明治期の写真、デジタル保存 宮内庁所蔵の3万点
宮内庁が、主に明治期に撮影された古写真計約3万枚のデジタル化を進めている。明治天皇の地方訪問の記録など近代化への歩みを進める国内の姿を切り取った貴重な史料だが、撮影から100年を超えるものもあり、退色などの劣化が進む。今後、原本の保護を進め、写真をインターネットで一般公開することも検討している。
写真は、明治天皇が全国を視察した際にお抱え写真家が撮影した各地の風景や、福島県の磐梯山噴火(1888年)などの災害を写したものが多い。写真を見た明治天皇が被災地に見舞金を出すこともあり、担当者は「テレビもない時代。天皇にとって写真がメディア代わりの情報源だった」と話す。
ほかに、富岡製糸場(群馬県富岡市)や、気球を使って空撮した東京・新橋停車場周辺などをはじめ、橋や灯台の完成を報告するために地方から献上されたとみられる写真もある。
これらの写真は天皇の側近が保管し、1937年に約1万枚が宮内省図書寮(現宮内庁書陵部)へ。残り約2万枚は歴代天皇の手元に残されたが、昭和天皇が亡くなった後、皇室に伝わる美術品を納めるために宮内庁が皇居内に建設した「三の丸尚蔵館」に引き渡された。
書陵部は2006年から専門業者に依頼し、既に約2千枚分のデジタル化を終了。今後、データベースの作成に取り掛かるという。
これまで、自治体関係者や研究者からの依頼を受け原本を貸し出してきたが、今後はデジタル写真を活用。デジタル撮影済みの原本の保管方法も考えていきたいという。
ネットで写真公開を始める時期は未定だが「将来的には学習教材にするなど国民に広く活用してもらいたい」と担当者。「当時の風俗などに関心のある人が、写真からさまざまな"新発見"をする可能性もある」と期待を込めている。〔共同〕