地球浪漫紀行☆世界紀行スタッフの旅のお話し

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カデシュの戦い~ラムセス2世と最古の国際条約

2010年09月06日 14時34分12秒 | エジプト


紀元前13世紀の、エジプト新王国第19王朝の王・ラムセス2世(在位BC1290~24年ごろ)は、トトメス3世と並ぶエジプト史上の英雄の一人です。エジプトを訪れた人は、彼の名前を何度も耳にし、彼無しではエジプトの歴史を語ることができないことをはっきりと実感します。彼の治世の前半は、ヒッタイトに奪われたシリアの地の回復のための戦争に、そして後半は王権を飾る巨大な神殿の建造に明け暮れました。

ヒッタイト人は小アジア(アナトリア=現在のトルコ)におこり、紀元前1650~1200年頃、突如として西アジアに侵入し、バビロン(現在のイラク)を占領、バビロン第1王朝を滅ぼしまし、西アジアを支配しました。西アジアに最初に鉄器をもたらした民族でもあります。20世紀初頭、トルコのボガズキョイで発掘された遺跡から、ヒッタイト王国(ハッティ国)の歴史を物語る楔形文字の粘土板が多数発見され、この地がヒッタイトの都ハットゥシャシュであったことが判明しました。

紀元前13世紀にシリアに進出したエジプト新王国はヒッタイト王国と争います。紀元前1286年頃、ラムセス2世はシリア西部のカデシュの戦いでヒッタイト王国と対決しました。
ヒッタイト王国は、紀元前1200年頃、「海の民・フェニキア人」の侵入を受けて滅亡したといわれていますが、その詳しい事情はあきらかにされていません。ヒッタイトという民族は、旧約聖書にヘテ人として現れます。しかし、いったいどのあたりにいた、どのような民族で、その国はどんな国だったのか、全く忘れ去られていました。
19世紀、エジプトのテル=エル=アマルナから発見された粘土板文書(アマルナ文書)の中にハッティ国とエジプト新王国の間に交わされた書簡が見つかったことから、おぼろげながらその存在が浮かび上がります。そして1905年から翌年にかけて、ドイツのヴィンクラーという学者がトルコの首都アンカラの東、ボガズキョイ村の遺跡で多数の粘土板を発見します。その中の一枚の、アッカド語で書かれた粘土板を読み始めた彼は、一瞬、我を忘れ去ったようです。この粘土板文書はエジプト新王国のラムセス2世からヒッタイト王のハットゥシリ3世にあてた書簡で、カデシュの戦いの後に両国で交わされた平和条約に関するものだったのです。ヴィンクラーはその条約文が、エジプトのカルナック神殿の壁面に刻まれているものとほぼ同一であることを発見し、この遺跡がヒッタイトの都・ハットゥシャシュであることを確定させました。

ラムセス2世はヒッタイトとの抗争で、2万の軍を率いてシリアに進出し、「カデシュ」の地でヒッタイト王ムワタリと対決しました。エジプト軍は一時、危機に瀕しましたが、ラムセスの超人的な活躍で態勢を立て直し、シリアにその勢力圏を確保しました。その後、和平が成ってからは、ラムセスは巨大な建造物の造築に務め、有名なカルナック神殿やルクソール神殿を完成させ、さらにアスワン=ハイダムの建設により水没することとなり、ユネスコの協力によって崖の上に移築されたアブシンンベル大神殿を建設しました。

カデシュの戦いの後、紀元前1269年頃にエジプトのラメセス2世がヒッタイトと結んだ条約は、世界で最初の国際平和条約と言われています。条約の内容は、相互の領土不可侵、第3国からの攻撃に対する集団安全保障(共通の脅威として「海の民・フェニキア人」が出現していました)、政治的亡命者の引き渡しと免責(亡命者は送還するが帰国後は処罰しない)の三点でした。この条約文は、カデシュの戦いのラムセス2世の武勲とともに、ルクソールのカルナック神殿やアブシンベルのラムセス2世葬祭殿に刻まれています。ヒッタイト王国の側でも、ボガズキョイから発見された粘土板に同じ内容の条約文が記されていました。

エジプトの旅ではラムセス2世が建てた想像をはるかに超える壮大な神殿の数々をご覧いただきます。間違いなくラムセス2世の力に圧倒されることでしょう。そして古代に結ばれた世界で最初の平和条約からもラムセス2世の偉大さを感じずにはいられません。


(西川太陽)

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