ナビゲータとしての情報コンシェルジュ:個別のニーズに合わせた情報提供(第9回情報メディア学会研究大会参加記録(1))
去年は発表者として参加した情報メディア学会研究大会ですが*1、今年は純粋に聞き手として参加してきました!
情報メディア学会では「ナビゲータとしての情報コンシェルジュ : 個別のニーズに合わせた情報提供」を基調テーマにして下記の要項で第9回研究大会を開催します。参加希望者は、下記によりお申し込み下さい。非会員の参加も歓迎いたします。
- 基調テーマ
- ナビゲータとしての情報コンシェルジュ : 個別のニーズに合わせた情報提供
近年、社会における情報流通量は増加の一途をたどっているが、そのような情報過多とも言える時代と情報提供機関とが切り結ぶためには、情報提供の「量」よりむしろ「質」を意識する必要がある。しかし、「質」を意識した情報提供がいかなるものか、ということに対するコンセンサスはいまだ得られていないのが現状である。そこで今大会では、「情報コンシェルジュ」を基調テーマとして掲げ、様々な業界における「コンシェルジュ」の考え方や技術を知ることを通して、「質」を意識した情報サービスの可能性について考えてみたい。
最近、図書館業界でも千代田図書館の取り組み等をきっかけに耳にする機会の増えた「コンシェルジュ」。
でも実際のホテル業界や他業界でどのようなものとして捉えられているのかはなんとなくしか知らない・・・ということで、大変興味深く参加してきました。
では以下、基調講演+シンポジウムのメモです。
例によってmin2-flyの聞きとれた/理解できた/書きとれた範囲でのメモですので、ご利用の際にはその点ご了解願います。
間違い・問題等ありましたらコメント欄等でご指摘いただければ幸いです。
基調講演「情報コンシェルジュと情報品質保証」(稲永健太郎先生、九州産業大学)
- なぜ情報品質保証、と後ろにつくのかは今日の話の後半で触れる
- 私事だが・・・
- 昨日、福岡から東京へ。初めてこちらに住んでいる姉の家に泊った
- 姉の家、ということでホスピタリティを感じる。今後のシンポジウムでも出てくるキーワード
- 昨日、福岡から東京へ。初めてこちらに住んでいる姉の家に泊った
コンシェルジュと情報コンシェルジュ
- コンシェルジュとは?
- 辞書によって表現は様々。
- おおむねの定義・・・ホテル等で客の要望に応じて様々なサービスを提供するスタッフ
- 最近はホテルに限定せず、他の分野でも同様のサービスあるいはサービスを提供する人をコンシェルジュと呼んでいる
- ネット上でのコンシェルジュの使われ方のニュアンスは?
- 実際のコンシェルジュ関連事例:現場での表現
- 日本コンシェルジュ協会:「ホテルにおいてお客様のさまざまな要望にお応えするスタッフ/ご満足いただけるサービスを提供」
- 千代田区立図書館「図書館コンシェルジュ」:「本探しの手伝い以外にも、"千代田ゲートウェイ"=千代田と言う街の玄関口として、地域のご案内もしています」
- で、一般の人の認知度は?
- コンシェルジュ型情報発信(稲永2003)
- 情報コンシェルジュについての個人的見解
- 個別のニーズにこたえるべく、プロフェッショナリズムに基づいて情報やサービスを提供する主体
- 「プロフェショナリズム」という言葉の使い方はまだ悩んでいる
- 技能、専門的知識に強い自負心や探究心を持ち、社会的責任を自覚すること
- このキーワードを使って一緒に研究している仲間はまだいない(苦笑)
- 個別のニーズにこたえるべく、プロフェッショナリズムに基づいて情報やサービスを提供する主体
情報品質
- 情報の品質をどう定義?
- 代表的定義:「情報の利用目的に対する適合性(fitness for use)の高さ」(Wang 2005)
- 適合性が高い=品質が高いもの
- シンプルに見えるが厄介な問題・・・「利用目的に対する」というところに曖昧さ
- 同じ情報でも受け取る人間、状況に応じて適合性は変わる。絶対的基準が見つけ出せない
- 情報を送る側は受け取り手に対して「この人には役に立つから教えてあげよう」と思っている。
- 発信者が受信者を想定して送る
- 受信者の実際の文脈と想定文脈にずれがあると、役に立たない情報になる
- ものの品質管理と明らかに考え方が違う
- 製品の品質は長さ、重さ、硬さ、形状等の絶対的基準が存在。それにあっているのが「品質の良いもの」
- 情報にはその統一的な物差しが見いだせない
- 数年すると古くなる定義かもしれないが、「これだ」という基準が出せないのが情報品質の難しさ
- 情報コンシェルジュのやるべきことは品質の高い情報の提供、ということに
- 代表的定義:「情報の利用目的に対する適合性(fitness for use)の高さ」(Wang 2005)
- 研究プロジェクト「情報品質保証」
- 作者: 関口恭毅
- 出版社/メーカー: 中央経済社
- 発売日: 2009/10
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- 作者: リチャード・Y.ワン,スチュアート・E.マドニック,クレイグ・W.フィッシャ,エリザベス・M.ピアス,Elizabeth M. Pierce,Stuart E. Madnick,Richard Y. Wang,Craig W. Fisher,関口恭毅
- 出版社/メーカー: 中央経済社
- 発売日: 2008/01/01
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- 直接的情報と間接的情報との比較
- 直接的情報:自ら観察、体験して入手
- 自分にとって適合性の高いものかは確証を持って判断できる
- 情報量は少ない
- 間接的情報:他者とのコミュニケーションから入手
- 自分にとって適合しているものかの確証は乏しい/判断材料が少ない
- 情報量は多い
- 議論の対象となるのは間接的情報
- 手に入れた情報の適合性は高いのか/低いのか
- 研究者の専門分野であれば判断できるだろうが、一般の人にとっては疑問の残るところ
- 直接的情報:自ら観察、体験して入手
- 情報の特性(捉え方)
- 情報品質が分野によって違っても、その保証の仕方は一致する部分もある?
情報品質保証
- fitness for useをどう保証するのか?
- 具体的なやり方は違っても、方針は分野によらず共通なのでは?
- 実際文脈:受信者が情報をどう使うのか?
- 想定文脈:送信者が想定する受信者の文脈
- このギャップを埋めることが品質を高める・確保する・保証することにつながる
- 具体的なやり方は違っても、方針は分野によらず共通なのでは?
- 品質保証のスキーム
- <講演では図を出して説明>
- 保証内容:情報に関してどういう保証内容を用意すべき?
- 保証方法:どうやって保証を提供するのか。特にシステムをどう用意するのか?
- ギャップを埋められる人が情報コンシェルジュになれる人
情報品質の第三者保証
- 想定文脈、実際文脈のギャップを埋めるとき、当事者(発信者と受信者)だけでは改善できないのでは?
- そこに第三者が入ることで改善できるのではないか?
- 第三者が絡むことのメリット
- 発信者と受信者の間には文脈の相違が起きる
- 起きていないならもう品質は保証されているっ!
- 第三者保証の中身・・・
- 利用前に取得可能な情報
- 情報は知っている/受け取れているが中身を理解できない、知識が足りない、フォローがいる
- 他の人の手伝いがあるといい
- 利用前に取得できない情報
- お金を払って有益な情報を取得する(リサーチサービス、特許)
- 契約したり対価を払う必要
- その情報を手に入れて大丈夫か? そもそも取得できないので自分ではわからない、間に入ってくれる人はいないか?
- 利用前に取得可能な情報
- 発信者と受信者の間には文脈の相違が起きる
- 利用前に取得できない情報
- 目的適合性の判断を第三者に手伝って貰うことが必要
- どうやって第三者に手伝ってもらうのか?
- ヒントになった話は現実にもある
- 情報・知識共有コミュニティサービス・・・「〜知恵袋」的なサービス
- 情報のやり取りをして、知っている人が答えてくれる
- 判断は受信者がしないといけないが、判断材料を受信者が持っていないと危険でもある
- 間に仲介者が入ることも考え方としてはあり?
- 間に入ったような事例・・・Yahoo!知恵袋に一歩近づいた事例
- 通常は発信者・受信者ともよくわからない不特定多数
- 発信者に専門家が入ってきている。仲介者的なところに専門家が入ったことで、品質保証の取組みの第一歩が踏み出せている?
- リサーチサービス・・・マーケティングサービス等
- リサーチサービス企業が仲介。受信者は企業、発信者は消費者
- お金を取ってやっているビジネス。概念的には情報エスクローに類似?
- 情報・知識共有コミュニティサービス・・・「〜知恵袋」的なサービス
おわりに
- 情報コンシェルジュは相手の実際の文脈に合わせる形で、自分たちが工夫して想定文脈を合致させ、相手に適合する情報を出せるように
- それをどうやるかは研究が必要
- 基本的な概念は受け取り手側に喜んで貰える、ニーズに合った情報を提供できることが一つのゴール
- 日本の片隅でこのような研究がおこなわれていることを知ってもらえれば
質疑
- Q:「情報」というが、その範囲は? 聞いていてもはっきりしない。議論の出発点がはっきりしていないのでは? 本をはじめメディア等の情報商品の話か、それとももっと違う話か。商品だとすると、アナログ媒体も含むのかネットワーク上のものだけか?
- A:結論から言うと、研究のベースが経営分野であることもあり、「自分たちが扱うものは全部」(情報)という捉え方が強い。情報がどのような形態で流通し、保持・管理されているのかの話がこの分野では薄い。曖昧なところが残っている。正味、という言葉が正しいかはわからないが、情報正味が対象で媒体の話はあまりない。情報の捉え方が研究者によって違う、それを統一するところは研究プロジェクトの冒頭でそうとう議論したが、なあなあで終わったところもある。ただ、情報とデータの違いは意識した話をしているとは思う。情報に着目した話であった。
- Q:確認すると、品質の問題に触れ、経営的な視点から話しているので、「商品である」というのが前提にある議論なのかそうなのか。一見、情報商品についての議論なのか。でもそうでないようなところもある。その前提をはっきりさせないと、後の展開も曖昧なままになるのでは?
- A:情報商品、私どもの本では情報製品などという言葉を使っているが、どちらかと言えばそれを暗黙的には前提にしている。
- Q:発表資料の中のp.7で「有益さ・冗長さ」という次元があるのだが、ここで新しいことをいいこととする指標がある。一方でp.8には「揮発性」というのがあり、「情報が妥当であり続ける長さ」というのがあって、情報が妥当な期間が長いほどいい、古くから変わらないほどいいという指標がある。この2つは矛盾していないか? 例えば医学情報なら10年前と今の情報は全然違うわけで、自然科学系は古いことが情報として間違っているということになる。一方で文学などは古くから変わらない。分野によって違うので、この指標の説明をいただきたいのと、分野によって次元を細分化することを図るのかお聞きしたい。
- A:私が調査した話ではないので個人的見解だが、次元分け、カテゴリわけの話自身が確定したものにどうもなっていない。ある一定のなんとなく同意が得られるところはあっても、「これで確定」という結果にはなっていない。お話にあった部分以外にも見ていると矛盾はたくさん残っている。このあたりの弱いところは、事例研究がまだあまりない。欧米であっても日本でやった場合とは変わると思うし、表自身の精度は疑問が残る、改善すべきところがある。分野については、もうちょっとマンパワーが必要な部分もある。学際的な色彩が強くなってきていて、プロジェクトのメンバーでもどうも足りない。経営や情報の分野の人間に偏っているので、幅広くメンバーを集めてやりたいと言う気もする。
ここでお昼休憩。
んー、最後の質疑についてはどうなんでしょう・・・途中のお話を聞く限り、そもそも情報の品質って分野によって全然違うから、方針は共有できても具体的な次元とかはそもそも共有できないんじゃないか、という感じかと思ったのですが。
そうなると、各分野において情報コンシェルジュ的な役割を果たすことが出来る人はいても、分野を超えたコンシェルジュの存在は不可能ということにもなるような?
そのあたりはあくまで「コンシェルジュ型情報発信」であってホテルにおけるコンシェルジュとは違う、ということでもあるのでしょうが。
シンポジウム「情報コンシェルジュの意義と可能性」(コーディネーター:元木章博先生、鶴見大学)
パネリスト:
各パネリストから
ホテル業界(芝田さん)
- ザ・プリンス パークタワー東京について
- 公式サイト | ザ・プリンス パークタワー東京
- プリンスホテルシリーズのフラグシップとして5年前にオープン
- 東京タワーの近くにある
- 天然温泉、ジム、プール、ジャグジー、ボウリング場、ダーツバーetc...
- 機会があったらご利用を! 通常、ロビーにいます。芝田で呼び出してもらえれば対応
- 宣伝はここまで
- ホテルマンとしての経緯・・・
- 10年間フロント、その後インフォメーションへ(後のコンシェルジュ)
- コンシェルジュ=鍵の管理人
- お客様に色々聞かれるので、満足行くサービスを出来るように色々と情報を集めるように
- もともとはホテルの言葉。今は様々なところでパーソナルサービスについて使われるように
- 定義があるようでない、法に触れない限りはあらゆる業務を行う
- 「薔薇の花弁で部屋をいっぱいにしてほしい」・・・今はサービスがあるが、当時は手でちぎって部屋にまいた
- プロポーズのご相談も多い。「12時に東京タワーがライトオフするのと同時にプロポーズしたいから・・・」と細かいリクエスト
- ルームサービスの人選もカギになるので自らルームサービスに出向いて、細かく指示する。
- 東京タワーは工事のために12時ちょうどに消えないこともあるので、事前に確認。万一、時間がずれたらシャンパンをつぐなどしてタイミングを、と係にも
- レンタカー。「佐渡までいくらかかるのか?」と聞かれたり。レンタカー代、ガソリン代、交通手段、時刻表とにらめっこして答える
- ベビーシッター。業務中に英語教育して、といった要望も。
- 劇場チケット。ヨーロッパと違い通常ルートか個人のコネで入手
- より楽しんでもらうために、「冒頭がカギなので遅れずに」とお伝えする等の情報提供も
- 「歌舞伎がみたい」という海外の方に、時期外れだったので能を紹介。さらに能の英語パンフレットがなかったので、簡単な英訳を自作して提供
- ツアー。事前に天気をチェック。eメールでの問い合わせへの対応。
- 「日本に5日いるのでスケジュールを組んで」というメールから始まり、好みやどこにまで行きたいか等やり取りしつつ、満足度をあげるために完成させていく
- 通訳手配。個人的に信頼している通訳にお客様の特徴をお伝えして手配したり
- 各種見学。皇居で事前申請が要る場所のお手伝いとか
- レストラン予約。これが一番難しい。一言、「どこか紹介して」と言われてもニーズがそれだけではわからない
- 和、洋。和といっても焼き鳥から懐石まで
- 聞きづらい質問もあるし、質問はストレスにもなる。そこでY/Nで終わらない質問をする。
- 「お刺身は食べられますか?」でははいかいいえで終わり。そうではない、howやwhatを聞いて情報を聞き出す技術
- 質問の仕方もコンシェルジュの技能
- 印象的な仕事
- 「10数年前にお世話になった人に会いたい」という人探し
- 名刺があったが定年していて、どんどん人づてに聞き続けて最後は電報で本人に連絡
- 難しい仕事をこなすことは自分自身のチャレンジであり、「ありがとう」があり、会えない人にあったりということも喜び
- 「10数年前にお世話になった人に会いたい」という人探し
- ホテルにおけるコンシェルジュのポジション
- 配置場所・・・いろいろ
- 名称・・・いろいろ
- 業務範囲・・・いろいろ
- 人員・人材・・・いろいろ
- マネジメント次第で流動的。
- ホテルのマネジメントへの働きかけ、コンシェルジュの理解などのためにも活動
- コンシェルジュの条件
- ホテルマンとしての、身だしなみや立ち居振る舞い
- 良い印象はコミュニケーションの取りやすさにも
- 多岐にわたる能力
- 蓄積された豊富な経験と幅広い知識
- パーソナリティとホテル内外の人脈
- 配属のためにはパーソナリティが重要。教育だけでは対応しきれない。明るさ、柔軟性、能力の見極めがカギ
- 人脈はより良いサービスのために活きる。自分自身で解決できなくても他のメンバーがカギを持っていることも
- ホテルマンとしての、身だしなみや立ち居振る舞い
- 戦略的に期待される役割
- 要求の満足度の充実をはかり、リピーターを獲得する。「また次回も来よう」と思われることでPRを達成
- サービスの付加価値としての象徴
- 顧客の生の声をニーズに反映する
図書館業界:千代田区立千代田図書館 図書館コンシェルジュについて(神原さん、押田さん)
- *押田さんが図書館コンシェルジュ
- まず神原さんから概要の説明
- 千代田図書館概要
- 図書館コンシェルジュについて押田さんから説明
- コンシェルジュの役割
- コンシェルジュの活動
- 館内業務
- 館外業務
- 「本と街の案内所」*4での活動:
- 2007年10月に神保町・靖国通り沿いにオープン
- 昭和初期、関東大震災復興後の建築に、図書館コンシェルジュが出張。国内外からの来訪者に情報提供
- 古書・古書店情報、ランチの美味しいお店、銭湯の場所等の問い合わせに対応
- 一番多いのは古書についての問い合わせ。コンピュータで検索するだけでなく、ふだんお店と接して得た情報も使う
- 「本と街の案内所見聞録」作成・・・質問事例をピックアップして調べ方や得する情報を掲載:セルフレファレンスツールとして活用
- 神保町ツアーの開催:
- 図書館コンシェルジュとめぐる神保町ツアー:年2回実施
- 昨年は夜の神保町ツアー。先月は「本とカクテル」をテーマに古書店主とカクテルの先生の対談、本にまつわるカクテルの話等の話を提供
- 区内の古書店、飲食店の協力を得て実施
- 「本と街の案内所」*4での活動:
- コンシェルジュ機能の効果
- 活動を行う上で心がけているのは地域への取材による情報収集
- ネットの情報だけでなく、自分の目で見て確かな情報を
- 社内外への研修参加、勉強会参加によるスキルアップ
- 外部の勉強会への参加/コミュニケーションをとる重要性のために勉強会を企画
- 図書館コンシェルジュとしての知識・ノウハウを蓄積
- サービスの進化・深化へ
- 初年度は館内活動メイン、その後館外活動、見聞録作成、利用者ニーズにあわせたガイドツアーコース案内など
- メディアでの取り上げ・・・
- 活動を重ねるうちに神保町ツアーが新聞に掲載されたり、コンシェルジュが雑誌の中でおすすめ本を紹介する記事が掲載されたり
- 活動を行う上で心がけているのは地域への取材による情報収集
- 自分たちでニーズを探してレベルアップをはかる/図書館・千代田区のファンを増やしたい
- 九段下から徒歩3分、区役所9階へ!
システム業界について(稲永さん)
- 基調講演の最後の方で出てきた、情報エスクローについて現実的な課題を述べる
- 情報コンシェルジュが情報発信時に気をつけるべきこと・・・情報の品質
- 品質の有力な定義の一つは「利用目的への適合性」
- 情報発信者と受信者のギャップをどのように埋めるか、が品質保証で一番大事
- 発信者と受信者の間に第三者を置く?
- 品質の有力な定義の一つは「利用目的への適合性」
- 従来・・・情報の発信者と受信者が直接・間接にやり取り、間には介在者はいない
- 受信者の文脈は発信者にちゃんと見えているか?/受信者は自分の文脈を出しきれているか?
- 二者だけで無理なときに真ん中に仲介者がいてもいい
- 仲介者が情報コンシェルジュ?
- 受信者の文脈は発信者にちゃんと見えているか?/受信者は自分の文脈を出しきれているか?
- 現実的な課題
フロアディスカッション
- Q:千代田図書館について。古書店への紹介と言う話があるが、古書で特定のジャンル、どんぴしゃりを見つけるのは難しいように思うが、利用者支援として具体的にどのようなことをしている? あと、ビジネス支援サービスも千代田図書館は力を入れていると聞くが、そちらとの関連は?
- A(押田さん):古書の探し方について。案内所では、設置してあるコンピュータがあり、その中に古本を検索するデータベースが入っている。それ自体は自宅からでも検索できるものだが、知らない人もいる。そこで特定の本を探されている場合にはそれを使う。ただ、それで見つかることは稀。次はそのジャンルに詳しい古書店に取り次ぐ。教えるのではなく一緒に探す、というスタンス。神保町で探してもどうしてもない場合は「日本の古本屋」や図書館で探した結果などを伝える。
- A(神原さん):古書店連盟さんから、どんぴしゃりまで探さなくても道筋をつければいい、そして利用者を古書店まで案内して親父さんと話をさせて欲しい、と言われている。ぴったりのものがなくてもそのジャンルの古書店さんを紹介している。また、ビジネス支援サービスについては、千代田区は昼間人口が多い。そこで仕事に資料を役立ててほしいということで、まず夜間10時までオープンしている。ビジネスマンが仕事が終わったあとも、仕事や資格試験の勉強ができるように。それから、そうしたビジネスパーソンに必要な資料を禁帯出扱いにしている。賛否両論あるが、来館すれば必要な資料をすぐ見られることをコンセプトにしている。また、企画展示の中には人文会出版と協力して人文関係のものを紹介したり。仕事に直結するものだけでなく、発想を豊かにするものも企画展示で使っている。それもビジネス支援サービスのくくりの中で。
- Q:昼間人口の多さ等図書館の特性にあわせて熱心に取り組まれている、という感想。ありがとうございました。
- Q(元木先生):古書についていくつか話が出てきたが、芝田さんに。ホテルのお客様から「古本を探したい」という話が出たら、本物のコンシェルジュはどう対応?
- Q(元木先生):公共図書館のサービスの限界について気になっていたので、芝田さんにもホテルでどこまで出来るか伺ってみた。
- Q:コンシェルジュという言葉が、稲永先生の御言葉と他の方で根本的に違うようにも感じる。グルメガイド等は情報の品質としては低いのではないか? そういう情報を利用者の方は求めている。もうちょっと大きく言うと、Yahoo!のディレクトリ型サーチエンジンはYahoo!が情報の品質を保つモデルだったが、今はコミュニケーション重視でその中で出てくるものが重視される。医者や建築士は正確性、品質を重視するだろうし、経営情報でもそうだろうが、その話と図書館の話とかがむしろ正反対では? 情報の品質保証とは違う、コミュニケーションベースのコンシェルジュが重要なのではないか。
-
- A(芝田さん):第一印象、お客様へのアプローチ、効果的質問、それから回答、と手順を踏んでいる。
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- 元木先生:そのときにレベルや主題が違う場合には満足に到達するために出す情報のレベルも変える? 何軒か欲しい人もいればスポットで欲しい人もいる、など。
-
- 押田さん:私たち(千代田図書館)も、段階を踏んでニーズを引き出して多くて3つくらいの選択肢を出して選んでいただく。
- 元木先生:最後にまとめもどきを。満足に到達するためにヒアリング、受け手の情報をいかに引き出すかが重要なのだろう。稲永先生が最初におっしゃったようにお仕着せのものを超えるためにどうするか、というのもあるが。満足の先にこういうものもある、と私が思ったのが、「笑いあり」とわざと振ったのだが、わくわく感とか期待が満足の先にあるのではないか。特に芝田さんのお話でリピーターと言うお話があった。サービス提供側はもちろん一期一会ということもあるだろうが、継続するには繰り返し利用していただくことが必要である。その先に待っているのは次への期待感、と思った。このシンポジウムでせっかくお集まりいただいているので、パネリストから最後に一言ずつ。
- 芝田さん:ホテルのコンシェルジュ自体は人を介するサービス。情報メディアと違った部分もあろうが、検索ツールとして上手に取り入れて使っていきたい。ホテルコンシェルジュ自体も、今はその言葉も浸透しているが、ホテルのコンシェルジュとして牽引する立場でありたい。
- 神原さん:図書館コンシェルジュは前例がないので、司書でもなく案内所でもないところでどう役割を果たすか試行錯誤して今の形になった。ここが到達点ではない、情報メディアのコンシェルジュとしても稲永先生のお話にヒントがあった部分もある。それを共有し取り入れながら新しい活動につなげたい。
- 押田さん:色々なお話を聞けて大変勉強になった。毎日手探りで、やっと今の形が出来た。少しずつリピーターができたことを嬉しく思う。何より嬉しいのは案内したお客様が本を見せにきて下さり、また頼まれること。カウンターに収まっているのではなく、カウンターから出て自分の目で見て、食べてそれを活動にいかしたい。
- 稲永先生:基調講演とシンポジウムに参加して大変貴重な経験をした。コンシェルジュという言葉を使い始めて長いが、実は本物のコンシェルジュの方のお話を聞けたのは初めてで有り難い。図書館コンシェルジュも九州でも話題を聞いたことがあり、実際に聞けて良かった。理論を考えるにあたって現場を知らないのが駄目なこと、と痛感するし、まだまだ勉強することもあるが、情報コンシェルジュの話はITや機械があれば終わりと言うのではなく、ITと人の融合としてなんらかの成果が出てくるのではないか。
これにてシンポジウムもおしまい!
このあとはプロダクトレビューとポスターセッションのライトニングトークですが、こちらはだいぶテーマが違うのでまた別のエントリにて。
稲永先生も最後におっしゃっていましたが、実際にホテルのコンシェルジュの方のお話を聞く機会というのもなかなかなく、またお話の中身も大変興味深いというか面白いものでした。
そうか、そこまでやってくれるホテルがあるのか・・・それは確かにリピーターになるかも。
質疑の最後で情報の品質保証の話とコンシェルジュの話は逆ではないか、という話がありましたが、そもそも情報品質がfitness for use、利用目的に対する適合性の高さであるとする考えを聞いた後だと、逆と言うよりむしろかなり近い話をされている印象が、自分にはありました。
むしろ伝統的なレファレンスや図書館情報学における「信頼のおける情報源」に基づく、という考え方の方がこの場合の情報品質の話とは違うのかな、とかなんとか。
いやもちろん学術的な目的をもった方やエビデンスが必要な目的の方に対しては全然伝統的な話で齟齬はないのですが。
「神保町でデートに使える美味しいお店を知りたい。当方大学院博士後期課程在籍でぶっちゃけ金はない。しかし見栄はある」とかいう目的であれば*5また違う話があるよね、ということなのかと。
そういう意味では、従来の図書館におけるレファレンス・サービスとの関係性等についてもっと絡めたお話があるとさらに面白かったかなあ、と言う気もします。
ご講演者の方々が大変豪華であるだけに、「時間を短く設定し過ぎたかも」という元木先生のご発言にうなずくところ大でした。