーディなど、配役の妙がある。
9. 『第九地区』(Dir. ニール・ブロムカンプ)
好きなところ:冒頭、関係者がモキュメンタリー風にインタビューに答えてる場面。赤茶けたヨハネスブルクの風景と下級エビ兵士の絶妙なブレンド具合。
8. 『バーレスク』(Dir. スティーブン・アンティン)
好きなところ:ヒップをスラップするバーレスク・シーンの勢い。アギレラがちゃんとバーレスクの歴史を勉強しているカットが挿入されるところ。シェールがアギレラにメイクを教える場面。「子供のころ、このガラクタで遊べるようになるのが待ち遠しかったわ」。映画の中で、男性がフェティッシュに銃を愛でる場面は多いけれども、女性がお化粧道具のことを語る場面は少ないので、そういう意味でもすばらしい。
7. 『ローラーガールズ・ダイアリー』(Dir. ドリュー・バリモア)
好きなところ:試合前、円陣を組んだローラーガールズに、唇を真っ赤に塗ったスマッシュリー(監督のドリュー・バリモア)が、"3, 2, 1. Kick ass!"と気合を入れるシーン。ライバルの強豪チームのエース、アイアン・メイヴィン(36)を演じるジュリエット・ルイスのイカれたカッコよさ。「オレたちの見たかったジュリエット・ルイス」という感じ。30歳を越えた女優を最高にクールに撮っている点は特筆に価する。
6.『メイキング・オブ・ラブ』(Dir. 古澤健)
好きなところ:雨の中傘をさしながら自主映画を撮るシーン。撮影場面では寒色、酒場の場面では暖色と、色調をきっちり分けている点が素晴らしかった。あと、最後に出てくる宇宙船の形!「映画を撮る」という行為についてメタ的に語ろうと思えばいくらでも語れる映画だが、酒場の狭い路地を疾走する上半身裸の監督の姿が、そんな小理屈を吹っ飛ばしてしまう。
5. 『息もできない』(Dir. ヤン・イクチュン)
好きなところ:映画全編から伝わってくる逼迫感。「これを撮らずにはいられない」と切迫感に駆られて撮っていることが、画面からギリギリと伝わってくるような映画。究極的な悪人などだれもいないのに、暴力が全編に溢れているのが切ない。「人を好きになる余裕などない暮らしをしている者たちが、どのように身を寄せ合っていくか」を描いているところもよかった。
4. 『恐怖』(Dir. 高橋洋)
好きなところ:ペンフィールド博士が脳の側頭葉シルビウス裂に電気ショックを与える実験からヒントを得たという開頭手術のシーン。「シルビウス裂」は今年聞いた映画の台詞でいちばんクールな単語です。「医者も看護士もみんな異常」という、救いのない陰鬱な精神病院の描写が素敵だった。自殺のテーマも扱っており、「あの世なんかないんだから自殺してもむだ」という身も蓋もない結末の冷たさもすばらしい。
3. 『ハート・ロッカー』(Dir. キャスリン・ビグロー)
好きなところ:爆風が伝わってくるような爆発シーン。『ゼロ年代アメリカ映画100』*1の表紙にもなった、爆弾が地面からじわじわと引きずり出されてくる場面の緊迫感。「自分の好きなことはこれしかない」と、爆弾処理の仕事に戻る主人公の業みたいなものをちゃんと描いていたのがリアルだった。
2. 『ヘヴンズ ストーリー』(Dir. 瀬々敬久)
好きなところ:「犯罪被害者の遺族は、幸せになってはいけないのか」という重いテーマに真正面から取り組んだ作品。犯罪被害、加害、若年性アルツハイマーと、不幸の釣瓶打ち描写にもかかわらず、静謐で美しい映像により最後まで観れる。雪が積もる廃墟での銃撃戦、港町の平凡な団地、廃墟団地の描写が、映像の快楽と言っていいくらい美しい。この上なく平凡なものや、打ち棄てられたものを描いて映画が成り立っているのに驚いた。
1. 『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(Dir. ジョニー・トー)
好きなところ:すべてのカットが銃弾のように観る者を撃ち抜く映画。男たちの行為に焦点を起き、無駄な説明を一切省いた描写がすばらしい。言葉による説明は必要最低限に抑え、「銃を取る」という行為により観客に分からせる点に、「映画は詩である」というフレーズが思い浮かんだ。
順位は、以下の通りです。
1. 『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』
2. 『ヘヴンズ ストーリー』
3. 『ハート・ロッカー』
4. 『恐怖』
5. 『息もできない』
6. 『メイキング・オブ・ラブ』
7. 『ローラーガールズ・ダイアリー』
8. 『バーレスク』
9. 『第九地区』
10.『インセプション』
今年公開された映画で、自分の好きな順位で言うと、以上のような感じです。
先日、短編映画のエキストラに参加させていただく機会があったのですが、映画を撮るというのは本当にたいへんな、根気のいる作業だと思いました。作り手の皆さん方に深い敬意を払いつつ、筆を置きたいと思います。
今年もいい映画がたくさん観られてよかった。
来年もすばらしい映画に出会えますように!
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